2011年6月27日月曜日

MROCと製品開発

《第63回》

◆MROCと製品開発

・MROCによるマーケティング解決課題で最も適しているのが、

「製品開発におけるアイディア・ジェネレーション(新製品アイディアの創出)」です。

・コトラーも次のように言っています。

@kotler_bot 新製品開発は、アイデア創出。つまり新商品アイデアを計画的に探索することから始まる。優れた製品案がほんのいくつか出てくるまでに、企業は膨大な数のアイデアを創出しなければならない。

まさにMROCが最適な方法の1つと言えるでしょう。

●消費者と企業が新たな価値をともに作り出してゆくコ・クリエーション(共創)は、コトラーのマーケティング3.0においても非常に重要なコンセプトです。

参照:

①コトラーのマーケティング3.0
生き残る企業のコ・クリエーション戦略 ビジネスを成長させる「共同創造」とは何か
価値共創時代のブランド戦略

●(株)MROCジャパンのMROCサービスの中に、新製品のアイディア出しのための

「イノベーション・コミュニティ」というメニューがあります。

参加者人数やコミュニティ運営期間は固定していませんが、内容は、

該当製品カテゴリー・ユーザーでかつ、アイディア出しが得意な人である「イノベーター」、

同じく、周りの人に影響を与える人である「インフルエンサー」、

その製品カテゴリーの一般ユーザー「フォロアー」、

の3つのグループでコミュニティを構成します。

●例えば、コミュニティ期間が1カ月の場合ですと、

最初の2週間で、イノベータのグループにいろいろなアイディアを出してもらい、

次の1週間で、インフルエンサーの人に、イノベータが出したアイディアについていろいろ議論(共感できるかどうか、他の人に推奨するかどうかなど)をしてもらってブラシュアップを行い、

さらに最後の1週間で、一般ユーザーの立場から、フォロアーの人に、いろいろな反応を発言してもらい、最終アイディアに絞り込んで行く、という方法です。

イノベータが出した「尖った」アイディアは、アピーリングな場合はありますが、時代の先を行きすぎる場合もありますので、フォロアーの人の意見も聞くことによって、市場受容性も検証、あるいは高めるための改善点を抽出することが可能です。

もちろん最終的には、定量調査での受容性の検証が必要ですが。

●このコミュニティがうまく行けば、一部の質の低いメンバーを入れ替えながら、

「製品開発のアドバイザー・コミュニティ」

として、その後、継続運営してゆくというものです。

●マーケティングの担当者の方が想像もしていなかったアイディアや仮説を引き出せる可能性があります。

MROCは、従来のグルインやアンケートと異なり、消費者の生活の現場から「アイディア」や「意見」を収集することができるからです。

MROCは直接、課題の解を提示するものではありません。

企業の担当者の方と生活者が一緒になって、新たな価値を共創してゆくリサーチ・ツールです。

MROCは、まさにソーシャルメディアの価値共創時代における消費者理解の新たな有効なリサーチ・ツールの1つと言えます。

●そこで、JMRX勉強会では、イノベーション、製品開発の基本的な考え方を学ぶために、

私の前職時での上司であり、現在、グローバル企業をクライアントに、製品開発のコンサルタントをシンガポールでやられているニーズ・ゲインズ博士をお招きして、お話をお伺いする企画を立てました。

たまたま某グローバル企業の日本支社でのお仕事で来日する機会を利用させていただきました。

彼がMarketQuestという製品開発のソリューションのアジア地域の責任者であり、私がその日本での責任者であり、在職中の5年間は、製品開発のノウハウを数多く彼から学ぶことができました。


◆第15回JMRX勉強会開催!

