2011年4月25日月曜日

MROCとソーシャルメディア・モニタリング: 第12回JMRX勉強会報告

《第57回》

●今週4月26日(火)、第12回JMRX勉強会2011年4月度を開催します。

お申し込みは、http://kokucheese.com/event/index/10138/

今回は、100人ぐらい入る会場を(株)ビデオリサーチ様のご厚意により用意しておりますので、お申し込みはまだまだ大丈夫です。

●内容は、株式会社ホットリンク 代表取締役社長 内山幸樹

【ソーシャルメディア分析最前線】


 −ソーシャルメディアリサーチサービスの可能性 を見る−

と題して、ご講演いただきます。

●なぜ、MROCを推進している私が、今月このテーマを選んだかをご理解いただくために、以下少しご説明したいと思います。

まず、MROCと、ソーシャルメディア・モニタリング(マイニング)との両方に関連するキーワードは何かをご存知でしょうか?

・・・

そうです、「リスニング(傾聴)」です。

●『グランズウエル』をお読みいただくと、

いかにリスニングが、従来のリサーチを変えるかということが描かれています。

その1つが、「プライベートコミュニティ」、つまりMROCであり、

もう1つが、ブランド・モニタリングです。

●このあたりについては、IMJ高見俊介さんが

近著『ロイヤルティリーダーに学ぶソーシャルメディア戦略

(ファーストプレス)でわかりやすくまとめられています。

●あらゆるテーマについて、ソーシャルメディア利用者の多くのクチコミについて、リスニングするのが、ソーシャルメディア・モニタリングであり、

他方プライベート・コミュニティに参加した人々のある特定のテーマについてのクチコミのリスニングを行うのがMROCです。

つまり、両者はある意味、補完的関係にあります。

全体と部分の関係です。

両者を行うことで、生活者の声を広く聞くと同時に、深く聞くことが可能になります。

またソーシャルメディア上で表れないクチコミをMROCではカバーすることができます。

他方、MROCでのクチコミをソーシャルメディア上のクチコミによって一般化することもできます。

●日本では、残念ながら、この両者は未だ、「企業の意思決定や戦略策定プロセス」に組み入れられていません。

つまり、MROCは2011年4月からスタートしたばかりです。

他方、ソーシャルメディア・モニタリングは、リサーチ会社ではなく、IT関連企業やそこからサービスの供給を受けている代理店が、そのサービスを提供しています。

その1つが、今回お招きした(株)ホットリンクさん提供の「クチコミ@係長」です。

*その他のサービスについては、本ブログの今年の1月17日号でも紹介しましたのでご参照下さい。

残念ながら、既存のリサーチ会社では、SMモニタリング・サービスを本格的サービスとして提供しているところはありません。

ネットレイティングスは除く。BuzzMetrics(バスメトリクス)

●『グランズウエル』は次のように予言しています。

「マーケターや開発チームの情報源となってきた市場調査部門は脇に追いやられ、リサーチ部門であれ、マーケティング部門であれ、傾聴を担当している部署が組織の意思決定を左右するようになる」(132頁)


●USを中心としたSMモニタリング・サービス事情については、

(1)本ブログの姉妹ブログDigital Consumer Planner's BlogでのSteve Rappaport The ARF Listening Playbookの紹介記事や、


(2)同著者の最新刊Listen First! (現在在庫切れ中。私が勉強会で宣伝したり、萩原さんがTwitterでつぶやいたりしたので、たぶん数部しか日本へは初期入荷していなかったのが思いのほか売れたので、追加入荷中のようです?)


●USでの同様なSMモニタリング・サービスとして、

①BurrellesLuce

http://www.burrellesluce.com/
http://www.burrellesluce.com/Media_Monitoring
 
BurrelsLuce Portal 2.0
 
②CyberAlert

http://www.cyberalert.com/
 
CyberAlert 4.0
 
③Meltwater News

http://www.meltwaternews.com/

④PR Newswire eWatch


http://ewatch.prnewswire.com/rs/login.jsp

⑤Webclipping.com


http://www.webclipping.com/

●これらに加えて、Listen First!ではさらに以下のサービスも紹介されています:

調査会社の名前もあがっています。

⑥Alterian Techrigy SM2

http://socialmedia.alterian.com/

⑦Brainjuicer (調査会社)

http://www.brainjuicer.com/

⑧ChatThreads

http://chatthreads.com/

⑨GeneralSentiment

http://www.generalsentiment.com/

⑩Giga Alert

http://www.gigaalert.com/

⑪Infegy Social Radar

http://infegy.com/

⑫Itracks (調査会社)

http://www.itracks.com/

13)Netbase

http://www.netbase.com/

Consumer Base
Science Base

⑭radian 6

http://www.radian6.com/

⑮Scount Labs

http://www.lithium.com/what-we-offer/social-customer-suite/social-media-monitoring

