2011年7月28日木曜日

MROCと第16回JMRX7月度勉強会報告

《第67回》

◆JMRX勉強会2011年7月度開催

●2011年7月23日(土)に、築地の社会教育会館にて開催致しました。

これまで、原則平日の夜に開いておりましたが、初めて休日の午後開催することができました。本当は昼間やりたかったのですが、会場の都合で夜になりました。

2011年上半期のまとめということで、講師の方も通常1人から、今回は3人の方をお呼びしました。(そのため参加料が1,000円から2,000円に上げさせていただきました。今回は1万円の有料会場の使用ということもあって。次回からはまた通常の1,000円でがんばります。)

●JMRX勉強会の主旨にご理解いただき、お忙しい中、原稿の準備および講演をしてくださった講師の方に深く感謝申し上げます。

また年末かあるいは年始にこの第2弾、2011年総括を休日に開催したいと思っています。

●あと、以前ご案内させていただいた「JMRXのMR研修会」を秋ぐらいから開催できればと思っています。

●ちなみに、講師の方には、講演料1万円と懇親会費無料、会場提供会社様には、参加社員の方全員の参加料無料になっております。(2011月2月度より。それまで講師をしていただいた先生方、誠に申し訳ありません。それまでは無給でした。)

ぜひ、JMRXでお話していただける方と、会場提供企業様の応募をお待ちしております。

●案内:

2011年 7月23日(土) 18時30分~ @築地社会教育会館

[JMRX勉強会【次世代MRネクストステップに向けて】]

-2011年上半期MRトピックスを振りかえる

【プログラム】

【1】山崎晴生氏(株式会社クロス・マーケティング取締役)

  「ネット調査の過去・現在・未来」

   ⇒ネット調査業界第2位のクロス・マーケティング創業者山崎氏に過去10年の
  定量ネット調査を振り返っていただき、2010年代のMRを展望していただきます。

【2】中村耕史氏(クックパッド株式会社)

  「クックパッドのリサーチ方法」

  ⇒萩原雅之氏『次世代マーケティングリサーチ』で紹介されたクックパッド社の

  リサーチの方法についてご紹介していただきます。

【3】岸川茂氏(株式会社MROCジャパン)

  「海外MR会議報告第2弾:2011年上半期MR会議レビュー

   CASROテクノロジー会議報告―MROCとソーシャルリスニング、モバイルリサーチ

 *CASRO: Council of American Survey Research Organizations

⇒海外のMR会議での発表から、次世代MRの3つの主要方法の最新動向をご紹介いただきます。

●ツイートのまとめ by Bob3Bob3さん http://togetter.com/li/165339

-今日のJMRXはリサーチャーにとっては出ておくと良かったと思う。賛否はおいといて、脳みそは揺さぶられること間違いなし。それが自身の行動を変えるきっかけになる。 #jmrx

返信する RTする ふぁぼる

mshino55 2011/07/23 23:42:13

-昨日のJMRX、かなり面白かった!否応なく、自分の今後の仕事の仕方を考えさせられる内容でした。質疑応答もかなりインタラクティブに行われたので、皆さんも感じられるところが大きかったと感じました。素晴らしい場の提供ありがとうございます。#JMRX

返信する RTする ふぁぼる

Ryuta_O_ 2011/07/24 08:26:43

ブログでのご紹介は、(必読です)

@mshino55さんのJMRXに行ってきた

・「各種差別化が行われたMROCブームが業界に来るのかもしれませんが、レポートだけをただ提供するようなサービスを、安価に提供して、MROCの真価が発揮されないまま一過性のブームになること、は少しさびしいように思います。」



-「参加者は45名で、30歳前後から60歳くらいまで幅広い年代の方々がいた。

30歳前後の人で10名ちょいは居たかな」

-「今までのサーベイメソッドをきっちり学んで実践しているリサーチャーの方々が、新しいサーベイメソッドを開発・実地で学んでいけば、鬼に金棒のような気がする。なので、今までのサーベイメソッドをちゃんと身につけられていない若い人・会社よりも、もう少し上の年代の方々の方が有利な状況かつチャンスであると思う。たぶん、今の広告業界におけるソーシャルメディアと同じように、基本の重要性が再認識される。新しいものだけではダメ。」

-「また、リサーチャーに限らず営業もなんだけど、これからは、新しい「ソーシャル」「モバイル」だけではなく、今までの「リサーチ」の近接領域である「広告」「システム」「アクセス解析」「検索」といったあたりも理解していかなければならないと考えている。特に「マーケティング全般」。でなければ、事業会社のマーケ担当者が相談するには相応しくなくなるだろう」

-「●その他オフレコ多数 ・参加者だけの秘密。書きたいけど書けない!」

-「●まとめ ・今は、ネットリサーチ以来の大きな変革の時期。面白いぞ!

-「私自身は、消費者を知る=リサーチならば、「検索」「アクセス解析」「口コミ分析」なども全て「リサーチ」と言えると思っているんだけど、業界の方の認識はどうなんだろうか。」

●まず筆者のCASRO会議の発表を中心にしてのプレゼンから始まりました。

CASROは、MRAとならんでUSを代表するMR業界団体です。

2011年6月2日と3日にNYで開催されたCASROのTechnology会議の出席方向です。

●スライドにありますように、世界では毎月数多くのMR会議が開催されています。

しかし残念ながら、日本からの参加はあまりないようです。CASROの時は私1人でした。

現在のグローバルのMR状況を見ていると、やはり欧米の動向から目を離すことはできません。

なぜなら、数十年に1度の大きな変革が起こっているからです。

日本のMRがガラパゴス化しないためにも、ウオッチングが必要です。

少なくとも変革の発信基地になっていない日本の現状からみても。

●欧米のMR会議の参加費は、個人で参加するには結構、高額です。それに飛行機代、ホテル代などを加えると相当な金額になります。

1個人や、1つの調査会社ではなく、業界全体で、重要なグローバルのMR会議に「代表団」を出して、業界全体でその情報をキャスケード・ダウン(Cascade down)し、シェアすることが望まれます