●6月23日(木)に、GMOリサーチ大会議室で、

シンガポールの製品開発・イノベーションのコンサルタント会社Tapestry Worksの代表である

ニール・ゲインズ(Dr. Neil Gains)博士に、

●「製品開発とイノベーション:成功するための3つのポイント」
 (3 behavioural keys to successful research + innovation) について講演していただきました。

●会場ならびに、新しくできました社員食堂を懇親会会場に提供していただいたGMOリサーチ社に感謝申し上げます。

勉強会さらには懇親会にまでお付き合いいただきましたGMOリサーチ(株)代表取締役の細川慎一社長に深く御礼申し上げます。

また勉強会および懇親会の運営にご協力いただいたGMOリサーチの優秀な社員の皆様に感謝致します。準備、後片付けなど遅くまで御苦労さまでした。ありがとうございました。

●当日の通訳は、(株)トークアイ取締役の佐野良太氏にお願い致しました。ご協力ありがとうございました。

●博士の講演の前にGMOリサーチさんから新サービス:GMO Global Social Researchサービスのご紹介がありました。http://www.gmo-research.jp/gsr/

●事務局からのご連絡です。

今回は通常よりも欠席の方が多く、懇親会も事前申し込みいただいた方から10名の方の欠席が出てしまいました。それで、講師の方や通訳者の方への謝礼お支払や、懇親会費の補てんなどで、24,052円の赤字がでてしまいました。次回で補てんできますように願っております。

●懇親会に参加すると帰りが遅くなり、次の日のお仕事に差し支える可能性があります。事務局としましては、1人でも多くの方に懇親会にご参加いただき、ネットワーキングを広めていただきたいと思っています。

●JMRAはリサーチ会社の団体ですが、JMRXは、リサーチャー個人のネットワーキング・グループです。

JMRXは、リサーチに興味・関心のある方々のネットワーキングを目的としていますので。JMRX勉強会をきっかけとして、お互いコネクトし、情報をシェア(共有)、ヘルプしあい、MR業界もリサーチャーも、皆がハッピーになることを目指しています。(C-S-H-H)

●ぜひ懇親会にもご参加ください。個人的には、講演よりも重視しております。また時には、講演よりも役立つ収集や、ネットワークを築くことができると思っています。

JMRXではまた、次世代MRを担う、次世代マーケティング・リサーチャーへの応援も目指しております。若手リサーチャーの方の参加もお待ちしています。

●当日は、博士の47才の誕生日ということで、ケーキでみんなでお祝いをしました。(名前入りの豪華ケーキの写真を撮り忘れてしまいました)

●GMO社員食堂での懇親会の模様。











●当日の資料です:
●JMRX 勉強会、初の英語での講演はいかがでしたでしょうか?

日頃の英語学習の成果を発揮することができましたでしょうか。

文章の聞き取りから、単語の聞き取りのレベルまでいかがでしたでしょうか。

講師への英語での質問に果敢に挑戦していただいた参加者の方、ありがとうございました。


また、機会がありましたら「第3弾海外ゲスト・シリーズ」をやりたいと思っています。

●ところで、「思考と言語」という考え方があります。

私たちは、使い慣れた言語で「思考」しています。つまり、日本人の多くは、日本語で理解して、日本語で考えています。

英語で聞いて、英語で考えると、英語のスピーキングもすごく上達します。

多くは、英語で聞いて、日本語で理解して、日本語で考え、また、日本語で考えたことを英語に直して、英語で話すことになります。

●英語のプレゼンを英語で聞いて、英語の資料で補足して理解し、考える方法(英語は英語で)。英語を聞きながら、英語のプレゼン資料も読解しなければいけないので結構疲れます、

さらに、英語のプレゼンを英語で聞いて、日本語の資料で補足して理解し、考える方法、

また、英語のプレゼンを聞きながら、通訳の日本語と日本語の資料で補足して、理解し、考える方法。これは同時に2ヶ国語をフォローするので、頭は疲れます。

最後に、英語のプレゼンは無視して、通訳の日本語のみに集中して、日本語の資料で理解して、考える方法。

最後の方法が、普通の日本人にとって、最もエネルギーがいらなくて、理解も深まります。

●ということで、今回も、本当は、参加者の方のために、プレゼン資料の日本語版を作成した方がよかったのですが。。。

博士の方に、6月21日(火)までに原稿を送ってくれるように依頼していたのですが、結局、勉強会当日になっても、残念ながら私の手元にプレゼン資料はありませんでした。

という事情で、参加者の皆さんには申し訳ありませんでしたが、英語の資料のままのプレゼンになってしまいました。事務局の方も始まるまで、発表の中身については知りませんでした。

