2011年5月30日月曜日

MROC導入コンサルティングのご案内

《第61回》

◆(株)MROCジャパンは、日本初かつ唯一のMROC専門のオンライン・マーケティング・インサイト・カンパニーです。

●昨年、MROCジャパンは、MROCの概念や海外の実例をブログやセミナーで初めてご紹介致しました。

また、海外のMROCサービスを行っている企業(イギリス:ブレイン・ジューサー社)において、MROC研修を受け、その内容のご紹介も行いました。
ブレインジューサー社 イノベーション・コミュニティの ご紹介


2月には、中国マカオで開かれたQRWEB2.0というオンライン定性調査の国際会議で、日本のMROC事例を初めて、海外に紹介致しました。
Tactical Co-Creation Community Research Method: The Case of MROCs in Japan

そして、4月の(株)クロス・マーケティングのMROCサービスの導入を全面的にサポートさせていただきました。MROC
MROC Japan and Cross Marketing roll out community offer



一部の企業で、従来からある「掲示板グルイン」をMROCと呼称して、サービスを提供している企業もありますが、MROCは、参加者(コミュニティ・メンバー)の特性や、活動内容の違い(Askingと自然な会話のListening)、活用ツールの違いにより、オンライン・グルインと異なるコミュニティ・リサーチのツールであることにご留意ください。

●最近、数社の企業の方から、MROC導入のサービス提供のお問い合わせをいただきました。お問い合わせ、誠にありがとうございます。

幸い、萩原さんの「次世代マーティング・リサーチ」やブログ、ツイッターなどをお読みになり、MROCをお知りになる方が増えております。

●一方、残念ながら、本の中で同時に、D社が「日本で最初にMROCを冠したサービスを提供」とご紹介されたので、市場では少々誤解が生じております。D社のサービス

D社さんのサービスは、欧米では、いわゆる「掲示板グルイン」(BBFG:Bulletin Board Focus Groups)と呼ばれているものです。1990年代後半にUSで作られたグルインをオンライン化した定性調査の1手法です。

実際、D社さんの説明を聞かれたクライアントさんが、説明内容が過去に行った掲示板グルインと同じであったので、MROCに、がっかりしたという残念な話も聞いております。

D社さん、正しいMROCの普及をお願い致します。(⌒-⌒)

MROCは、WEB2.0=CGMに起源を持ちます。関与度の高い人が、コミュニティを形成し、自発的な発言=自然な会話をリスニングすることによって、インサイトを創出することがメインのリサーチ・ツールです。

MROCは、現在進行しているオープンなソーシャルメディアの「ソーシャル・リスニング」活動をクローズドなプライベイト・コミュニティ空間の中で、生活者の声のリスニングを展開する新しいリサーチ・ツールです。

既存資産を活かしたコントロール性重視の手法」ではありません。調査をする側が事前に決めたことを一方的に尋ね(アスキング)、調査をコントロールするのでは、MROCは、コミュニティを形成し、メンバーの自発的な会話をリスニングし、想定外のインサイトを発見するもので、従来の調査の発想とは全く逆の考えに基づいています。

単に購入経験や性・年代などの対象者条件によって抽出された「対象者」が、モデレータの質問に回答してゆくアスキング主体のグループ・インタビューではありません。

また、コミュニティでの自然な会話を活性化するために、単に掲示板への書き込みだけでなく、チャットや、アンケート、写真や動画のアップなどのWEB2.0によるコミュニティ・メンバー間のコミュニケーションを促進するための機能がたくさん付加されている点も特徴です。

これによって、従来の同時性のグルインだけでなく、非同時性のグルインや、デプス(詳細面接)、エスノ(行動観察)、ダイアリー、さらには定量調査も含めたハイブリッド調査が可能です。

このことが、MROCが、「次世代MRのプラットフォーム」と呼ばれるゆえんです。

さらに、MROCは製品開発だけに特化したものではなく、ブランドやコミュニケーション、顧客ロイヤルティ、ショッパーインサイトなどマーケティング全般の課題解決に対応しています。