⑯Sentiment 360

http://www.sentiment360.com/

⑰Sysomos

http://www.sysomos.com/

⑱Trendrr

http://www.trendrr.com/

⑲Webclipping

http://www.webclipping.com/

●上記のNetBaseを使った例として、

How-To Use Social Media Research To Drive Strategy


Step 1: NetBaseなどのSMモニタリングを使って、ターゲットのマインドセットを理解する
②Step 2: 個人的な会話を聞いて、ターゲットの感情を理解する
③Step 3: 消費者の問題を理解し、ブランドが提供する解決策を考える
④Step 4: オンライン上のターゲットの居場所を絞る (Google Ad Plannerの利用)
⑤Step 5: 戦略を考える

 ●来月5月の勉強会は

上記の高見俊介氏の「ロイヤルティリーダーに学ぶソーシャルメディア戦略」を予定しています。

顧客ロイヤルティ向上の観点からのソーシャルメディア活用についてお話をお聞きできればと思います。

顧客ロイヤルティは、リサーチの4大課題の1つであり、重要なテーマです。

ソーシャルメディアのご関心のある方だけでなく、NPS指標の説明などもありますので、

顧客ロイヤルティや、顧客満足、顧客経験などにご興味のある方のご参加もお待ちしております。

MarkeZine「真説! ソーシャルメディアマーケティング」

高見さんのその他のセミナー予定


●年初から、次世代マーケティングのテーマ、特に、ソーシャルメディア関係が続いております。

またかというリサーチャーの方もおられるかもしれませんが、変革期(ある人は「リサーチ再編」と呼びます)にあるリサーチにとって、このテーマがいかに重要であるかということは、次の記事をお読みいただくと理解が深まるかと思います。

Lenny Murphy shares his Thoughts on the Bumpy Future of Market Research

-MRは現在5つの挑戦を受けている

①新たな競合: Business Intelligence and CRM platforms, DIY data collection, Agencies and Consultancies bringing “insight generation” in house, and social media agencies leveraging “listening” technologies

②クライアント側の要求:   greater ROI, integration of MR with internal data channels, a
focus on implications and outcomes vs. data interpretation

③消費者側の要求:   they demand engagement, socialization, rewards, and fun. In the age of mobile/social games and networking, traditional quant and qual models hold little appeal

 ④テクノロジーの要求:   social media, mobile ubiquity, media convergence, and an infinite amount of data from virtually all touch points are not just efficiency makers; they are aspects of an evolutionary shift in human culture and communications  
⑤経済状況: The old refrain of Cheaper、Faster,Better means more now than ever before, and all participants in the MR value chain understand and demand it.

●今後次の3つに集約すると予想

1. Tech Providers (including DIY and field/data collection services)
2. Insight Consultancies (strategic focused, methodologically agnostic)

3. Niche Providers (Neuromarketing, Advanced Analytics & Modeling, etc..)

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このブログは毎週、月曜日中に更新されます。

2011年4月18日月曜日

日本版MROCの離陸: MROCに対する理解不足と誤解


《第56回》


●4月15日(金)に、(株)クロス・マーケティングが、
『生活者の「インサイト(心の声)」を探る。
ソーシャル時代における新しい手法のオンラインリサーチを提供
~『MROC(Marketing Research Online Community)(エムロック)』サービス開始のお知らせ~』

を発表しました。

より詳細な説明は、

MROC(エムロック):Marketing Research Online Communityを参照。

●その前日には、日経産業新聞に、『ネット上に「物言う開発班」消費者30人参加商品・サービスに反映』という記事が掲載されました。
この記事で翌日のクロスの株価が「前日比+11%の大幅高」だったそうです。

あの記事は、MROCというのは、消費者30人のサービスなのかとか、

数週間の期間だけなのかとか、

製品・サービス開発向けの方法なのか

というような誤解を与える記事でしたが。。。

●また、イギリスのMR協会であるMRS (Market Research Society)が発行している
 
Reseach-live誌に、電話インタビューの記事が、取り上げられています。

research-live誌は、グローバルにMRの情報を発信し、世界のリサーチ関係者の多くが読んでいるMRのオンライン情報誌です。

.MROC Japan and Cross Marketing roll out community offer

●MROC=Marketing Research Online Community

欧米では、またMROCの名付け親であるBrad Bortnerも、Market Research Online Communityと読んでいます。MRをMarketing researchか、Market researchと呼ぶかの違いと同じです。

敢えて、MRをMarketing researchとしています。誤解なきようにお願いします。

またMROCは、Online Research CommunityやInsights Communityなどとも欧米では呼ばれています。

●幸い、本ブログ「みんなのMR.COM」を作成しているOnline Marketing Insigts Companyを標榜するMROCジャパン※がその導入のサポートをさせていただきました。

※残念ながら、まだHPが完成しておりません。近い将来、日本語、英語版を公開予定です。

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●萩原さんの『次世代マーケティングリサーチ』が、MROCの日本でのブームに火をつけたようです。

多くのクライアントのリサーチやマーケティングの担当者があの本を読み、MROCの存在を知り、興味をもたれたようです。

●ツイッターでも早速、多くのコメントをいただきました。

多くの好意的なコメントをいただきましたが、残念ながら、いくつかのMROCに対する「理解不足」と誤解からのコメントもありましたので、MROCの日本市場での健全な発展のために、ここで補足説明をさせていただければと思います。