英語の勉強のためには日本語資料なしでもよかったかもしれませんが。。。

●勉強会のあとなんとかお願いして、上記資料をシェアしてもらい掲載しております。それで、今回は、申し訳ありませんが、Slideshare上、download不可にさせていただきましたことをご理解お願い致します。

以下はその講演内容の一部のご紹介です。


●人間の行動(の意思決定)の多くは、無意識(サブ・コンシャス)や、言語以外のところで決定されていることは以前から主張されてきたことです。

それをなんとかして、文字や数字で表そうとしてきたのが、サイエンスでもあったわけです。

特にMR分野では、心理学や社会学から強い影響を受けています。

その一方で、この反省から、無意識の測定方法や、ニューロサイエンスの分野がこの10年ぐらいの間に注目されてきました。

●MRの目標は、人間の行動、特に購買行動を予測することです。

予測するためには、「①情緒や②行動、③コンテキスト」の理解が不可欠であると主張しています。

消費者の記憶や経験のデータ(D)は、その一部にすぎないと述べています。

The ABC and D of Human Behaviour (Consumer Understanding #13)参照

●最後に、これまでのリサーチは、言葉に頼り過ぎているのではないかと問題提起をし、

MRに対して、VOCALの重要性の提案で締めくくりました。

VOCALとは、Visual、Observational、Contextual、Analytical、Layeredの頭文字をとった頭字語アクロニムacronymです。

言葉による質問(Asking)への言葉による回答ではなく、

投影法のようなビジュアル(写真や動画など)な刺激への反応の重要性を指摘しています。

●さらに、観察調査(Observational research)の利用が、人間行動を理解する上での有効性ゆえに、今後さらに拡大すると予想しています。

これまでのグルイン・ルームでの対象者の表情や、ボディランゲージを観察するだけでなく、リアルな生活におけるリアルな行動を観察する必要性を強調しています。

●消費者の行動を理解する上で、消費者がおかれているコンテキスト、文脈を理解することも大切です。人間の意思決定は、状況によって変化する場合があります。

●行動を分析する上で、さまざまなデータ(リサーチのデータや、ソーシャルメディア上の消費者の声や営業データなど)の総合化あるいは統合化(Synsesis)が必要だと言っています。これは単にデータを定量的に処理するだけでなく、MRにおいて創造的な作業が要求されます。

●そして、最後に、人間行動は複雑で多面的なゆえに、より多様なアプローチが必要であると結論づけています。

●発表資料中のNudgeについては、

http://www.amazon.com/Nudge-Improving-Decisions-Health-Happiness/dp/0300122233参照。

The Principles of Design #17 – Nudge

また、プレゼン内で言及された行動経済学の

ダン アリエリー、Dan Arielyの予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」と、その続編

不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」も参照。

●以下のTweetも参照:

①RT @mr_edokko 昨日のゴリラはココに居た http://www.theinvisiblegorilla.com/videos.html

②@Experidge 参照)昨夜のニールの話の中のPaul Ekmanの7 core emotionsをBrainjuicerがFaceTraceとしてソリューション化 #JMRX http://ht.ly/5oWKU