●残念ながら、ご興味を持たれても、MROCをいざ実際に行うとなると、

MROCとはそもそも何なのかとか、

具体的にどのように実施すればよいのか、

MROCのプラットフォームをどうすればよいのか、

参加者(コミュニティ・メンバー)の条件はどうか、

またどのように集めればよいのか、

オンライン・リサーチ・コミュニティの運営は誰が、どのようにすればよいのか、

リサーチ・コミュニティ・マネジャーの仕事のやり方はどのように行うのか、

参加者の謝礼はいくらぐらいがかかるのか、

参加者の数はどのくらいが適切か、

期間はどのくらいが適切か、

参加者の発言をどのように分析すればよいのか、

レポート・イメージはどうか、

などなど、

MROC実施にいたるまでの問題が山積です。

●このようなニーズにお答えして、MROCジャパンでは、

「MROC導入コンサルティング・サービス」

を広く事業会社や、代理店、シンクタンク、調査会社などへ行っております。

より具体的には、コミュニティ・リサーチの企画方法から、コミュニティ・ガイドの作成、最適なプラットフォームの選定とその使用方法のトレーニング、リサーチ・コミュニティ・マネジャーのトレーニングなどのサービスをご提供致します。

MROC導入にご興味がある企業や担当者の皆様、下記にお気軽にお問い合わせください。Shigeru.Kishikawa@mroc.jp

MROCジャパンでは、「次世代MRのプラットフォームとして有望なMROC(コミュニティ・リサーチ)」の日本市場への正しい導入と、有効な事例の遂行、健全なMROC市場の形成をミッションとして活動しております。


◆6月2日(木)、3日(金)ニューヨークで、MROCとソーシャルリスニングの国際会議が開かれます。

MROCの有効性や限界、問題点、将来などについて、Gongos Researchや、Vision Critical、Insites Consulting、Itracksなど欧米を代表するMROC企業が一堂に集まり、プレゼンとパネルディスカッションが行われます。

MROCジャパンも日本を代表して参加致します。
CASRO


第13回JMRX勉強会2011年5月度開催のご報告です。

●5月23日(月)、株式会社アイエムジェイの高見俊介氏による

「ロイヤルティリーダーに学ぶソーシャルメディア戦略」を開催致しました。

当日雨天にもかかわらず、総数44名の方のご参加をいただきました。

講師の高見さん、ならびに参加者の皆様、ご協力ありがとうございました。

●余談ですが、高見さんとは、同志社大学法学部の先輩・後輩関係でもあります。過日、ゼミの話で盛り上がりました。。。


●プレゼン資料は、
●ブログ記事: 「いまんとこの最適解」

JMRX【ロイヤルティリーダーに学ぶソーシャルメディア戦略】に行ってきた

「耐久消費財、サービスの既存顧客維持モデルに適した展開でした。ただ、提示いただいたフレームは新規かつ、工夫次第ではFMCGへも展開可能なもののように思います(その場合NPSでは表現がキツイ。)この点は、リサーチャーが研究の余地があると思います。」

●ビジネス課題やマーケティング課題として、「顧客ロイヤルティの向上」は重要です。

顧客ロイヤルティの「マネジメント」のためには、顧客のロイヤルティの「測定(メジャメント)」が不可欠です。

それゆえに、「顧客ロイヤルティ」は、マーケティング・リサーチの中でも、重要な課題の1つでもあります。

従来の顧客ロイヤルティの調査では、

顧客ロイヤルティを測定する指標として、推奨やリーピート購買などの複合指標や、顧客満足度などの全体指標(従属変数)と、それに影響を与える項目(独立変数:顧客経験、タッチポイント、コンタクト・ポイント)の評価を5点尺度で尋ねたりします。

重回帰分析などで全体指標に影響を与える項目を特定し、それらの評価の高低により、改善点の提案を行ったりします。

ソーシャル・メディア時代における顧客ロイヤルティの調査は、

上のプレゼン資料には含まれていませんが、ご著書の中(89頁)で、

顧客ロイヤルティの測定⇒「顧客の声の収集」⇒「顧客インサイトの発見」⇒ロイヤルティ向上のための改善アクションという「フィードバックループの構築」で図示されているように、