例えば、

コメント1>
1193moo ネット座談会ね。事例が見たいQT @madarameMROCに最初に突っ込んだのはクロスか。 QT @surveymlクロス・マーケティングから正式発表、画面イメージあり<『MROC(エムロック)』サービス開始のお知らせ http://ow.ly/4AGm3 #jmrx

コメント2>
iwskssm @YxUxIx次世代マーケティングリサーチって本にMROC関連書いてあった気がする! アメリカの真似じゃ、日本での成功は難しいみたいだけどね。また色々話そう!笑


コメント3>これは否定的なコメントではありません。ご理解していただいた上でのするどいご指摘だと思います。
appy66 MROCを成功させるには書き込み活性化の技術と、テキストのデータ解析力と定性リサーチャーの分析力が必要。GIやテキスト分析と違って、結果のサマリー化と解釈の共有方法も大事ですね。

●まず、コンント1>について:

・MROCをネット座談会(ネットグルイン)と混同している方は多いようです。

また両者の区別が理解しづらいという声も多く聞かれます。

「ネット座談会とどう違うの?一緒じゃないの?」

ネット座談会が進化して、MROCが生まれたわけではありません。

ネット座談会、欧米では、online focus groups (OLFGとかOLG)とよばれています。

オフラインのグルインをネット上に変換したものです。

同タイミングで、テキストによるチャットで行われたり、Webcam(カメラ)を使ったものがあります。

アメリカなどの国土の広い国で、モデレータさんや関係者が飛行機で移動するコスト削減に役立っています。また参加者の移動もする必要がありません。ヨーロッパでも複数の国で行われるグルインの場合は便利です。

日本ではと言えば、2000年前半に提案されましたが、お値段も高く、通常のグルインに対して、大きな利点が感じられず、調査会社側も積極的に営業促進をしなかったこともあり、その後の拡大は見られず、今日に至っているという感じです。対面で話しづらい特殊なテーマなどに限定利用される場合があります。

●これをさらに進化させたのは、「掲示板グルイン」と呼ばれるものです。

BBFG(Bulletin Board Focus Groups)です。

OLFGと大きく異なる点は、1回2時間限りではなく、数日かけたオンラインのグルインを行うものです。

これを英語では、asyncronous 非同期、非同時性と呼んでいます。

通常は3日間ぐらいが多いようです。

2時間で聞かれることを例えば3日間に分けて聞かれますから、
モデレータ側は、多くのトピックスを聞くことができたり、聞き忘れたり、深く聞いたりするこもできます。

他方、参加者側にとっても、言い忘れたことや、補足の回答をしたりすることも可能になります。

全般的には、より多くの意見を聞くことができる利点があると考えられます。

さらに最近では、デジカメや携帯のカメラで、商品や店頭の写真をとってもらってアップする機能もついているものもあります。エスノ的なものが可能になっています。

●日本では、Do Houseさんや、ボーダーズSAR(エスエーアール)社などが実施されています。

例えば、SAR社さんは、

『1週間かけた。。。ねっとグルインで「意思決定プロセス」と「消費者インサイト」を探究しませんか?』とうたっています。

●確かにこのあたりになると、やっている中身は、MROCに非常に似ています。

ご存知のように、グルインの参加者は、性・年代や、ある製品カテゴリーのユーザー等といった「対象者条件」で多くの場合、集められます。

BBFGのレポートとして、オフラインのグルイン同様、各対象者X各質問のマトリクスの発言録(Verbatim)が作成できます。「Aさんが、Bという質問に、次にように答えた」という内容がわかるものです。

●もし掲示板グルインとMROCが同じであれば、どうして欧米で、わざわざ異なる名前のMROCという名前が付けられたのでしょうか?

その答えは、両者は異なるものだからです。

その大きな違いのヒントは、「コミュニティ」Communityという言葉にあります。

掲示板グルインをコミュニティとは呼びません。

●コミュニティ(共同体)とは、「同じ趣味や目的を持った人が集まり、相互の交流が行われる集団」であり、単にグルインをやるために対象者条件を満たしたあかの他人同志が、謝礼によって、2時間集められた集団ではなく、ある程度の時間の継続性と、参加メンバーの数がいることが想定されています。

「同じような興味・関心がある人、特に高い人」が集まる点がポイントです。

通常のサーベイや、グルインのように、性・年代や、ある製品カテゴリーのユーザーであるとか、ノンユーザーであるとかといった属性やユーザー条件ではありません。

●グルインでも、リサーチ・インターナショナル/TNSの「スーパーグループ」といって、

専門家や関心・知識の高い人を集めるグルインもあります。

しかし、以前では、これらの人を短期間にリクルートすることは難しく、お値段も高いものになっていました。

それが、インターネットの普及により、手軽に広範囲に行えるようになっています。

MROCは、このスーパーグループのオンライン版という側面も持ちます。

●もう1つの大きな違いは、WEB2.0(CGM)との関係です。

掲示板グルインは、オンライン定性リサーチの発展過程から生まれたものです。

他方、MROCはそうではありません。

●マーケティングにおいて、「コミュニティ・マーケティング」Community Marketingが、2000年代から注目されています。

インターネットの世界で、共通の関心事や目的の下に集まった参加者同士が形成する集団=コミュニティを活用した新たなマーケティングの手法です。

ネット上のコミュニティ、いわゆるデジタル・コミュニティの登場です。

WEB2.0やソーシャル・ネットワーク化によって、その動きは加速しました。

MROCはこの流れの中から生まれてきたものです。

MROCは、ソーシャルネットワーク化のツールである「ソーシャルメディア」(SM)の1つの形態です。

●SMの中から、あるテーマのもとに、リサーチという目的で形成されたクローズドな集団であると言えます。ソーシャルという点では少し矛盾した感じですが、クローズドな中で、ソーシャルな関係は維持されています。