●博士のブログ

Doctordisruption

Inspectorinsight

Twitterは、 @neilgains @tapestryworks

●以上のように、従来のサーベイやグルインの文字によるAskingを中心としたMRの改革を主張しています。

文字によるListeningが主体であるMROCへの示唆として、

①写真や動画による反応の測定や、

②ビデオによる観察、エスノの実施、

③現実の生活環境であるコミュニティ上でのリサーチの利点を生かして、生活上のコンテクストをより理解する、

④リサーチャーはMROCに取り組む際には、より創造的なリサーチを心がけ、統合的視点でデータを分析する、

⑤掲示板グルインだけでなく、エスノや詳細面接、アンケートなど複合的なアプローチを心がける、

点などがあげられるかと思います。

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このブログは毎週、月曜日中に更新されます。

2011年6月20日月曜日

MROCとDIYリサーチ

《第62回》

◆今月のJMRX勉強会は、第1回「海外ゲスト・シリーズ」です。

その第1弾は、

6月14日(火)に、JMRX特別セミナー 「DIYリサーチ SurveyMonkey社 CEO講演」と題して、

USのSurveyMonkey社 CEOの Dave Goldberg氏にご講演していただきました。




企画をしていただいたJMRXメンバーの(株)トークアイ取締役の佐野良太氏に感謝申し上げます。また招聘にご協力いただいたOrinoco株式会社の岩下麻由様に御礼申し上げます。

会場を提供してくださった日本マーケティング・リサーチ協会ならび萩原雅之氏に感謝致します。

詳細は、http://kokucheese.com/event/index/12498/

SurveyMonkeyJapanのFacebookページ

当日の資料は、SlideShare http://www.slideshare.net/Orinocogroup/ss-8300136

1週間後に削除されるそうなので、JMRXのスライドシエア(オリノコさんの許可を得て)
15日には、第2回メンバーズFacebookインテグレーションセミナーでもご講演。

参考:

[jp]SurveyMonkeyが日本にやってきた理由―答え:日本は課金ビジネスが魅力的に見えるから

直子のより道

SurveyMonkeyをつかってみた


●欧米では、SurveyMonkeyに代表されるようなオンライン・ツールを使って、自前で調査を行う調査(調査票の作成から分析・レポーティングまで)を
DIY(Do-It-Yourself)リサーチと呼んでいます。(Self-Serviceリサーチとも呼称)


調査に詳しくても詳しくなくても、登録さえすれば利用可能です。無料版と有料版がありますが従来の調査に比べて格段に安く行うことが特徴です。

対象者のメールアドレスさえあれば調査は可能です。

メールアドレス1つで、企業と消費者が「つながる」ことが可能です。

ここ数年、ある種、ブーム状況です。というか、欧米では、MR産業の1つの流れになってきています。 単に、クイック&ダーティ的なネガティブ・イメージのリサーチ・ツールの域を超えたものになっています。昨年で、世界で約800億円の市場規模という試算もあります。
 
●その背景には2つの大きな変化があります。
 
1つは世の中の変化(不況)、もう1つは消費者の変化(ソーシャル・メディアの普及)です。

2008年9月のリーマン・ショック以降の不況下で、このDIY調査が特に盛んになりました。

SurveyMonkey社が、2年前まで12人であった社員が現在100名を超えているという講演でのDave氏の発言がそのもりあがりを象徴しています。

調査予算の大幅削減、あるいは調査のROI効率アップ、有効化アップのマネジメントからの強い要求下、クライアント・サイドが出した回答が、欧米ではDIYリサーチ・ソリューションでした。

●一方、WEB2.0以降、消費者が自分たちの意見をネット上で展開し、共有することが容易になりました。ブログだけでなく、FacebookやTwitterなどのSNSといったソーシャル・メディアが拡大・浸透し、オンライン上で消費者が本音を語りだしました。

オンライン上で、自らの意見を述べる機会を求めている消費者へのアクセスが容易になった点が消費者側の変化です。

このような変化への企業側の対応が、欧米ではオンライン・プラットフォームを使ったオンラインDIYソリューションであったわけです。

●これまでの説明で、今回のタイトルがどうして、「MROCとDIYリサーチ」であるかということがおわかりいただけたかと思います。

両者が、次世代MRにおけるオンライン・プラットフォーム・ソリューションであるという共通点を持っているからです。

さらに、MROC(Marketing Research Online Community)が、さまざまなDIYツールをコミュニティ内に装備することによって、

DIYリサーチのソースとしてのMROCの拡大が今後、期待・予想されています。

オンライン・プラットフォームでは、消費者のメール・アドレスさえあれば、リサーチ対象者(あるいはコミュニティ参加者)にアクセスすることができます。そうなれば、MROC内で、簡単にDIYツールを使って、定量・定性のさまざまな調査を行うことが可能になります!!!