測定からアクションの間に、従来のアスキングによる消費者調査以外に、

顧客ロイヤルティを把握するためのソーシャルメディアの活用策(その1)が指摘されています。

すなわち、ソーシャルメディア上の口コミを傾聴するソーシャルリスニングと、

MROCの活用です。

●さらに、ソーシャルメディアを現状把握だけでなく、

「顧客をロイヤルカスタマーに変える」より実践的な改善アクションの提言といったソーシャルメディア活用策(その2)をご提案されています。

●このように、ソーシャルメディアの登場により、アスキング中心の従来の調査が、よりリアルな顧客の生の声を収集することができるリスニングの併用を行うというリサーチの変革が現在、進行しつつあります。

●ご著書では、顧客ロイヤルティの指標として、NPS(Net promoter Score)が採用されています。

上記プレゼン資料12頁からNPSの図がありますが、詳細は、ご著書40頁以下参照。

NPSの採用が、「顧客グリッド」(スライド13頁、ご著書130頁)の分類を可能にしています。

前前回のこのブログで、NPSの問題点についてはご紹介しましたが、

リサーチャーが、厳密性を求めるがゆえに、ビジネスの現実では、理解が難しく使えない指標よりも、

ビジネス・アクションをインスパイヤーinspired(刺激する、促進する、鼓舞する)簡単シンプルなNPS指標の有効性については、指標開発において、リサーチャーも大いに見習いたいところです。

●以下、プレゼンの詳細は、添付スライドに譲るとして、(より詳細は、ご著書を読まれることを強くおすすめ致します)

いくつか共感したポイントを

①リスニングにおいては、アクションに注力してデータを読む: 多くのデータから、重要度の優先順位をつけて、リスニングをアクショナブル・インサイトに導くこと。

②「究極の口コミを創出する」(ご著書71頁)ロイヤルカスターによる、コミュニティの構築。

③リスニングとアスキングの違い(スライド20頁、ご著書107頁)

④スライド48頁と49頁(ご著書190頁)の「ソーシャルメディアの活用範囲」と「顧客インサイトが関連するビジネス領域」は、MROCやソーシャル・リスニングがカバーするべきリサーチ領域を示唆するもので、非常に参考になります。

などなど、ご著書の中にはまだまだ参考になる図表がたくさん含まれています。

●ソーシャルメディア担当者や、次世代マーケティング・リサーチにご関心のある方(特にMROCやソーシャル・リスニング)、ソーシャル・メディア・マーケティングにご興味のある方には必読の好著です。

リサーチャー、特に、顧客ロイヤルティあるいは顧客満足度調査に関わっているリサーチャーの方にはぜひ、繰り返し読んでいただきたい文献です。

取り上げているテーマが多岐にわたりますので、やはり最低2回ぐらいは読まなくては、正確な理解が難しいのではないかと思います。

さらに、高見さんを代弁して言うと、「企業経営者の方々」にもぜひ読んでいただいて、ロイヤルティを企業経営の中心に位置付け、その文化を企業内に根付かせる実践(顧客中心文化の育成)に役立てていただきたいと思います。


来週6月6日号は、著者が海外出張のためお休みです。ご了承下さい。

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2011年5月23日月曜日

MROCに対する理解不足と誤解 その2

《第60回》


◆第13回JMRX勉強会2011年5月度は本日開催

●株式会社アイエムジェイの高見俊介氏による

「ロイヤルティリーダーに学ぶソーシャルメディア戦略」

●まだ申し込み可能です:http://kokucheese.com/event/index/11456/







◆MROCに対する理解不足と誤解 その2
 
●4月18日号で、日本版MROCの離陸: MROCに対する理解不足と誤解をとりあげました。その第2回目です。
 
●先週Twitterで次のようなツイートがありました。 

@totemoiiko MROCって、当たり前だけどメソドロジーじゃなくて、単なる(かどうかは別にしても)コミュニティなんですよやっぱ。定量パネルみたいな。その辺りを置き去りにして、サービスファンクションに定量、定性、MROCって並んでいるのは超気持ち悪い。
 