つまり、掲示板グルインは、ソーシャルメデイアではありませんが、MROCはソーシャルメディアの一部と言えます。

地域やテーマの限られた中で、ソーシャルメディアのツールを活用しながら、ソーシャルな会話を作りだしてゆくところにより有効な消費者インサイトを引き出すポイントが隠されています。

●リサーチ的に言えば、

掲示板が、MR1.0(Asking)であるのに対して、MROCは、MR2.0(Listening)になります。

●これは、余談ですが、オンライン定性リサーチの先駆者であるJeff Walkowskiに会った時に、

オンライン定性リサーチとソーシャルメディアの関係を尋ねたところ、

彼は、オンライン定性リサーチのデータは、1次情報であり、

ソーシャルメディアの情報は、2次情報であると言っていました。

特定の目的を設定していないという意味において、SMは2次情報といえるかもしれませんが、

SM推進者にとって、SMの情報が2次情報だとは思わないでしょう。

オンライン定性リサーチャーからみて、SMは2次情報としてとらえられているようです。

●このあたりをご理解いただくと、

MROCの名付け親であるUSフォレスター・リサーチ社のブラッド・ボートナーの 

「MROCは、・・・グルインなどの伝統的な定性リサーチの手法が現在提供できていない新しいタイプのインサイトを創出することができるからである」

(「Web 2.0はマーケティング・リサーチを変革するだろうか?」2008年4月)


という発言をより納得してもらえるかと思います。

●多少の相互作用があるにしても、2時間の限られた中の発言や会話から生まれるインサイトに比べて、より長期で、(グルインルームではない)生活の現場に根ざした発言や会話の方がより生活者の生の声、本音をつかむ可能性が高いと思うのは当然だと思います。

その中では、ブログや写真、チャットなど、ソーシャルメディアのツールによって、より活発な交流が促進されます。

●以前から、このような点は理解され、提案されてきましたが、WEB2.0によるソーシャルメディアのIT技術の進化がそれを現実のものとして可能にしてくれました。

まさにMROCは、ソーシャルメディア時代にふさわしい消費者理解の新たな方法だと言えます。

●2チャネルでの会話や、価格.COMなどの口コミサイト、その他のSNSでの投稿なども同様な「生声」を収集することはできます。

しかし、それらの声は、ソーシャルメディア・マイニングのツールによって収集される一方、

さらなるプロウブや、企業側への直接的なフィードバックができない場合が多くあります。

MROCの場合は、リサーチ目的であり、クライアントと直結することによって、その「生声」が確実に企業に届けられます。

●MROCは、ソーシャルメディアの進化によりさらに発展・進化を遂げてゆくと考えられます。


●次は、コメント2>についてです。

「アメリカの真似じゃ、日本での成功は難しい」

これは誤解だと思っています。

ヘタに運用すれば、失敗に終わり、単なる一時的ブームに終わる可能性があります。

まず、以前の失敗した「掲示板グルイン」ではないということは上で説明しました。

MROCは、多くの人が望んでいた、「生活者の身近な声」を「日常的」に、収集することを可能にした方法であり、

調査が目指す「リアリティ」に一歩前進した方法であることは述べました。

スマートフォンによるMROCが次の方向であることも確かです。

●「人間は社会的動物である」と言われるように、

ソーシャル性は、万国共通の特性です。

1人では生きてゆけない、他の人と「コミュニケーション」をして初めて、その存在価値がある。

それゆえに、ブログや、Twitter, Facebookなどのソーシャルネットワークは、全世界で広がっています。その多くがアメリカ産ですけれども、何もアメリカ人だけに適用されるものではありません。

MROCも同様です。

●「日本人は、あまり人前では話をしないので、MROCのコミュニティでは、情報が収集できないでのではないか」いう声をよく聞きます。これも大きな誤解です。

実際、MROCをやると、そんな心配は全く無用であることがすぐにわかります。

Mixiも盛んですし、TwitterやFacebookも、2チャンネルも大賑わいです。

欧米と1つ違う点は、匿名か実名で発言するかの点です。

匿名での発言は欧米では、信頼性がないと思われる一方、

日本での匿名性は、より本音を引き出す効果をもっています。

●1つには、デジタル・ネイティブといわれる世代交代の影響があるかもしれません。

今後この傾向はますます拡大すると思われます。

それゆえに、MRにおけるSMやMROCの重要性はますます大きくとなると予想されます。

●MROCでは、グルインや、エスノ、デプス、ダイアリー(日記)、HUT(ホームユーステスト)なども可能です。

それゆえに、これ1つで多くの調査が一度に可能であり、定性も定量もできるハイブリッド調査もOKです。つまりオールインワン的な利用が可能です。

それゆえに、MROCは、

「次世代MRプラットフォーム」と言われるゆえんです。

●伝統的なグルインは、対面での利点を持っています。


合意形成のリサーチ儀式としてのオフラインも、社内意思決定には重要です。

オンライン・グルインに対しての通常のグルインのアドバンテージとして、発言時に表情が見えるとかの利点をあげる人がいますが、グルイン時に、それほど表情に注目しているでしょか?