JMRXに資金があれば、代表団を毎回派遣したいところですが。。。

●グローバルの2大トレンド、①ソーシャルと②モバイルについてお話をしました。

●2011年MRの上半期を総括する上で不可欠であります、3月に「次世代マーケティングリサーチ」を出版された萩原さんをお招きする予定でしたが、あいにくご予定があわず、代わりに「スライド」参加をしていただきました。お忙しい中、事務局からの依頼を快諾していただき、メッセージをお寄せいただいた萩原さんに深く感謝申し上げます。

●続いて、クックパッド(株)の中村耕史さんより、クックパッドのリサーチについてご説明いただきました。
●最後に、(株)クロス・マーケティングの山崎晴生さんから、MROCを中心としたオンライン・リサーチの過去と将来についての展望をお伺いました。
●勉強会では、MROCについてたくさんの貴重なご質問をいただきました。

例えば、「オンライン・グルインとの違いは何か」

上記のブログで書いていただいているように、アスキングとリスニングかの相違以外に、最も大きな両者の違いは、調査の単位が「コミュニティ」か、単なる「グループ」かという点です。

なかなかこの「コミュニテイ」のアドバンテージがご理解いただけません。

コミュニティである点で、1-2人ではダメであり、1週間ではMROCは成立しません!!!

MROCの中でグルインは実施可能ですが、

グルインの中で、MROCは実施できません。

●また、勉強会に参加いただいた@ ngshm さんから、後日、次に様なコメントを頂戴致しました。

ご連絡ありがとうございました。

「今日、あるリサーチャーにMROCの可能性を否定されてしまったので、自分の感覚だけではく、実体験を上手く伝えることができれば…と思っております」

そのリサーチャーの方との会話を再現していただきました、

「私

「そういえば、『MROC』ってご存知ですか?」

Aさん(リサーチャー)

「いや、初めて聞いたよ。」



「自分も本と勉強会で仕入れた知識なので、今一つ内容を理解しきれていないんですけど…。なんか、最近はWEBでグルインができるらしいんですよ。」

Aさん

「へぇ~、知らなかった。時代は進んでいるんだね。」



「ただ、グルインって時間も限られているし、参加者同士が本音で意見交換とかをできないってこともありえる話じゃないですか?」

Aさん

「うん、確かにね。」



「MROCは、WEBっていうのは同じなんですけど、もっと長期間、3ヶ月とか1年とかの間、参加者同士がコミュニティで関係を作ることで、本音を言い合える仲にすることができるらしいんです。」

Aさん

「ふむふむ。」



「で、そこにメーカーの人とかも入って直接本音で意見交換してもらうことで、より有益な情報が得られる…みたいな手法っぽいです。」

Aさん

「ふ~ん。(あまり興味がなさそうな反応)」



「アメリカでは実績が出ていたり、JMRAみたいな団体のセミナー(?)とかでも話題になっているみたいで、5年後とかにはこの流れが日本に来る!っていうものみたいですよ。」

Aさん

「う~ん。僕は賛同できないなぁ。意味あるのかなぁ。」



「個人的には話を聞いて『凄い』『ついていかないとヤバい』って思いました。」

Aさん

「ふ~ん。まあいいや。」
-----------------

という感じでした。

多分正確には伝えることができていないし、

実体験もないので説得力にも欠けていたことが原因だろうと思い、

正直悔しく思っています。

・・・

お客様とお話したり、MROCの可能性を伝えたりするのに、

一度自分で体験しているのといないのとでは大きな差があると思い、

MROCプラットフォームの1週間無料公開に思い切って参加してみようと思いました。」

まだMROCをご存じないリサーチャーの方も多いようです。さらに興味・関心を持ていただいているリサーチャーの方はさらに少ないようです。

●MROCをビジネス上の意思決定のための「リサーチ・ミックス」における定番手法として位置付けるためにベスト・プラクティスを求めて、活動しておりますMROCジャパンとしては、まだまだ頑張らなくてはと思います。


次回の予告:JMRX勉強会8月度

8月25日(木)に、インサイトリサーチで有名な(株)デコムの大松孝弘社長をお迎えして、

『インサイトリサーチによるアイデア開発支援』と題して、

・クライアントは、協力会社が考えたアイデアを買いたいのではなく、

自分たちでアイデアを手に入れたいと思っています。

そして、そのサポートを求めています。

デコムは、2006~2010年の5年間で、

16業種、51社、272案件のインサイトリサーチの実績があります。

その全ては、マーケティング領域での、

何らかのアイデア開発支援のために、行われています。

事例を踏まえて、ご説明していただきます。ご期待下さい。

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2011年7月19日火曜日

MROCとJMRAトピックスセミナー

《第66回》

◆MROCの価値(続き)

●前回の投稿に対して、次のようなツイートをいただきました。

@sh0tk インサイトを創出する力が既存の手法よりも大きいと。他の点では既存の方が優れている点もあるしケースバイケースで使えるといいんだろうな。マーケティング・リサーチ・オンライン・コミュニティの略。>MROCの価値 http://ow.ly/5ITfs

●ご指摘の通りでございます。

完璧な手法はありません。条件(課題や予算、時間など)によりベターな手法を1つ選択するか、それぞれの弱点を補う手法を2つ以上組み合わせて適用することが良いと思います。

現実問題、予算や時間的制約で、調査の現場では、最良の解を求めて2つ以上調査手法を組み合わせてということはあまりないでしょう。

●MROCは、「コミュニティ」という利点(つまり、作られた調査環境ではなく、生活現場からの発言によって、調査が目指すリアリティに、より近い利点)以外に、

オンラインの力を借りて、現実の時間的、予算的制約を超えて、複数の手法を同時に適用できる点がアドバンテージの1つだと思います。

例えば、写真をアップした参加者にその内容を述べてもらって議論したり(エスノ+グルイン)、

議論の内容を(グルイン+デプス)