●すこし誤解があるような感じです。
 
●確かに、定量、定性とMROCは並列ではありません。MROCの中で、定性調査が行われたり、定量調査が行われますから、同レベルの概念ではないでしょう。
 
ひっかかるのは、「定量パネル」の箇所です。MROCはその起源は、定性調査にありますので、定量パネルというのは適切でないかもしれません。MROCで、定性調査ができないという誤解を与えるかもしれません。
 
MROCの大規模なものを「コミュニティ・パネル」と呼びますが、そこでは定量調査が行われます。(定性調査も)。カナダのVisionCriticalが提供しているサービスです。
 
定量パネルというと、オンライン・パネル、つまり、ネット調査の対象者のパネルと混同される可能性があります。
 
MROCの参加者は、オンライン・パネルからもリクルートされますが、MROCとオンライン・パネルで行われる調査の種類は全く異なるものです。
 
●MROCは、りっぱな「メソドロジー」(方法)です。リサーチ・ツールです。逆に短なる「コミュニティ」ではありません。ロイヤルティやエンゲージメント育成や販促などを目的とした単なる「マーケティング・コミュニティ」ではありません。調査課題の解決を目的として、リサーチにフォーカスしたコミュニティです。
 
欧米では、昨年あたりから、マーケティングの意思決定を行う調査プロセスの一部として、広く認められたリサーチ・ツールです。
 
●先週、クライアント様から次のようなご質問もいただきましたので、共有させて下さい。
 
Q:MROCを実施するに当たり、クライアントが既存でもっている自社の会員でやってみたいといってきた場合、モニターは必要なくなるが、実施は可能でしょうか?
 
A:可能です。

但し、MROCでの課題解決にふさわしい「参加者」であるかどうかの吟味が必要かと存じます。テーマに関して、あまり関心がなく、発言力のない人の場合、よい回答が得られなかったり、途中で脱落される可能性があります。

自社商品購入者や、キャンペーン応募者などから作成されたクライアント様の「顧客リスト」にはさまざまな消費者が含まれています。単に受身的に商品を消費する人から、高い問題意識をもって、積極的に企業に提案をしたいという人まで、さまざまです。

コミュニティ上で、相互作用が起こり、参加者間の自然な会話が盛り上がるためには、他の参加者とのつながりを深め、積極的に自分の意見をいうような発言力があり、テーマへの関心度や知識が高い生活者からなるコミュニテイが望ましいと言えます。

このあたり、テーマにより、ケースバイケースで対応になるかと。

ブランドによっては、強いロイヤルユーザーをお持ちのブランドであれば、そのロイヤルユーザーの中で、ソーシャルメディアの利用度などによって、クライアント様の顧客データベースから参加者を抽出するといったプロジェクトが以前ありました。

Q:MROCの結果を分析し、商品や広告アイデアを出すことがクライアントから求められた場合、MROCで有益な情報がないととても困ると思いますが、その場合はどのようにしますか?あと、MROCの結果を見ての、アイデアは既存の広告代理店のクリエイターなどがやるアイデアと明らかに違いが出るものでしょうか?

A:ご指摘は、グッドポイントであり、よく聞かれますご質問でもあります。

もともとMROCはコミュニティであり、長期の日常での調査です。日常に密着しているがゆえに、想定外のアイディアがでる「可能性」は、「アイディア出し」を目的とするグルインよりも高くなります。しかし100%の保証はありません。参加者の質やコミュニティの運営にも影響されます。アイディア出しに特化する場合は、参加者は、イノベータ、インフルエンサー、フォロアーといった条件で絞った方がよい場合もあります。

さらに、長期MROCが定着していない日本の市場向けに、(株)MROCジャパンが独自にご用意致しました「短期的MROC」では、この問題はより深刻になります。「2週間前後で、グレート・アイディアがでれば、みんな苦労はしない」とも言えますが。。。

このあたりは次のようにご理解いただき、クライアント様と理解を共有していただければと存じます。あまりクライアント様の「期待」を上げますと、逆に「不満足度」が高くなりますので。

本来MROCは長期的なものですので、製品開発や広告開発の「アイディア出し」といった全くゼロからのアイディア・ジェネレーションが目的の場合は、できれば長期MROCをおすすめ下さい。