モデレータの陰で発言者の顔が隠れている時もあります。

発言録になって手元に来た時は、対象者の表情はぬけ落ちています。

1グループ6人の顔の表情が見えるけれども、対面であるがゆえに少し本音が言いづらかったり、限られて時間内でいきなり尋ねられて答えた「調査対象者」としての意見と、

日常の生活の中で、じっくり考えられた実生活に根ざした「生活者」との本音では、

どちらに「消費者インサイト」が潜んでいそうでしょうか?

●また、MROCが、掲示板グルインと同じ値段であれば、

グルイン以外に、別の予算で、エスノやデプス(詳細面接)、日記調査、HUT、サーベイを行う必要がない

「生活を丸取りする」MROCでは、どちらが、調査ROI/インサイト創出面から考えて、

課題解決のための調査方法として選択するのが適切でしょうか?

●MROCジャパンでは、日本の実情にあったように、

少人数/短期のTCC(Tactical Co-Creation Community)を開発しましたが(例えば30人で2週間)、

コミュニティの特性を生かすには、

もう1つのサービス商品である、

SCC(Strategic Co-Creation Community)の大人数/長期が、MROCの本来のあり方です。

継続することによって、コミュニティ・メンバー間に強い関係性が生まれ、

そこにキズナ(engagement)が発生して、思いもよらない「インサイト」が発見する可能性が高まります。

●以下は、コメント3>に関連します。

ここで留意することは、MROCはあくまでも、ツールに過ぎません。

それも情報収集ツールであり、分析ツールではありません。

多変量解析のように、分析を行ったからといって、解が出てくるというものではありません。

●インサイトを創出できるのであれば、従来のグルインでも、掲示板グルインでも良いわけです。

ゆえに、インサイトを創出できないMROCは、意味がありませんし、やらない方がよいでしょう。

サーベイのように、質問をあらかじめ決めて、対象者に尋ね、その結果を集計・分析して、数字が高い・低いとか、統計的に有意な差があったなかったなどど判断するものではありません。

●課題意識をもったマーケターが、日常の生活の現場から出てきた膨大な生活者の生声を読むことから始まります。

膨大なデータを読むのが大変だとか、

そのための何か特別な分析手法はないのか、

という質問をよく受けますが、

より多くの生活者の意見を聞くことを望んでいるマーケターが、

その労を惜しむことは、自己矛盾なような気がします。

●MROCは、いつでも、どこにいても、その情報を読むことができますから、

iPadなどで携帯して、スキマの時間で読むことも可能です。

忙しいマーケターの方には、生活者の声を録音して、オーディオで聞くという方法もあるかもしれません。

●それでも忙しいという方は、

MROCの実施をデコム社のような「インサイト会社」に依頼し、そこからインサイトを提案してもらう方法もあると思います。

調査会社に依頼する場合は、念のためその調査会社の「インサイト創出力」(製品カテゴリーへの精通度や、ブランド、顧客経験、販促などのマーケティングの理解度・経験度など)の有無を十分、考慮されてからの方がMROCの有効性を実証する上ではよいかと思われます。

●MROCジャパンのミッションは、MROCのエバンジェリストとして、日本のMR市場に、「次世代MRプラトフォーム」としてのMROCを普及・定着化させることです。

現在多くの調査会社に定性調査を行う部やグループがあるように、

近い将来、1社にMROC部ができるようになればと願っています。

そのためには、正しいMROCの運用が望まれます。一時のブームで終わらせないためにも。

もしMROCを使われて、「役立たない」と思われた場合は、ご一報下さい。

MROC活用診断を行いたいと思います。

●すいません、いつも長くなりまして。まさに書き下ろしというか、「書きなぐり」ですので、あまり推敲もしません。誤字、脱字はご容赦を。

最後に、MROCビジネスの雄、USのCommunispaceのCEOであり、24才と21才の2人の娘さんの母親でもあるダイアン・ヘッスンDianne Hessan女史の最近のインタビュー記事をご紹介します。

Disruptive Innovation Winner Communispace

1999年に設立されたCommunispace社。

Communispace社は、MROCのことをInsights Communityと呼んでいます。

リサーチ会社ではなく、インサイト会社だと言っています。

最近Omnicom※により買収される。

world's #1 corporate media services conglomerate/agency networks BBDO Worldwide, DDB Worldwide, and TBWA Worldwide, while such firms as GSD&M's Idea City, Merkley + Partners, and Zimmerman Advertising

●MROCという言葉は今では誰もが知っているけれでも、つい数年前まではそうではなかった。

●当初は次のような批判があった:彼女はMROCが認知されるまでlong journeyだと表現しています。

“No one is on the internet, and so this isn’t representative of my market”

“Who ARE these people and why would anyone give advice to a brand?”