(ダイアリー+グルイン)

●また前回の投稿に対して、定性リサーチャーの方から多くの批判の声をいただきました。

インサイトの創出に絶対的自信をお持ちのグルインのモデレーターさんや、詳細面接のベテランさんからです。

インサイト創出には絶対的(完璧とか唯一正しい)方法はありません。

超理想的には、神のお告げで「こんなインサイトが出ました」が、お金も人の手間も、時間もかかりませんので一番よいのでしょうが、普通の人間にはそういうわけには行きません。

●単独のグルインでも、1人だけの詳細面接でも、ビジネスを成功に導く「インサイト」が発見できればよいわけです。どの方法がベストだとか、ベターだとかはありません。結果=インサイトが創出できるかどうかが、すべてです。

「インサイトのないMROCなんて」「インサイトのないグルインなんて」です。

また、同じグルインでも、MROCでも、担当する調査会社(あるいはその担当者)によっても、インサイトがでたり、でなかったりする場合もあるでしょう。

●MROCは、ソーシャルメディア時代にふさわしい消費者データの収集「ツール」にすぎません。しかし、有効で、効率的なツールです。

●インサイトを引き出すのは、その「ツール」を使う人間、リサーチャー次第です。

でも、有効に効率よく消費者データを収集すれば、これまで収集に使っていた時間をインサイト発見の方に傾注できるかもしれません。

●MROCを【実施する側】は、消費者側に入りこみ、「より消費者のことを知ろう・知りたい」という意欲、

他方、【コミュニティ参加者側】は、「企業や商品・ブランドを自分の意見でよりよくしたい・してやろう」という企業活動への参加・共創(コ・クリエーション)意欲が高いことが、MROCの成功要因の1つです。

特に、1年以上の長期MROCではない、短期MROC=戦術的共創コミュニティTCCは、課題特定、(参加者への)課題明示(参加者間の課題共有)で、課題解決型コミュニティです。

すなわち、参加者がコミュニティに参加した「目的」(期待されていることが)を明確に意識し、参加者が自分達のほしい製品を自分達で作ってしまおう(課題解決)という「物づくり」コミュニティ(イノベーション・コミュニティの場合)になることが重要です。

●MROCに対して、収集できる情報量が多いので、そのテキストを読むのが大変だとか、どのようにそれらを分析すればよいのかわからないといった「批判」をよく聞きますが、

そのような批判に対して、思わず「消費者の生活現場で起こる生の声をたくさん聞きたいとおっしゃたのは、あなたではありませんか」と聞き返したくなります。

それがリスニングです。

●テキスト・マイニング(TM)をすることが、「リスニング」ではありません。

安易にTMにたよるのは危険です。とりわけ、現時点でのTMの分析能力から判断してもそう言わざるをえません。

極端に言えば、リスニングには、投影法も、ペルソナも、脳科学も、バイオも、ニューロも、深層心理学も不要です。消費者が生活の現場で、ぽろっと発言した、不満や悩みごとの中に、消費者「ニーズ」が含まれている可能性があるからです。

だから、「生活の実態」をできる限り多く語ってもらうことが重要です。

●単純には、多くの人に、長い期間語ってもらう方がその可能性が高くなります。

それを読むのが大変だとか、それらをどのようにテキスト分析をすればよいのか、といったことを考

えるのは2の次であり、まず、リスニングすることが大切です。

●これまでの調査のシステムでは、多くの予算を使って、多くの調査を行っているにもかかわらず、

消費者が発言する機会=消費者の思いを企業側に伝える機会が少なかったことと、

他方、企業側(調査側)も、消費者の声を聞く機会が少なかった=聞いているようで、ごくほんの一部の声しか聞き切れていなかったと言えます。

ニューロの提唱者は、人間の行動の理由の多くが語られていないと主張します。それは、人間行動の多くが、意識ではなく、無意識(あるいは意識下Sub-conscious)で行われるというものです。

この「意識」の部分ですら、調査はすべてを測定していないのが現状だと思います。

MROCは、そのギャップを少しでも埋める役割をするツールだと言えるでしょう。


◆JMRAトピックスセミナー

7月14日(木)にJMRA主催の「ソーシャルメディア時代と調査の新たな価値」に行ってきました。

Twitter上では、

@SurveyML トピックスセミナーはいつもこの料金ですが、「行動観察」や「統計モデル」などに比べても少なさが際立ち、やはり関心を反映したのだろうと<RT @miyatender: ソーシャルなんたらに若干のhypeの香りを感じつつもその可能性を探ってるとこに、この参加料金だと... #jmrx

@SurveyML 今日発売の宣伝会議(7/15号)の巻頭特集は「ソーシャルリスニングとは何か」、まさに昨日のJMRAセミナーと同じ視点。広告業界でこれだけ注目されてるのだから、調査業界は無関心ではいられないはず。参加者少なかったのがホント残念。 http://ow.ly/5F8wn #jmrx

@SurveyML 企画した私ども研修委員会の力不足もありました<RT @iwaboko: 40数名しか来なかったそう。行ってきた上司が嘆いていた。調査業界危機感なさ杉。 RT @surveyml JMRA「ソーシャルメディア時代と調査の新しい価値」​セミナー #jmrx

@iwaboko @surveyml いえいえ、私のTL上では皆さん認知はされていたようで「行きたかった」の声が満載です。twitterやfacebookやっている方は当たり前のように意識していると思いますし。かく言う私も「行きたかった」一人です(汗)。

@miyatender    ソーシャルなんたらに若干のhypeの香りを感じつつもその可能性を探ってるとこに、この参加料金だと、カモにされるのはごめんだ、と感じて参加しづらかったです。 RT @m_echigoya: テーマに興味があっても、講演に期待感が持てないとか…JMRAだし、とか… #jmrx