そうでない場合、すなわち短期MROCをお使いの場合は、

① グルインなどど同様、アイディア候補のブラッシュアップや有力候補の選定、既存商品との比較評価といった具体的な目的(短期で解がでる目的)に絞るーMROCはすべての課題(目的)に対応するものではありませんので、ご提案される場合は、このあたりご留意お願い申し上げます。この場合でも、グルインよりも長期でかつ日常生活に密着していますので、より深い評価をえることができます、

② あくまでも、完成アイディアではなく、そのヒントをえるというスタンスで捉えていただければと思います。つまり、MROCは本来、消費者と企業との共創(コ・クリエーション)作業ですので、MROCを運営しながら、そこからクライアント様や御社のプランナーの方々が、ヒントをえて、アイディアを作り上げて行く、つまり消費者言語を収集しながら、クリエイターの方がヒントを獲得する場としてのMROC(消費者の生の声の貯蔵庫)として位置づけていただければと存じます。つまり、MROCは、自社の「マーケティング用ソーシャルメディア」になります。そのようにお考えいただくと、プロのクリエイターの方にとっては、MROCは敵ではなく、頼もしい味方になるかと思います。両者のアイディアの優劣の比較も必要がなくなります。

●このように、問題意識や関心が高い消費者が、コミュニティ参加中の集中度の高い中で、日々の生活の中で思いついたことや、自分たちの生活をよりよくするために、企業に対して、こんな商品を作ってほしいとか、このように改善してほしい、このような売り方をしてもらうとより買いやすいといったようなアイディアの提案・収集の場としてMROCは存在価値があります。単に口コミサイトに投稿しても、それが企業の担当者まで届く保証はありません。多くの場合は投稿のみで終わるでしょう。MROCでは、企業の担当者がそのアイディアに対して、消費者にさらに詳しく聞くこともできます。さらにそのアイディアについて、参加者の他のメンバーの意見も聞くことができます。

企業の担当者の方は、自分で、あるいは企業内だけで考えないで、生きた生活者の声を継続的にリスニングするシステムとしてのMROCの社内構築をおすすめ致します。他のリサーチ・ツールと比較しても、そのROIは高いものです。

●MROCのように、新しい概念であり、定番の参考とする本などもない場合、最初に導入された時に、間違って紹介されるとそれが1人歩きする怖さがあります。

仮に、もしある人や会社が、最近、欧米で話題になっているMROCが、既存の「掲示板グルイン」(BBFG: Bulletin Board Focus Groups)のようなものだと紹介されたとします。MROCに興味をもたれたあるクライアントさんが、調査会社から「MROC=掲示板グルイン」 というプレゼンを受けた場合、過去に掲示板グルインをやってあまり良い印象をもっていなかったそのクライアントさんは、MROCを2度と使わない可能性もあります。

新しい概念の場合、正しい理解の普及促進が強く望まれます。その上で、日本市場に合うように日本版MROCに改良することが良いかと思います。

◆NewMRバーチャル・イベントは、今週25日(水)開催:エスノにご興味のある方は必見
 
●今週25日のThe NewMRVirtual Festivalは、エスノグラフィがテーマ。
 
総論、ゲーミング、テキストアナリティクス、ニューロサイエンスに次ぐ、第5弾です。
 
プログラム  合計12プレゼンが行われます。
 
●USセッションでは、CommunispaceのJulie Wittes Schlackが In Time, In Context, In-Spired: Mindfulness in Mobile Ethnographyと題して講演予定。

●LinkedInでのエスノ議論:When is it ethnography and when is it not ethnography?
 
 
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2011年5月18日水曜日

MROCと顧客ロイヤルティ、顧客経験

《第59回》


●次回の第13回JMRX勉強会2011年5月度は、先日予告しましたように、

株式会社アイエムジェイ マーケティング本部 統合型マーケティング戦略室 チーフコンサルタントであり、

日本初のNPS認定資格者(Net Promoter Certified Associate®) の

高見俊介氏による

「ロイヤルティリーダーに学ぶソーシャルメディア戦略」

を来週5月23日(月)に、東京ウイメンズプラザで開催致します。

お申し込みはこちらから:http://kokucheese.com/event/index/11456/


●この3月に同名のご著者を出版されたところです。

「ソーシャルメディア活用による顧客ロイヤルティ向上」のテーマについて、

多くの事例を交えながら、わかりやすく解説されています。

ソーシャルメディアや、
ソーシャルメディア活用の効果測定、
ソーシャル・リスニング、
顧客ロイヤルティ、
顧客経験(体験)、
顧客満足、
ソーシャルCRMなどに興味のある方には必読の書です。