“Why would you engage in a conversation with someone over time when research principles say that you should only ask them once or they’ll be biased?”

●コミュニティは、ソーシャルアメディアの存在が認められては初めて、市民権をえた。

●現在世界の主なブランドの425のコミュニティを運営しているけれども、当初は「失敗」の連続であった。

●3分の1のクライアントは5年以上も継続して仕事を行っているー単なる流行ではない。

●MROCによって、クライアントが、これまでに思いもよらなかったことを発見する可能性がある。

●毎日ベースで、消費者のウオンツや、ドリーム、フラストレーション、信念などを知ることができる。

●データの背後にある、「なぜ」をつかむため、長期間にわたって、消費者に「飛び込む」(dive)。

●消費者を「生活」の中に置くことによって、情報を収集

●ダイアンにとっての次世代MRとは、

“Next Gen” research is less about methodologies and techniques and more about the role and impact of research in businesses. “Last Gen” research was often the voice of “no”, as in “I know that you all love this idea, but our data says it won’t work”. Or research would be about statistically significant data that reinforced what people already knew. The future is about a research function which plays a vital and strategic role in organizations, which helps to make the voice of the customer come to life, which engages and inspires senior management, which drives innovation, and which ultimately improves results.

The net: “Next Gen” research is about helping companies grow.

2011年4月4日月曜日

次世代マーケティング・リサーチ・プラットフォームとしてのMROC

《第55回》

※おことわり

『みんなのMR.COM』ブログの各号の分量が多くなってきましたので、

「今週のTOPICS」や「週刊リサーチ・ブロゴスフィア」、「 今週のMR IN ENGLISH」などの各特集をそれぞれ1つのブログに分離することにしました。ご了承下さい。詳細は、後日またお知らせ致します

『みんなのMR.COM』はTOPICS記事のみになります。

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TOPIC : 次世代マーケティング・リサーチ・プラットフォームとしてのMROC


●この10年、サーベイ(調査票を使って、人々の意見を収集する定量調査)のデータ収集方法は、

訪問面接(調査)から、インターネット(調査、ネット調査、オンライン調査)に大きく変化しました。

というか、とって代わられました。

vs

次の10年はどのような変化が起こるのでしょうか?

●以前このブログでも「サーベイ20年消滅論」をご紹介しました。

萩原さんの『次世代MR』でも取り上げられています(178頁)。

●最近も、P&Gのリサーチャーが、「ソーシャルメディア(以下SMと略記)がリサーチツールとして、サーベイにとってかわるか」といった記事がありました。(下記にその要約をつけておきました。ご参照下さい)

現在のMRにおいて、圧倒的に多く使われている「サーベイ」方法(ネット調査も、CLTも、ブランド・トラッキングも顧客満足度調査も、ショッパーに尋ねる店頭調査もすべてサーベイです。アンケートもそうです)のどこが問題なのでしょうか?

問題はないけれどもSMが普及してきたからでしょうか?

サーベイの歴史は古く、第2次世界大戦以前から開発され、1950年代には今の形が確立されました。そのデータ収集の手段の多数が、面接や郵送、電話などからネットに変化しましたが、心理学を基礎にして、調査票を介して消費者の声(意見や態度、事実など)を文字で集め、数字に変換して分析する点では基本的には変わっていません。

戦後の行動科学ー人文科学や社会科学の分野に自然科学の方法論を応用して、サイエンス化を進めた活動の影響を受けて、目に見えない態度(意識や意見など)を計量化して分析しようと、研究者は努力しました。

その結果、例えば、目に見えない「満足」という態度を「非常に満足」に5点、「やや満足」に4点などとつけて、計量化して、統計分析を適用して、顧客満足度の平均値が3.8などと数量化しました。

学界も業界も、ずっとこの計量化とその精緻な分析方法の開発に多くの時間を費やしてきました。


●市場調査の大きなミッションは、消費者の意見を知ることです。

その消費者の声を収集する方法として、サーベイが使われてきたわけです。

それも民主主義的に、一部の偏った人の意見ではなく、みんなを代表する意見の収集が要求されました。

一部の人の意見だけを参考にして作った商品は、よく売れないと考えられたわけです。市場の多数派の意見を特定した方が、売上が上がると思われました。

それでサーベイでも、対象者(サンプル)に対して、ターゲット(母集団)に対する「代表性」が強く求められました。さらにはサンプル誤差を小さくするために対象者数(サンプルサイズ)も10人や20人ではダメだと言われ、100人、200人、500人と多数になっています。

●サーベイ方法は、こちらから対象者を選んで、こちらからあらかじめ尋ねることを決めて(調査票)、代表している人に尋ねるという形になっています。


これまで、このやり方が、消費者の声を理解するのには、最もよいと考えられてきました。

結果も定量化できて、大きさや優劣の判断が、統計的にも検証ができる点で、優れていると思われていました。

●住居環境や女性の社会進出など、社会経済環境の変化によって、対象者の代表性がだんだんと確保するのが困難になり、RDDなどの電話手法も開発されました。

そこにネット調査が登場し、インターネットの利用者が増加するにつれて、調査方法として認知されるようになりました。

そこでは、インターネット対象者の代表性の問題が今日まで議論されつづけています。

●そして2004年のWEB2.0の登場と、その後のソーシャルメディア(SM)の普及が進行中です。

その中で、調査において、「代表性」はあまり問題ではないという議論もでてきています。

これはネット調査にとって朗報なんでしょうか?