この意味で、今後日本においても、SurveuyMonkeyのようなDIYツールが拡大・普及することが大きく期待されています。



●一方、DIY調査については、リサーチャーの間で多くの議論がされています。現在、リサーチ業界のホット・トピックの1つです。(残念ながら日本のリサーチ業界ではありませんが。。。)

昨年のESOMAR2010Congress会議での発表ペーパーで、大企業から中小企業のクライアントと、調査会社のリサーチャーなど約180人に、DIYリサーチについて実態と意見を尋ねた結果をレポートした

DIY - new life or the death of research?によると、

欧米では、大企業のリサーチャーがもっとも多く使っているそうです。やはり予算削減の圧力からDIY調査の促進が進められたようです。企業の担当者は、経営層から、1ペニーですら調査に使うことの正当性を示すことが要求されていると言われています。(同時に、アクショナブルなインサイトが経営層から要求されるゆえに、企業のリサーチャーは、データ収集の方法・品質にあまり関心をよせる余裕がなくってきているという指摘もあります)。

従業員や既存顧客のの満足度調査にまっさきに活用されたようです。毎年聞く質問が決まっていて、対象者のメール・アドレスが手元にあるものは、DIY調査の最初の候補です。

DIY利用理由の第1は、やはりコストが無料あるいは安いことです。使い方が簡単が続き、調査経験者にとって、より早く行える点も利用理由の上位にあがっています。

●マイナス面: 

間違った意思決定に導くリスク・危険性があり、多くの人の時間をムダにさせ、「悪い調査を行うのであれば、調査をしない方がよい」と指摘。誤った調査結果に基づく意思決定による失敗の代償は大きいと主張。DIYは調査の価値を低下させ誤解を生み、品質の低下は結局、誤ったビジネス意思決定をもたらすと警告ーアマチュアがリサーチ産業を破壊する。

①素人(アマチュア)の作った長くて、まずい「調査票」が増え、結局、対象者の協力率が低下する弊害(でもプロのリサーチャーが作成した調査票でもこのようなものが」あるので、この批判は当てはまらないとする人もいます)、

②調査の重要点がクリアできるかどうかが疑問:

1)正しい「調査目的」を設定し、2)正しい「対象者」に聞く(誰に)、3)正しい「調査票」の作成(何を聞くか)、4)インサイトをだすための正しい「分析」ができるかどうか、

③特に正しい「対象者」(サンプル)に聞けない場合がDIYでは多い、

④調査票に関連して、正しい回答選択肢(尺度)が設定されない場合が多い、

⑤調査デザインが、調査課題・目的と合致していない場合、つまり目的達成の最適なデザインになっていない場合がある、など。

●プラス面:

肯定派は大歓迎です。リサーチが一般に開放されたといい、有効活用できるようにいろいろと工夫をしようと積極的。Survey Monkeyは、リサーチを人々の身近なものにしたと絶賛。

①早くて、安くて、うまくできる利点ービジネス・ニーズに合致

②DIYによる調査が増えれば、リサーチの機会が増え、リサーチが浸透してよい

③DIY調査をやることによって、リサーチの難しさを実感して、プロのリサーチャーに依頼するケースが増える可能性

④安価なゆえに、大企業だけでなく、中小企業も意思決定に必要な情報収集のためにリサーチを行うことが可能になる、つまり、なにも調査を行わないで意思決定をするよりも、安価でできるDIY調査を実施した方がよい。この傾向はさらに広がると思われます、など。

●以上のように、DIY調査の普及は、リサーチ業界やリサーチャーにさまざまインパクトを与えています。

DIYリサーチの蔓延に対して、感情的・ヒステリックに否定する人、これまでのリサーチャーのキャリアを否定しかねないゆえに「パニック」になる人、調査の有効性を損なう可能性があるゆえに乱用・悪用を危惧する人。