@Experidge 昨日のJMRAセミナー「ソーシャルメディア時代と調査の新たな価値」参加人数が少なかったので、不人気であったとか、リサーチャーの危機感が足りないとかの評価。決して内容が悪かったわけではありません。ソーシャルメディアリサーチをリードされる日本の代表者お3方の講演は文句なしによかった。

@Experidge 問題は参加料。個人的に参加するには少々高い。他方、社内りん議を通すには「ソーシャル」ではまだハードルが高い。ソーシャルをやる時間があれば、調査プロジェクトの1本でも受注してきなさいがこの業界の本音。ソーシャルで業界の存在自体が問われているのですが。。。

@SurveyML そういえば昨日のJMRAセミナーに複数の社員を参加させてたのがインテージ、マクロミル、クロスマーケでしたね<RT @madarame: @surveyml 他の分野に目を向けられるのは、人的リソースを多く持つ大手でないと難しい、大手ネットリサーチ会社の何社かには期待 #jrmx

Blog上では、
2011-07-09 JMRAトピックスセミナー「ソーシャルメディア時代と調査の新たな価値

Facebook上では、

http://www.facebook.com/note.php?note_id=213805145329429


●150人定員のところ(Twitterによりますと)40名前後の参加は残念でした。

事務局ではないので、実際の参加者人数はわかりません。結構、JMRA関係者の方(・・・とか委員会の委員の方々)も多く参加されていたように感じました。(もちろん彼らの参加料は無料です)

しかし、JMRAさんには申し訳ありませんが、セミナーへの参加人数は、あまり問題ではありません。

●問題は、「3人の講演者が熱く語られた内容」が、どれだけ多くのリサーチャーに伝えることができるかだと思います。

実際、講演内容が講演中のUSTREAMでの実況や、終了後の講演内容の公開は、

JMRA 正・賛助会員社(者)1 名 22,000円+消費税=  23,100円
一般 1 名 27,000円+消費税=  28,350円

を出して出席していただいた参加者の方には申し訳ない面もあるかもしれません。

JMRA自体、「当日の録音機器等の持ち込みは、固くお断り致します。」と注意しております。

公開になると今後のセミナーの応募人数にも影響を与えるかもしれません。

●ちなみに、セミナーへの出席は、

直接、講演者に質問ができるとか、

他の参加者とネットワークを築くことができるなどのメリットがあります。

日本の講演会では、みなさんだまって座っている場合が多いと思いますが、

欧米の会議に行くと必ず、Networking Breakという名の休憩時間が十分取られています。

会議に参加して、ネットワークを築くことが奨励されています。

●2-3万円だすと10冊以上の良書が買えます。3人の方の講演内容がそれに値するとはいえ、貴重さん時間を割いて出席されるのですから、ネットワーキング作りすることによって、その参加の意義がさらにアップするかと思います。

会場で直接会って議論したり、人脈形成は、単に本を読むだけでは得られない「価値」を生みだす可能性があります。

●それゆえに、JMRXの勉強会も、これに見習って、講演の前に必ず、参加者間の「名刺交換」をお願いしています。

さらには、ネットワーキングを深める目的で必ず「懇親会」を設定しております。

どうぞご利用下さい。

●ということで、以上のことを考慮致しまして、ここでは、ごく簡単にポイントをお伝えできればと思います。

※講演資料は、幸いいずれJMRAのサイトで公開されると聞いております。


●プログラム内容は、(以下JMRAサイトからの一部転載)

『13:10-14:00 基調講演「ソーシャルメディア時代と調査の新たな価値」 

池田 紀行 氏(株式会社トライバルメディアハウス 代表取締役社長)マーケティングにソーシャルメディアを活用する際、何を知って何をすればよいのか。

分かりやすいソーシャルメディアの概論に始まり、多くの方が見落としがちな点など、が紹介されます。

そのマーケティングプロセスの中のリサーチの位置づけも講演いただきます。

14:00-14:40 事例① MROC(Market Research Online Community)

 (オンライン上のリサーチのためのコミュニティ、そこからデータをとっていく方法)

 山﨑 晴生 氏(株式会社クロス・マーケティング 取締役)          
14:40-15:20 事例② ソーシャルリスニング

(消費者が自ら発しているものを、マーケティングデータに使う方法)

萩原 雅之 氏(トランスコスモス株式会社 エグゼクティブリサーチャー)
15:30-16:10 パネルディスカッション・質疑応答

 消費者行動とマーケティング手法の変化

 必要なデータ・情報とその収集技術の変化

 リサーチャーのミッションとコアスキルの変化

講演者である3名の方でそれぞれの問題意識を深めながら、従来型調査とソーシャルメディアの接点を整理しこれからのリサーチャーのあり方について議論をします。

●参加のすすめ

JMRA研修委員会では、新しい調査技法やアプローチを取り上げ、トピックス・セミナーとして情報を随時発信しています。

これまでマーケティング・リサーチ業界のIT 技術の話題の中心は従来の調査にいかにIT 技術を活用するかというものでした。しかし、現在のソーシャルメディアの定着は、リサーチ業そのものを問いただすことになるのではないでしょうか。それはリサーチャーの使命を再定義することを迫る問いを発しているかのように思われます。

今回のセミナーでは、ソーシャルメディアの技術的な面だけでなく、リサーチャーが消費者・生活者とクライアントサイドをつなぐ架け橋としてどのような存在感を発揮できるのか、改めて考える契機としたいと思います。』

以上、JMRAからのご案内でした。

●より具体的内容は、

池田氏の発表:

1.情報大爆発とメディア接触状況
2.ネットナビゲーションの変化:ネットトラフィックは検索+ソーシャルへ
3.国内外ソーシャルメディアの最新状況
4.SMMの効果測定法と現状の課題
5.2020年のマーケティングコミュニケーション
6.まとめ:リサーチャー2.0へ