●SMの普及に従って、WEB2.0=CGM(消費者生成メディア)により、
消費者みずからが発信する情報・意見の場が拡大しました。

ブログあり、SNSあり、口コミサイトあり、コミュニティありです。

何もサーベイを使って、消費者に(本音かどうかわからない)声をいつも聞かなくてもいいのではないかという意見もでてきました。日頃からその調査のテーマについて考えていない人に、5つの選択肢から無理やりに選ばせた意見の価値に疑問をもつ人も現れました。

逆にSMの中の大量の消費者の声の情報をいかさない手はないという意見もあります。

これがSMのリスニングです。

●同時に調査を使うユーザー側、マーケティングや経営層から、

もっと経営に調査を活用できないかという要求が高まりました。経済状況も影響して、
リサーチのROIも問われています。

それを象徴するのが、これまでの「データ」ではなく、「インサイト」という言葉の流行です。

企業の売上、成長に役立つ「インサイト」の発見が、調査に強く求められるようになりました。

●というような背景の中、

これまでの主役の方法であった「サーベイ」に非難の矛先が向けられています。

サーベイではインサイトが出せないとか、出せても効率が悪い。

いやサーベイが悪いのではなく、やり方、使い方が悪いのだと言う人。

行き過ぎた定量化や分析といった技法に走りすぎて、有効なインサイトを出しづらくなっているという人。

では、実際、企業や調査会社で、サーベイに代わるものが明日からあるのでしょうか?

グルイン?そうではない感じです。グルインも歴史が古いですが、未だにサーベイにとってかわっていません。

エスノ?それゆえに現在、日本で流行しています。しかし、インサイト出しには有効かもしれませんが、サーベイにとってかわるとは誰も思っていないようです。

●そこで、現在世界中が注目しているのが、SMです。

P&Gのリサーチャーの記事にもあるように。

WEB2.0=CGMのお陰で、消費者の本音(無理やり尋ねられて回答したものではない)が、SMの中に大量に存在しています。

サーベイのように、企業側が勝手に考えた課題ではない、企業側が予想もしていない課題を発見する可能性もあります。

なぜならその声は、限定された調査時(サーベイ時の10分や30分、グルイン時に2時間など)だけに考えられてものではなく、

消費者のリアルの生活の中から、自発的に、自然にでてきた声だからです。

この声のリスニングの重要性が指摘されるゆえんです。

●SMには、消費者の生声の宝庫としてのSM以外にも、

消費者集団=調査の対象者集団としてのSMの意味もあります。

インターネット人口が増加して、調査方法として、ネット調査が認知され、訪問面接にとってかわったように、

近い将来、SM人口が増加すれば、消費者集団としてのSMの価値が高まり、オンラインパネルやサーベイにとってかわる可能性は否定できません。

現在の調査(オンライン)パネルが、SM化は必須でしょう。

●今話題のMROCは、大きなSMマンションの中の例えば201号室や305号室のようなものです。つまり、MROCはSMの一部であり、クローズドなSMだと言えます。

広範囲のSMの中から、特定の関心やテーマに限定したクローズドな小SMです。

●MROCでは、グルインもエスノもデプスも、ダイアリーもHUTも可能です。

All you can eat 食べ放題とか、ワンストップ・リサーチとか、オールインワイン、ビュッフェ・スタイル・リサーチとも言われています。

既に、「コミュニティ・パネル」という考え方も生まれています。
いわば、MROCは、「次世代MRの新たなプラットフォーム」と言えるものです。


●調査手法にはパーフェクトなものはありません。その目的に応じてその中の最適なものを1つあるいは複数組み合わせて使ってゆくことになります。それゆえに、サーベイもなくなることはないでしょう。それを使って解決する課題がある限り。また、SMの中でサーベイも行われることになります。
しかし、サーベイの課題解決における重要性、優先順位は低下するのは確実でしょう。

もし仮にサーベイがなくなれば、これまでリサーチャーの必須知識であった(理解するのに結構手間がかかる)サンプリング理論や統計解析の知識は不要になります。平均値の差の検定などを理解しておく必要はなくなります。リサーチャーの中には、サーベイがなくなることを歓迎する人がいるかもしれません。逆に苦労してマスターした人からは、「それはないよ」という声が出るかもしれません。

サーベイも現状つきつけられている不満論、解消論などの批判を真剣に受け入れて、
インサイト創出のための統合ではなく、細部の分析に行き過ぎ、「木を見て森」が見えていない状況から脱して、「インサイト創出サーベイ」に生まれ変わる必要があります。


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要約紹介:

『ソーシャル・メディアが、サーベイ手法に代わって、リサーチ・ツールになるか?:P&Gが方法論的ドグマより、リサーチの予測力に期待』

By ジャック・ネフ (出典:Advertising Ageオンライン版、2011年3月21日)
http://adage.com/article/news/p-g-surveys-fade-consumers-reach-brands-social-media/149509/