●「ソーシャルメディアのビジネス戦略とロイヤルティマネジメント

~先進企業のケーススタディを踏まえて~」参照

MROC製品開発上の代表的事例である

ゴディバ・チョコレートの事例も紹介されています(113頁)。

●ちなみにMROCは、顧客ロイヤルティの分野でも、ロイヤルティに影響を与える「顧客経験(Customer Experience)」-コンタクト(タッチ)ポイントを広く、深く理解する上で有効な方法です。(E-MROC)


●企業経営にとって(=CEOにとって)、「顧客ロイヤルティ」や「ソーシャルメディア」の重要性を認識することの大切さを強調されています。

●この2つを結ぶ重要な指標として、NPS(ネット・プロモータ・スコア)が紹介されています。(40頁以下参照)

NPSは、製品/サービス、ブランドに対する顧客ロイヤルティを測る指標。

「X社を友人や同僚にすすめる可能性は、どのくらいありますか」という質問に対する
11ポイント評価の回答(非常に可能性が高いー非常に可能性が低い)によって、

ソース:Net Promoter Score (NPS) Criticisms and Best Practices対象者(顧客)を



10-9: 推奨者(プロモータ)、
 8-7: 中立者(ニュートラルPassives)、
 6- : 批判者(ディトラクター)に分類し、

NPS指標=[推奨者(プロモータ)の%]-[批判者(ディトラクター)の%]


●以前、私のもう1つのブログでも、このNPSをご紹介しました。

NPSとSocial Mediaの関係

これは、Dave EvansのSocial Media Marketingの内容を紹介したものでした(128頁参照)。


●リサーチの分野では、NPS指標は、フレッド・ライクヘルドの原著のThe Ultimate Question: Driving Good Profits and True Growth (翻訳:「顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」)が2006年に出て以降、大きな論議を呼んでいる指標です。

●リサーチにおいて、売上(=購買)を予測する、つまり売上と、高い関連性のある「指標」を見つけることは非常に重要なことです。

なぜなら、

もしその指標を見つけることができれば、その指標のスコア(評価値)を向上させるように、マーケティング活動を行えばよいからです。

そして、そのキー指標を向上させるには、さらにどのような評価項目を向上させればよいかを解明できれば、さらにより有効なマーティング活動を効率よく展開できるからです。

その指標を向上させる項目がわかれば、さらにその評価の変化を追うことで、売上低下の原因や、その改善点などがわかる利点があります。


●「顧客ロイヤルティ」のケースでいえば、

売上と顧客ロイヤルティとの間には、高い関連性があると考えられています。

つまり、企業やブランドなどに顧客ロイヤルティが高い人ほど、それらの商品を購入し、売上に貢献するだろうと考えられるわけです。

それでは、「顧客ロイヤルティ」をリサーチでどのように指標化できるかが問題になります。

その方法の1つがNPSです。

●それ以外では、例えば、

「顧客満足度」(CS:Customer Satisfaction)で測定しようとする人もいます。

しかし、満足した人が必ずしも、その商品を繰り返し購入するとは限りません。現在では、購買行動を予測する指標としてのCS指標の有効性は低下しています。

つまり、CS指標に実際の購買行動を予測する力がなければ、いくら予算をつぎ込んで、満足度上向上運動や、改善を行っても、売上アップにはつながらないということです。

●またあるリサーチャーのグループは、NPSという単一指標(NPSは、ブランドや製品を他人に奨める可能性を0-10の11点満点で尋ねる1つの質問)では、ロイヤルティは測定できないとして、多重指標(複数の質問から作成する指標)を提案しています。

例えば、私があるグローバルの調査会社で、顧客ロイヤルティのソリューションを担当していたモデルでは、次の4つの質問から、ロイヤルティ指標を構成していました:

①伝道 Advocacy(推奨 recommend)
②維持 Retention(継続利用Continue to use)
③増加 Expansion(多購買Buy more)
④他購買Buy other

推奨の質問は①に含まれています。


このモデルのロイヤルティ指標も、NPS同様、売上などの財務指標との間の高い相関関係が検証されています。

多重指標の場合、各測定(質問)間のウエイトづけが問題になりますが、このモデルでは単純に平均値を算出していました。
 
●ちなみに、このロイヤルティ・モデルでは、下記の図(クレジットカード企業の例)のように、合理的なモチベーション(ここに顧客満足が含まれる)と、情緒的なモチベーションによって影響をうけ、それらが、個々の顧客経験(タッチポイント)によって説明されています。これらの関係性を、構造方程式モデリングの因果解析手法を使って定量化しています。


●USの企業やCEOにそのわかりやすさから、広く受け入れられた事実に対する、
リサーチャーや研究者からの「嫉妬」もあり、彼らのNPSに対する批判は手厳しいものになっています。

売上との関連性に疑問を持つリサーチャーや、11点尺度の信頼性や、11点を3分類する方法に反論する研究者もいます。Net Promoter

最近でも、NPSをめぐる議論は、リサーチャー間で盛んに行われています。

例えば、

1)フォレスターのリサーチャーであるRichard Evensen氏の

Stop Using NPS (Net Promoter Score) But Please Save The Question!

・NPSは、スネーク・オイル(いんちき薬 《行商人などが万能薬として売る》) だと批判しています。

そして、Stop using NPSだと主張しています。

その理由として、

①国や文化によって、11点尺度の評価が異なるので、推奨者から批判者を引いた%に問題あり、
②顧客ロイヤルティ向上のために改善を行う従業員の動機づけの良い指標にならない、
③NPS指標と、実際の顧客の行動との関連性に疑問あり。

NPSをめぐるさらなる議論:The Forrester Community for Market Insights Professional参照。

2)Jeffrey Hennings氏のMarket Researchers Are From Mars, NPS Advocates Are From Venus


・NPS批判派(主にMR)とNPS擁護派の論争は、まるで火星人と金星人の議論で噛み合わないと言っています。
 
Market researchers are from Mars, NPS advocates are from Venus, but business is conducted here on earth. What do you think the two sides could learn from one another?

●リサーチャー側は、厳密性にこだわるだけでなく、複雑な現実世界においてNPS指標のもつビジネスを動かす上での「単純明快さ」の力から、インサイト創造の上で多くを学ぶ必要があるように感じます。


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2011年5月2日月曜日

ソーシャル・リスニング

《第58回》

●2011年4月26日(火)に第12回JMRX勉強会2011年4月度を開催致しました。

●内容は、株式会社ホットリンク代表取締役社長内山幸樹氏による

【ソーシャルメディア分析最前線】−ソーシャルメディアリサーチサービスの可能性 を見る

でした。

●JMRX勉強会のためにお忙しい中、ご講演を快諾してくださった内山社長と、内山氏への講演依頼の労をおとりいただいた(株)クロス・マーケティングの山崎晴夫取締役に深く御礼申し上げます。

参加者総数74名、懇親会23名と盛況でした。

●プレゼン資料です。
●以下のブログもご参照下さい。内容紹介と評価がよくまとめられています。

日々の気になる出来事『「JMRX勉強会「ソーシャルメディアリサーチサービスの可能性を見る」に参加してきた』

JMRX勉強会【ソーシャルメディア分析最前線】に行ってきた


●従来のマーケティング活動の意思決定をサポートするための既存の「マーティング・リサーチ」が存在するように、ソーシャルメディア・マーケティングが拡大すれば、それをサポートする「ソーシャルメデイア(マーケティング)リサーチ(SMR)」の存在・普及は、当然の流れだと考えられます。

●日本のソーシャル・メディア・マーケティング(SMM)が、USのそれよりも数年遅れているように、SMRの発展も同様です。

●SMRは、USでは、次のように定義づけられています。

Social media research is the application of scientific marketing research principles to the collection and analysis of social media data such that valid and reliable results are produced. -Conversition