・ソーシャルメディアは知っている人と使っている人の間には深い溝がある

・ソーシャルメディアレボリューションのビデオ紹介




・効果測定の5つの罠と回避法:「測定」のために「測定」から抜け出そう

-目的が曖昧だから効果が測れない
-効果測定における「手段の目的化」が蔓延(測定のための測定9
-KPIばかりでKGIを測定していない
  KGI: Key GoalInidicator (重要目標評価指標):ブランド好意度や購入意向、推奨移行など
     KPI:    Key Performance Indicator (重要業績評価指標):リーチやエンゲージメント、口コミの量
や質など
  KPI測定の目標はKGI検証のため

⇒(筆者注)この部分の説明は、池田氏のお話の中で最も力が入っていたように感じました。KGIとKPIの考え方は面白いと思いました。リサーチャーから見て、ネットの場合、KPIが簡単にできる点にアドバンテージだと思っていました。しかし、KGI測定は、通常の調査でも、難しい点があります。なぜなら、現実の世界では影響を与えるものがさまざまで複雑に絡みあっている場合が多いからです。池田氏はこの測定について、リサーチャーに対する期待を述べられていましたが、残念ながら、リサーチの方でも完全にはその測定は成功するには至っていません。例えば、購入意向の場合、ネット以外にも、オフラインのさまざまな要因が影響しているので、どれがネットの影響の部分かを分離して取りだすことは非常に難しい点があります。実験的手法などでやる方法もありますが、なかなかうまくはいってはいません。

-測定指標と測定方法が間違っている
  
  費用対効果と、投資対効果を分けて分析することが第一歩

-マーケティングゴールとコミュニケーションゴールが混在してしまっている

・今後数年で世界の全てがソーシャル化する

・リサーチャー2.0へ:ソーシャル時代のマーケティングリサーチャーへの期待



●山崎氏の発表:

・MROC=共創コミュニティ

・今起きていること

・MROC誕生の背景

・MROCとは

・日本にMROCは存在しない?

・MROCやってみました

・まとめ

●萩原氏の発表:

・ソーシャルリスニングの考え方と事例

・PGショック

⇒(筆者注:PGのGlobal Consumer and Market Knowledge Officeである Joan Lewisの発言の紹介。ソーシャルメディアがサーベイにとってかわる。以前にこのブログ4月4日号でも全文紹介http://www.minnanomr.com/2011/04/blog-post.html

・ARFのリスニングの定義紹介:自然起こる会話、行動、シグナルを研究すること」
Steve Rappaport氏のListen First!の紹介

・ソーシャルリスニングが生み出す新しいリサーチ手法
①パートナーとして消費者が参加できる仕組み
②膨大な消費者行動・会話ログの収集・分析
③データ収集・分析のための先端テクノロジー

・PGのVocalpointとスタバのMy Starbucks Ideaの紹介

・言及ボリュームで消費者の関心度を測る

・内容分析で評判やコンテクストを知る

・PGのGillette Fusion(新製品)と、PepsiCoのTropicana(パッケージ)の事例紹介

・ソーシャルリスニングによる感情の可視化

・ソーシャルリスニングにみられるデータ収集・活用の発想
①蓄積されたデータから仮説を立て検証する
②ひとりの消費者をリアルに思い浮かべる
③同じ対象を継続的に追いかけて変化を知る
④ストリーミングや動画のようにデータを扱う
⑤事実で語らせる実験的な手法を取り入れる
⑥つながりをデータの解釈に活用する

・マイボイスコム+ホットリンクの例
・インテージの例

●最後にパネルディスカッションで、次のような質問が投げかけられました。

各パネラーの方の回答は以下の通りでした。

これまではどうだったか、ソーシャルメディア時代にはどうなるか。

1)消費者行動とマーケティング手法の変化
  □ ⇒ □

池田さん: Exposure (B to C)       ⇒ Engagement  (B into C )

山崎さん: 消費者志向          ⇒   共創

萩原さん: ファネル(10⇒1)     ⇒   逆ファネル(1⇒10)

2)必要なデータ・情報とその収集技術の変化
  □ ⇒ □

池田さん: Interview                 ⇒ Listening

山崎さん: Asking                      ⇒   Listening(観察を含む)

萩原さん: 左脳的(ロジック)    ⇒   右脳的(センス・感情)

3)リサーチャーのミッションとコアスキルの変化
  □ ⇒ □

池田さん: Science                    ⇒ Social Science (Human Science)

山崎さん: サーベイ・メソッド ⇒  Renovation and Innovation

萩原さん: アナリスト(解く)   ⇒   キューレーター(導く)


 
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2011年7月11日月曜日

MROCの価値

《第65回》

◆MROCの価値

●最近、ツイッターでこんなつぶやきを見つけました。

@Xさん  Y社の弊社営業担当者からMROCの説明を受けた。う~ん、営業自身が半信半疑というか、MROCの価値を感じていないのよ。残念ながら、正直全くそそられなかった
(><)。

MROCのエバンジェリストとしては、非常に残念な結果です。

このツイートには実在の方がおられますので、以下はあくまでも一般的なお話とご理解ください。このようなことは、別にMROCの営業に限ったことではないと思います。

●その原因として、

①Y社の営業担当の方が悪いのか?

②MROC自体にサービス価値がないのか?

③はたまた、それを聞いた@Xさんの知識経験が不足していて、問題意識が低いので、MROCの価値が見出せなかったか?