世界でリサーチ予算が最も大きいP&Gのリサーチの責任者が、2020年までにサーベイの重要性が急減に低下して、その結果、ソーシャルメディア(以下、SMと略記)の重要性が増すと予想。



3.5億ドルの年間リサーチ予算を持つP&Gのグローバル・コンシューマー&マーケット・ナレッジ責任者のジョアン・ルイス氏は、NYで開かれたARF (Advertising Research Foundation)の年次会議Re:Think2011での「マーケット・リサーチはどのように変わるべきか」というパネル・ディスカッションにおいて、リサーチについて、次のような意見を述べた。



彼女によると、リサーチ業界は、「方法論、とりわけサーベイ・メソッドがすべての解決策である」という考えから脱却すべきである。



「方法論を絶対視しないことが必要である」



パネル後のインタビューで、彼女は次のようにも語っている。SMのリスニングは、サーベイ・リサーチにとってかわるものであると同時に、SMはまた消費者行動や期待を変化させるがゆえに、それにとって代わることを困難にもしている



「サーベイ・リサーチが、消費者と企業間の双方向のエンゲージメントや、消費者間のインターラクションの動きを見えなくしている」と彼女は語っている。



「消費者が、企業に対して、何か言おうとすれば、現在では多くの方法が存在している」



リサーチャーというのは、プロセスとか、妥当性や方法論などに、あたかもそれらが「イデオロギー」であるがごとく固執している。



ある一部の調査にとっては、母集団に対するサンプルの代表性というのは重要である、ことは否定しないと前置きをしながらも、「リサーチ業界には、代表性がすべてであるというほとんどドグマ的な信念とも言えるものが存在する」、そして、



「しかし、代表性がすべてであるという考えを捨てるべきである」



さらに続けて、「『SMはまだうまくいっていない』と多くの人々が言っている。



それで、SMのサンプルに代表性があるかどうかを今後、広範囲に検討する必要がある」と指摘している。



彼女はまた、その重要性が低下すると予想しながらも、P&Gはサーベイ・リサーチを今後も続けるだろうとも言っている。



但し、「サーベイ・リサーチを行う時は、より良く行う必要があるだろう」とも語っている。



「世の中というのは、役立たない仕事をする言いわけをするために動いているんだと考えるは簡単なことである。しかし言い訳は無用である。」



コカ・コーラのマーケティング・広告担当エクゼクティブ・バイス・プレジデントのジョー・トリポディ氏は、昨年の全国広告主協会の会議で、広告の露出回数を数えるよりも、ブランドに対する消費者の「感情表現」をカウントすべきだという提案を行った。



しかし、残念ながら、SMやエンゲージメント分析は、いまだ「我々が必要とする有効なレベル」には到達していないので、測定の標準化を開発しようとする業界の努力をサポートする必要があると彼は語っている。



ルイス氏は、リサーチャーは、アドバイザーというような「快適なポジション」に安住するのではなく、組織の意思決定者のそばで「意思決定のライン上で活躍する」存在になるべきであるとも語っている。



リサーチは、単に市場シェアを測定するだけでなく、マーケティング活動のとるべきタイミングやその活動の内容を予測したり、そのためのシナリオ・プラニングを行うような指標を開発すべきであると彼女は主張している。



すべては良いことである。しかし、クライアントのプロジェクトに対するお金の支払い方法は、そのような動きを支援するようなシステムにはなっていない。つまり、企業の購買担当者は、「フィールドワークの実費」プラス、利益をベースに支払おうとする傾向がますます強まっている、と語るのは、WPPカンターのチェアマンでありCEOのエリック・サラマ氏である。



「我々が生みだす価値の大半は、フィールドワークからではなく、複数のプロジェクトを横断するところから生まれるものである」と語り、提供した価値に対する報酬システムについて議論している。



前述のコカ・コーラのトリポディ氏によると、コカ・コーラも、2年前に広告代理店にそのようなシステムの導入を行ったということである。そして、もし調査会社の中にもそのような価値を提供する会社があるならば、調査会社に対しても、価値にもとづ支払いシステムを導入することは歓迎であると語っている。



「もし考え方を根本から変えてくれるようなインサイトを提供してくれる調査会社があらわれたならば、彼らにより多くのお金を支払うことには全くやぶさかではない。そんな調査会社がどこにあるかを教えてもらいたいものだ」と語っている。



もっとも業界に変化を求めるプレッシャーとは別に、調査業界は、少なくとも75周年を祝ったARFの会議の成功から判断しても、うまくいっているようにも見える。



事実、ARFのCEOであるボブ・バロッチ氏によると、今年の会議には、昨年よりも3割増の1,200人が参加し、100万ドルの収入があったということである。

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#150 レイ・ポインターのMR白熱教室2015 第4回(最終回)報告

<第149回> レイ・ポインターのMR白熱教室2015 第4回(最終回)報告 2015年6月23日 ● 第4回目のテーマは、 『データからストーリーテリング』 でした。 ● 7月にレイとの懇親会を予定しております。世界のMRのソート・リーダー(thought ...