2012年9月21日金曜日

ESOMAR Congress 2012 レポート第1回:モバイル・リサーチの方法


《第101回》

ESOMAR Congressが9月10日から12日まで、アメリカのアトランタで開かれました。その帰りのアトランタ空港のニューススタンドで、Harvard Business Reviewの2012年9月が売られていました。(日本で発売されている内容とは異なるようです。いずれ、日本版HBRでも紹介されるかと思います)。その中にMRに関連するおもしろい記事がありましたのでご紹介します。その記事のタイトルは、



Better Customer Insight-in Real Time: A New Tool Radically Improves Marketing Research by E.K. Macdonald, H.N. Wilson, and U. Konus

「リアル・タイムにおける、より有効なコンシューマー・インサイト: 新しいツールがマーケティング・リサーチを根本的に変える」
●雑誌を買った時には、気づかなったのですが、同じ方法論を用いた発表が、実はESOMARの会議の2日目の午前の最初のプレゼンで行われていました。タイトルは、
 
From Rio to the Rest of the World
How innovative research, such as that conducted on Gatorade in Latin America, is impacting worldwide
Ana Alvarez, PepsiCo Latam, Brazil
Fiona Blades, MESH Planning, UK
(できれば別の投稿で簡単にご紹介したいと思います。)
 
●共通の方法というのは下記で説明する RET (リアルタイム経験トラッキング法)というモバイルを使った方法です。
 
 
世界的スマートフォンの普及により、単にPCによるネット・アンケートの携帯版という利用ではなく、定量・定性ともに、スマホのMRへの活用方法の探究が世界的に拡大しています。

サーベイが使われ始めて以来、いかにリアルタイムに、購買や消費の実態を正確に測定できるかが、調査にとって長年の大きな課題でした。
 
それが近年のITの進化のおかげで、その実現可能性が大きく進展しています。

その成果を示す発表です。

以下はその記事の要約です。
 
**********************************

要約:
 
・顧客の態度や行動を調べるために、これまでサーベイの定量調査(顧客満足やブランドイメージのトラッキングなど)や、グルイン、詳細面接などの定性調査を行ってきました。

・残念ながら、これらの方法には大きな欠陥があります。それは、すぐにあいまいになる顧客の「記憶」(memories)に基づいていることです。

・よくある例は、企業が流していないテレビ・コマーシャルを顧客がみたと回答することがあります。

・さらに、記憶が正しいとしても バイアスをもつ傾向があります。自分の買ったものに対して、気分よくするためにより肯定的にとらえることがあります。

・顧客の経験をとらえる従来の方法の1つは、エスノグラフィック調査です。顧客の背後でその行動を観察する方法です。

・この方法は、労力がかかり価格が高い方法です。さらに誤解をする恐れもあります。

・さらに、リサーチャーの前で、対象者がリサーチャーの喜ぶような方向に動くバイアスが起こる可能性があります。

・ゆえに、企業は、「不完全でバイアスのあるサーベイ」に頼るのか、「代表性のない行動の直接的な観察」に大金をかけるのかのジレンマに陥ります

いずれにしても、意思決定の根拠となるインサイトやデータは本質的な欠陥を持っています。

・マーケターは長い間、次のようなリサーチを求めてきました。

    顧客の反応をすぐに把握できる

    その反応の測定が外的に邪魔されない

    バイアスを最小限にする

    比較的多くの顧客に適応可能
 

RET (Real-time Experience Tracking)  リアルタイム経験トラッキング法

・過去2年間で、Unileverや、BSkyB, PepsiCo, Schweppes, HP, Energizer, Microsoft, InterContinental Hotels, SASRETを活用

RETの事例

500人

    PCでサーベイ:認知や理解、知覚、ブランド使用

    スマートフォンでの質問

・4つの質問:1)聞いたり見たり買ったりしブランドを選択肢の中から選択

2)ブランドとの接触ポイントを選択(TV,店頭、メール、オンライン、友人宅、会話など)

3)その時の評価(どのように感じたか?5点評価尺度:肯定―否定)

4)説得(5点評価尺度:次に買い物をする時にそのブランドを買う可能性)

    日記:接触時点での自由評価(写真のアップもOK

    月末に再びPCで同じ質問のサーベイ
 
・利点

    携帯のおかげで24時間、顧客を追跡することができる

    人の観察と違って、経験の知覚をゆがめることがない

    4つの質問ですむ

・チャレンジと限界

    代表性あるサンプル(属性を把握)で実施

    ITおたくに偏らないように注意

    セグメント別の分析が必要な場合はサンプル数を多くする

④ 飛行機内でのタッチポイント評価はできないー携帯使用ができない
 

●顧客のニーズから購買までをトラッキングが可能

 ●分析方向

・何が最も購買の意思決定に影響をあたえているか?―キー・ドライバーの発見odds分析

・タッチポイントがどのように意思決定に影響を与えているか?―タッチポイント・インパクト・マトリクス
 
リアルタイム・インサイトからリアルタイム・アクションへ

人間世界の知覚と感情の豊かな世界

RET:製品やサービス、ブランドの努力への顧客のライアルタイムにおける反応

顧客の製品との経験をデザインする

マーケティングが、刺激と反応のゲームから、持続的な共創(コ・クリエーション)のプロセスになる

************************************
 

0 件のコメント:

#150 レイ・ポインターのMR白熱教室2015 第4回(最終回)報告

<第149回> レイ・ポインターのMR白熱教室2015 第4回(最終回)報告 2015年6月23日 ● 第4回目のテーマは、 『データからストーリーテリング』 でした。 ● 7月にレイとの懇親会を予定しております。世界のMRのソート・リーダー(thought ...