繰り返しますが、これはあくまでも一般的な営業活動のお話です。XさんやY社とは全く関係がありませんことをご理解下さい。

●MROCはまだ内容が不明な方が多いと思います。グルインやネット調査のように、その言葉を聞いただけで、そのサービス内容が共有されるものではありません。内容の理解されないものをお客さんにはなかなか売りづらいかと思います。またお客さんも逆に発注しづらいでしょう。

営業の方も会社の上の方からMROCの説明を1回だけ聞いて、お客さんに売ってこいと言われても、その理解や、販売のモチベーションを高く持つことは難しいと思われます。

営業マン自身が、MROCの価値を強く感じるには、なかなか難しいサービスだと思います。

●MROCを日本の市場に導入し、普及を実践しているMROCエバンジェリストとしては、上の②の「MROC自体に価値がない」とは思いたくありません。

●ということで、今回はMROCの価値について少し考えたいと思います。

少しでも、MROC理解の参考になれば幸いです。

●よく引用されていますように、MROCの名付け親であるUSのフォレスター・リサーチ社のブラッド・ボートナーは、次のように言っています:

「マーケティング・リサーチ・オンライン・コミュニティ(MROC)は、従来の定性リサーチの世界に衝撃を与えた。なぜならMROCは、安くて、早くて、かつグルインなどの伝統的な定性リサーチの手法が現在提供できていない新しいタイプのインサイトを創出することができるからである

「新しいタイプのインサイトの創出と言っています。

私もこれにつきると考えています。

上のツイッターのケースでは、営業マンの話を聞かれた担当者の方は、MROCでインサイトが創出されるとは感じなかったのでしょう。

要はインサイト創出のための手段としてのソーシャルメディア時代の新しいリサーチ・ツールMROCですので。すべては、「インサイト」につきるわけです。それゆえ、MROCの代表的企業であるコミュニスペース社が、MROCをインサイト・コミュニティと呼称しているのは、的を得(射)た呼び方だと思います。

●現在MRは、さらなるビジネス上での有効性やROIが求められています。そのためには、インサイトの創出が不可欠です。従って、欧米では、MROCが注目されているわけです。

現に、MROCが、インサイトを創出し、リサーチのビジネス(売上アップや成長)上に大きく貢献できることをコミュニスペース社が実証しています。

コミュニスペース社が誇りに思っていることは、一度MROCの顧客になったクライアントが、ほとんどリピートをすることだと、先日ボストンの本社に行った時に担当者がそう言っていました。

つまり、コミュニスペース社のクライアントは、MROCの有効性を高く評価し、繰り返しMROCを利用しているそうです。

●ここまで「インサイト」という言葉を多用しましたが、ここでは定性のリサーチャーの方が言うような潜在的なニーズなどの深い心理学的な意味では使っていません。

もっと軽く、「売上アップやビジネス成長に役立つ有益な情報(結果や発見、気づき、アイディアなど)」といった意味で使っています。

MRがビジネスに貢献できる情報をインサイトと呼んでいます。

インサイト(深い消費者理解)についてはいろいろと議論される方もおられるかと思いますが、名称が何であれ、ビジネスに役立つ情報を生み出すのがMRですので、それを象徴する言葉として、「インサイト」というのは便利な言葉だと思っています。

●ところで、一般論として考えた場合、2時間のグルインと、1週間継続した非同時のグルイン(掲示板グルイン/オンライン・グルイン)では、後者の方が、有効なインサイトがでる可能性が高いように感じます。

なぜなら、まず時間の長さが異なる点です。それだけ参加者もじっくり考え回答することができます。

またグルイン・ルームではなく、日常生活において家庭で行われれる掲示板グルインの方が、よりリアルな実態や意見を聞くことが可能ではないかと思います。

もちろん、例外はたくさんあります。ここでは、一般論でかつ確率の大きさを比較していることをご留意下さい。

よって、インサイト創出力では、

★ グルイン・ルームでの6人の2時間グルイン < 非同時オンライン・グルイン

●また、単に性・年代や、週に1回、缶コーヒーを飲んでいるといった対象者条件を満たす人々からなる消費者の「パネル」で構成された非同時オンライン・グルインと、

同じ興味・関心をもつ人々が集まった形成された「コミュニティ」での非同時グルインでは、後者の方が有効なインサイトがでるのではないかとも感じます。

というのは、コミュニティ・メンバーはお互い興味や関心などの共通点で結ばれており、コミュニティに対してもキズナを感じているので、積極的な発言が生まれます。

関心度や購買行動が、単に平均的な、あるいは場合によっては平均以下の消極的な消費者が集まったパネルに、一方的に質問を投げかけて聞くよりは、有効で生産的な議論が行われる可能性が高いように思います。

★ パネルでの非同時グルイン < コミュニティでの非同時グルイン

●さらに、単にテキスト・ベース(文字情報)の議論だけを行う掲示板グルインよりは、写真や動画をアップしたり、ブログで日記を書いたりなど、さまざまなコミュニティ活動を行うことができるMROCの方がより参加者間の相互作用が生まれ、活発な自然な会話の中から、想定していなかったような有効なインサイトが生まれる可能性が高いように思います。

なぜなら、MROCでは、行動観察や日記などで生活実態をより詳しく、正確に把握することができるので、生活者の悩みや不満点、課題など=ニーズをより発見することができる可能性があります。観察だけでなく、その観察内容についても、参加者間でいろいろと議論をすることもできます。

★ 掲示板グルイン < MROC

●つまり、MROCは、消費者生活の起点で、さまざまな複合的なアプローチを取りながら、コミュニティ活動を通して、リサーチ課題を解決してゆこうとするものだと言えます。

どうして消費者パネルではなくて、生活者コミュニティでなければいけないかを理解することが重要です。つまり、コミュニティは、生活密着で、参加者間にエンゲージメント(キズナ)が醸成され、本音の会話がされやすい点において、生活者の真の声を聞くことができる可能性が高くなります。

●消費生活や市場の成熟・複雑化により、リサーチ課題も複雑になっています。なかなか消費者のニーズが見えにくくなっています。それに従って、課題解決への方法も、複合的なアプローチが求められています。

それゆえに、グルインでは、消費者ニーズが見えないような製品カテゴリーの「課題」に、MROCは最も向いていると思います。ここにまさに「MROCの価値」=存在意義があると思います。

●現在、MRの有効性の低下が叫ばれ、その変革が求められている中、

MROCの拡大を

「Askingでいいんじゃない?Askingのどこが悪いの?