従来のMRの下位に位置づけるとすれば、MR-SMRであり、SMRの方法論の1つとして、リスニングがあるとすれば、MR -SMR-Listeningになります。

また、狭義のSMRを「ソーシャル・メディアで、誰が、どこで、どんな話をしているか」を調べるソーシャルメディア・モニタリングであると考えることもできます。
 
SMMの発展に応じて、SMRも今後さまざまな方向への展開・拡大が期待されます。
 
●先行しているUSでは、リスニングのソフトウエア・プラットフォームの開発・提供企業(先日、Salesforceによって高値で買収されたRadian6Sysomosなど)から、SMのリスニング分析だけにとどまらす、マーケティングやメディア、広告、PRのプラニングや実施、評価までを行う有力なフルサービスのリスニング・ベンダーが多く活動している点が特徴です。

例えば、Converseon、カンターメディア・カンパニーであるCymfonyAttentioBzzAgentCollective IntellectCRM Metrixなど。

また、調査会社系では、DigitalMRHarris InteractiveJ.D. Power and Associates Web IntelligenceConversitionなどがあります。

●リスニング分析は、精度の問題や、目的に応じた分析指標の選定、それらを提供するソリューションの選定問題があります。リスニングを戦略に有効に生かすには「測定」の問題をクリアする必要があります。

2年前には既に、目標と各指標、そのソリューションが整理されています。
Social Marketing Analytics 54頁。

●2010年には、単なるソーシャル・モニタリングを行うリスニング1.0から、さらにソリューションの進化とそのビジネス上での有効性が向上したリスニング2.0へ進化したといわれています。

●USのリサーチャー間でのSMR/リスニングの位置づけは、

Social media research is the largest growth opportunity: 63% of MR firms are experimenting with SMR or considering it for the future, with only 17% having conducted any social media research to date. Research Firms on the Future of Research Technology
成長が有望であり、

Both techniquestext analytics and social media listeningare highly complementary to traditional survey research, offering new ways to field better surveys. Asking in the Age of Listening

相互補完的関係にあるとされています。サーベイの品質を向上させるものであると。

●これは、勉強会の中で、内山社長が指摘されたソリューションのパターン(74頁)のパターン3に当たります。

さらに、今後POSデータなどとリンクして、販売予測モデルの構築など、パターン4への進化が大きく期待されます。

●日本でも、電通が、フルサービスのソーシャル・リスニング・サービスを始めました。

ソーシャルリスニングで生活者意識を分析するソリューション手法「Sora-lis」を開発

-ブランド診断、商品開発、キャンペーン効果測定、リスクモニタリング等幅広い活用が可能-』を4月18日に発表しました。

●SurveyML氏が、Twitterで、

よし!明日から意識的に使ってみよう<RT @hibukuro: いいね! RT @surveyml: CGM分析とかバズリサーチとか調査手法としてのソーシャルメディア分析は、「ソーシャルリスニング」に統一してはどうだろう。英語でもそのまま通用するし電通も使ってるし。 #jmrx

11:37 PM Apr 26th HootSuiteから

●ソーシャル・リスニングDigital Insights and Analytics

●「ソーシャル・メディア・リサーチ元年」の今年、SMRに含まれる

日本でのソーシャル・リスニングと、MROCの拡大・進化が大きく期待されます。

●先週ご紹介しました『グランズウエル』の予言で締めくくりたいと思います。

マーケターや開発チームの情報源となってきた市場調査部門は脇に追いやられ、リサーチ部門であれ、マーケティング部門であれ、傾聴を担当している部署が組織の意思決定を左右するようになる」(132頁)




5月のJMRX勉強会は、IMJ高見俊介氏の「ロイヤルティリーダーに学ぶソーシャルメディア戦略」を予定しています。5月19日、23日、24日、25日のいずれかで現在、会場を調整しております。決まり次第、ご連絡申し上げます。

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#150 レイ・ポインターのMR白熱教室2015 第4回(最終回)報告

<第149回> レイ・ポインターのMR白熱教室2015 第4回(最終回)報告 2015年6月23日 ● 第4回目のテーマは、 『データからストーリーテリング』 でした。 ● 7月にレイとの懇親会を予定しております。世界のMRのソート・リーダー(thought ...