一方、プロとしてのリサーチャーやリサーチそのものの「価値」の再認識や、グレードアップの好機と前向きにとらえる人々もいます。

●上にあげたDIYの欠点・弱点は、注意すれば防ぐことができることばかりです。

Sruvey Monkey側も、正しい質問文を事前に用意したり、英語版には、調査課題別のそれぞれ定番の質問をセット(テンプレート)で用意するなど、適切に利用されるような工夫をいろいろと凝らしているようです。

また、CEOも強調しているように、既存調査会社が行っているような複雑な調査には向かず、両者の棲み分けをしているとのこと。すべての調査に使えるというわけではありません。

●リサーチの正しい利用・普及のためにアドバイスをするのもリサーチャーの重要な役割です。

DIY調査の正しい普及に、リサーチャーも一役買う必要があると思います。

1社に1DIYリサーチ・ツール、あるいは各部に1DIYツールといった状況になった場合、リサーチャーもDIYツールに精通する必要が出てきます。

クライアントに対して正しい使い方のアドバスを行ったりする必要がでてきます。

クライアント側も、若手のリサーチ教育や、簡単な調査に、DIYツールを積極的に活用する機会が増えると思います。

●DIY調査への拡大に対して対応できない競争力のない調査会社やリサーチャーは、退場するか、グレードアップを余儀なくされます。

逆に言えば、調査会社やリサーチャーにとって、DIY調査の普及は、それぞれがアップグレードするよい機会でもあると言えます。

●日本では、不況下の調査予算削減に対して、単に調査プロジェクトの本数を減らす方向での対応策が中心で、欧米のように、調査ROIの徹底的な見直しや、オンラインDIYソリューションの採用(MROCやDIYツールの利用)といった方向には、現状なっていないように感じています。

単に本数を減らすだけでなく、いろいろな方法で対応が可能です。

景気が回復すれば、従来のようにプロジェクト件数が増加するだろうといった楽観的な考えが主流であるとしたら、景気状況とソーシャルメディアの時代に、その有効性と効率の面で変革を求められているMRにとって残念な状況です。欧米ではこのチャンスを積極的に受け止め、変革の試みが、次世代MRやNewMRの名のもとに盛んに議論や実践が行われています。

参考:

Why DIY Research is Good for Everyone

5 Dangers of DIY Research

DIY – Friend or Foe?

3M Disruptively Innovative DIY Research

昨年の12月17日付けのこのブログでも紹介しました、USの3M社が、Survey MonkeyなどのDIYツールを活用して、社内に効率的なMR部を創設し、75%も調査費用を節約した例を報告しています。

DIY: Opposition or Opportunity?

多数の参考文献を含む

DIY Research in a Social Media World

Do-It-Yourself Survey Research Roundup
⑧.SurveyMonkey CEO on the joy of DIY


SurveyMonkey’s CEO, Dave Goldbergとのインタビュー
 
1 Topic, 5 Blogs “Doing the Monkey”
 
DIYをめぐる有名リサーチ・ブロガー5人の議論



⑩その他のDIYツールサービス企業(定性を除く):

- SurveyPirate

- Snap Surveys

- Zoomerang

- SurveyGizmo

- Micrpoll

- QuestionPro

- Survey Analytics


◆第2弾(第14回JMRX勉強会)は、今週23日(木)に、GMOリサーチ大会議室で開かれます。

シンガポールの製品開発・イノベーションのコンサルタント会社Tapestry Worksの代表

ニール・ゲインズ(Neil GAines)博士に、

●「製品開発とイノベーション:成功するための3つのポイント」
 (3 behavioural keys to successful research + innovation) について講演していただきます。

お申し込みは、http://kokucheese.com/event/index/12497/

●博士のブログ

Doctordisruption

Inspectorinsight

Twitterは、 @neilgains  @tapestryworks


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