これは経営者の方にとって本音でしょう。これまでの方法で、売上安泰であればハッピーです。わけのわからないものに投資を行うことはリスクが高いです。

でも欧米では、リスニングの必要性が強調されています。

でも欧米と日本では事情が異なる?日本ではまったくソーシャルメディアが普及していませんから?と反論することは難しい状況です。TwitterやFacebook、Mixiの普及を見れば、ソーシャルは人間に共通な現象であり、グローバルの動向です。

「大変なことをやろうとしているのでは?

複合的アプローチになれるまでは確かに大変です。だから、グルインだけでいいのでは?と、やりなれた1つの方法を繰り返すことの方が楽です。

新しいことを一から学んだり、複雑そうなので面倒だなと、最初から心理的バリアをはるか、

或いは、

「ITツールの発展によって、これまでのリサーチが目指してきたけれでも、現実不可能であったことが、ようやく可能になってきた」と興奮するか、

MROCに対して、どちらの立場をとられるでしょうか?

●グルインだけでは、生活実態や消費者の本音を把握することには限界があることは多くのマーケターやリサーチャーの方は、気づいているところです。グルインのフロー(ディスカッション・ガイド)で設定した「質問」の回答は、とりあえずは参加者に聞けば、埋まります。

でも、グルイン・ルームで参加者が、言い忘れたり、思いつかなかったことは、山ほどあります。現実の生活のごく一端をシェアしたに過ぎません。グルイン参加者の方は、「不完全燃焼」で会場を後にする人が多くいます。

これまでのサーベイやグルインは、消費者のごく一部の声を測定してきたもので、

他方、消費者は商品やブランド、サービス、企業について、日々1秒1秒、頭や心の中で感じたり、思ったり、評価したりしていることのごくごくわずかしか、言葉(文字)にして、企業に伝えることができていません。
 
近年エスノやニューロ、バイオメトリクスなど、文字であらわせない部分や無意識の測定が注目されていますが、文字で表す部分ですら、完全に測定しきれていないのが現実です。

現在は、ソーシャルメディアなどのITの進歩によって、このギャップが次第に埋められようとされる時代への移行期です。

●日本のMROCは生まれてまだ3カ月です。始まったばかりです。

今後は、MROC実施の各社が、事例を共有・研究することによって、「MROCの価値」を最大化するための「ベスト・プラクティス」の探求が望まれます。

MRがビジネスに貢献するために、

マーケティング/リサーチ課題の解決のためのインサイト(売上アップに役立つ有効なアクションー開発・施策を導くアイディア)の創出に磨きをかけると同時に、

ビジネス的にも効率的なリサーチ・ツールとして、その実施可能性、容易性、コスト面の改善も望まれます。



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2011年7月4日月曜日

MROCとソーシャル・リサーチ

《第64回》

◆MROCとソーシャル・リサーチ

● ある雑誌が、「ソーシャル・メディア・リサーチ」の特集を計画しているとのことで、先週取材を受けました。

「えっ!そんなに早く?」というのが第一の感想でした。。。
そもそも、「ソーシャル・メディア・リサーチ」(SMR)って何でしょうか?

Social media marketing (market) researchが少々長いのでこう呼ぶ人もいます。単にSocial market reseachやSocial researchとも呼ぶ人もいます。

TwitterやFacebookなどのソーシャル・メディアが、昨年から急に盛り上がってきたので、とりあえず「ソーシャル・メディア・リサーチ」でしょうか?

日本では、まだ一部の人の間でしか、知られていないように思います。

●今年3月に出版された萩原雅之さんの「次世代マーケティングリサーチ」の中でも、SMRの用語はまだ使われていません。

代わりに、傾聴Listening(98頁)や、CGM分析(110頁)やバズ分析(111頁)という用語が使われていました。

SMRと次世代MRとはどのように異なるのでしょうか?

SMRは、次世代MRの1つであることは間違いないようです。

●あまり知られていないのも当然で、本家本元のUSにおいても、SMRは、いまだ定義が確立した用語になっていません。

元ForresterリサーチのTamara Barber(現Sr Director of Strategic Marketing at Affinnova)も次のように言っています。(2011年4月)

the actual application and practice of social media market research still remains a black box.

彼女は、social market researchを次にように定義づけています。(2010年5月)

The use of social media and tools to gain increased access to and insights from a company’s target segment in a way that adds value and depth to the researcher’s overall responsibility as an expert on the voice of the customer.

●SMRは、次のような使われた方をしています。

1つ目は、ソーシャル・メディアの動向や、影響、実態などを調査するという意味で使われています。

FacebookやTwitterの普及率が何%になったなどを調べる調査ということです。

2つ目は、ソーシャル・メディアを調査対象者のサンプル・ソースとして使ったり、SM内で調査を行うというものです。

例えば、Facebookの実名ユーザーを相手に調査を行う場合です。

3つ目は、ソーシャルメディア・マーケティング活動の意思決定を行うための情報を提供するためのリサーチです。MRがマーケティング活動の意思決定をサポートするのと同じ役割です。

ソーシャルメディアの効果測定やROIから、どのメディアを使うとか、最適な組み合わせはどうかを判断するなどの情報を提供します。

4つ目は、ソーシャル・メディア・マイニング(あるいはトラッキング)と同義語として使われています。

カナダのトロントにあるConversition Strategiesという会社は、

「ソーシャル・メディア・リサーチ」を全面にうたっている数少ない企業ですが、

このブログの今年の1月17日号「ソーシャル・メディア・リサーチ元年」でもご紹介しましたように、

Social media research is the application of scientific marketing research principles to the collection and analysis of social media data such that valid and reliable results are produced.

とSMRを定義づけています。

ソシャルメディアのデータに、MRの方法論を適用することによって、SMからビジネス上の意思決定に有効な妥当性と信頼性のある情報を収集しようと試みています。

SMモニタリングは単に、SMのレビューやトラッキングであり、キーワードの出現頻度などの量や、誰が、どこで、いつ発言しているか、センチメントのトラッキング、インフルエンサーの特定などを行うもので、一部は重複するけれども、SMRとは異なるものであるとも述べています。

Conversitionは、SMRを「サーベイのないMR」だと呼んでいます。確かに消費者に調査票を用いてその声を聞かなくても、ソーシャルメディア上で、消費者の声が溢れているわけです。

サンプリングやウエイトといったMRでよく使われる用語をSMRで使用しています。

最適なメディアを選択することをSMのサンプリングと呼び、メディアにバイアスがあれば、(例えば、ブログと、Twitterではその参加者属性が異なる場合や、消費者全体の傾向を知りたい場合)それを補正するウエイトづけを行うなどのMR手法の適用の必要性を主張しています。

ちなみに、Conversition Strategiesは、オンラインパネル会社のResearch Nowや、Peanut Labsなどの親会社であり、デジタル・データ・コレクションのグローバル・リーダーであるe-Rewards社にこの5月に買収されました。買収の理由として、顧客のニーズやウオンツに関する有効なインサイトを収集する上で、SMRはビジネスにおいて今後ますます重要になるからだと述べています。

このSMRの定義は、リスニング(傾聴Listening)と大きくオーバラップします。Social media listeningという人もいます。従来のブログやバズ・マイニングも含まれます。

以前ご紹介しましたように(1月17日の本ブログ)、

「リスニング(傾聴)の方法として、グランズウエルでは、

①プライベートコミュニティを立ち上げる、

②ブランドモニタリングを始める(110頁)

の2つの方法が示されていましたが、その後のUSでの展開を踏まえて、

私のもう1つのブログDigital Consumer Planner's Blogで紹介している

ARFのSteve RappaportのThe ARF Listening Playbookでは、

リスニング分野を次の6つに分類しています。

1.検索エンジンとメディア・モニタリング Search Engines and Media Monitoring

2.テキスト分析のためのソフトウエア・ソリューション Text Analysis Software Solutions

3.フルサービス・リスニング・ベンダー Full-Service Listening Vendors

4.オフラインとオンラインの口コミ Offline and Online Word-of-Mouth

5.バズ会社と口コミ・プログラム Buzz Agencies and Instigated Word of Mouth Programs

6.個別のブランド・コミュニティ Private Branded Communities」

と含まれる範囲も相当広くなります。これは次の5つ目の使われ方とも共通する部分があります。

5つ目は、 「MRのためのソーシャルメディアの利用」の視点から広くSMRをとらえるものです。Social media-related researchとも呼ばれています。すなわち、ソーシャルな特徴をもつツールを利用したMRが広く含まれます。MROCや、SNS、ブログやバズ・マイニングなど幅広く含まれます。

UKのリサーチャーRay Poynterが、彼の著書 Handbook of Online and Social Media Research(2010)でこの考え方を展開しています。

Social Media Research

By contrast to monitoring, social media research is a generic catchall that embraces social media monitoring, netnography (as defined by Robert Kozinets, i.e. requiring participation in communities, talking with people), MROCs, blog research (in the style of Revelation), creating discussions in existing social media (for example in Facebook), and potentially using the idea of bots to interrogate social media users in the way being floated at this year’s MRS conference.”

ESOMARの定義も同様です。ESOMAR Guideline on Social Media Research

ESOMARは、Social Media Researchという用語を使っています。

Social Media Research (SMR) covers all research where social media data is utilised either by itself or in conjunction with information from other sources. Examples of current social media research include:

• Monitoring or crawling social media platforms (from automated monitoring of brand sentiment through to ad-hoc desk research)

• Ethnographic research (from observing online behaviour to collecting primary data in various forms, including ‘friending’ users)

• Co-creational techniques

• Online communities that generate or deliver consumer opinions, reactions, feedback on a regular, formal or systematic basis.

●以上のようにいまだ多様に使用されているSMR用語ですが、

やはりMRの変革において、上の4つ目と5つ目が、「ソーシャルメディア時代における新しい消費者理解の方法」として、大きく期待されています。つまり、リスニングとMROCです。

別の言い方をすれば、Asking(Questioning)からListening、あるいは、MR1.0からMR2.0への変化です。

消費者の代弁者としてのリサーチャーにとって、SMは不可欠なツールです。

将来ソーシャル・メディアという言葉自体が、それを包含するさらに大きな用語に変化するかもしれませんが、SMRにおける有効なインサイト創出の方法は、今後さらに進化してゆくものと思われます。

●最後に1つ気になっているのが、日本では、リスニングが「ソーシャル・リスニング」という言葉に定着化しつつあります。

それならば、同様にSMRもいっそのこと「ソーシャル・リサーチ」に統一されるか、あるいはソーシャルなMRということで、ソーシャル・マーケッティング(マーケット)・リサーチなのか、それともソーシャル・メディア・リサーチでしょうか。あなたのお好みはどうでしょうか?

残念ながら、グローバルでも未だ完全には統一化されていません。「ソーシャル・マーケティング」と同様、既に「社会調査」という用語が別の意味で定着しているからでしょうか。


<参照文献>

・ソーシャルメディアモニタリング

「本質的な消費者ニーズや、ライフスタイルの変化を読み取るチャンスがソーシャルメディアにはある。」

Social Media Meets Market Research: A Compendium of Views

参考文献多数

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#150 レイ・ポインターのMR白熱教室2015 第4回(最終回)報告

<第149回> レイ・ポインターのMR白熱教室2015 第4回(最終回)報告 2015年6月23日 ● 第4回目のテーマは、 『データからストーリーテリング』 でした。 ● 7月にレイとの懇親会を予定しております。世界のMRのソート・リーダー(thought ...