2014年6月30日月曜日

#129 IIeX NA会議報告 (6) MROCとインサイト、ソリューション


<第129回> インサイトとソリューションとの混同 2014年6月

● 前回のブログで、会議においてトリガー・ポイントのWilliam Leach氏が、

CEOは、インサイトを求めていない。彼らが求めているのは、ソリューションである」と述べているとお伝えしました。

これを聞いて、日頃思っていることを会議の会場で思い出しました。

● 以下のようなことをよく聞かれるかと思います。

・リサーチからヒット商品は生まれない。
・顕在ニーズからはヒット商品は生まれない。ゆえに潜在ニーズをさぐる調査方法が必要である。
・消費者は自分のほしいものを知らない。だからリサーチをしてもムダである。

(写真はIIeXが開かれたアメリカ・アトランタ市のホテルからのダウンタウンの様子)


このような議論を聞くといつも、インサイトとソリューションが混同されているなーと感じます。

● 調査でニーズを明らかにして、それに基づいて、ソリューション(それを解決するアイディア)=製品アイディアや販促アイディアを考えるのが通常のやり方だと思います。

一般的に言えば、ソリューション(製品アイディアや販促アイディア)は、消費者のニーズ(インサイト=生活課題、欲求や要望、不満や改善点など)に根ざしている方が、成功確率が高いと言われています。なぜなら、消費者がもつ生活課題の解決に役立つので、消費者の受容性が高くなり、購買率も高くなるからです。

ヒット商品や売り上げアップに成功した販売促進アイディアは、製品開発や販促についての問題解決のための「ソリューション」だと考えられます。

● 消費者は、ほしい商品のアイディアを具体的に表現できなくても、「あーしたい、こーしたい、そーしたくない、この点が不満だ、不便だ」などというニーズは、聞き方を工夫すれば言葉にだせると思います。

よく出される例として、消費者は、ウオークマンの具体的なアイディアは回答できなかったでしょうが、屋外で自分の好きな音楽を聞きたいとか、大きなラジカセを屋外に持ち出して聞いている音楽ファンを「行動観察」すれば、彼らのニーズ=インサイトは理解できたでしょう。

● しかし、インサイトなしでも、つまりリサーチなしでも、ジャスト・アイディア、ひらめきで、成功するソリューション=アイディアを生みだすことも不可能ではありません。

むしろ、ある意味、企業にとって、それの方が好ましいかもしれません。なぜなら高いリサーチを節約できるからです。またリサーチをやっても、よいインサイトやソリューションが生まれる保証はどこにもありません。

ちなみに、ここで言うリサーチは、ソリューション生成のためのリサーチです。仮説を検証したり、リスクを低減、価値の最大化などの最適化のためのリサーチは除いて考えて下さい。

● また顕在vs潜在ニーズとソリュションについても同様に考えることができます。

ニーズが顕在であろうが、潜在であろうが、ソリューションがよければそれに越したことはありません。

例えば、おいしいものが食べたいとか、喉の渇きを潤したいなどといって、古典的な非常にありふれた陳腐な顕在ニーズから、売れる製品や販売方法を考え出すには「ソリューション力」が試されます。そのための刺激剤として(私の個人的言葉で表現すると「頭の体操」としての)リサーチが役立つます。

例えば、昨年のヒット商品である「伊右衛門 特茶」や「炭酸水」などは、特別のありがたい「潜在ニーズ」から生まれたヒット商品ではありません。

逆に言えば、潜在ニーズから必ずヒット商品が生まれるわけでもありません。すごい潜在ニーズが発見されても、それを解決する具体的な製品やサービスのアイディアが出せなくては成功しません。

● 成熟した市場において、イノベーションによる画期的な商品を除いては、なかなかヒット商品の開発が難しいのが現状です。

むしろ現在は、ありふれた顕在ニーズから、いかにソリューション力を生かして、ヒット商品アイディアを生み出すかも試されている面もあります。

リサーチが、よいインサイトや潜在的ニーズを発見してくれないから、ヒット商品やサービスを生みだせなーいと、言い訳するようなマーケターの方が(おられないと思いますが)いましたら、リサーチャーは可哀そうです。


しかし、このことは想定外の「潜在ニーズ」の探索作業を否定するものでは決してありません。我々リサーチャーとして、画期的な潜在ニーズの発見に日々精進する必要はあります。


● いずれにしても、もっと消費者を深く知る必要があることには変わりはないかと思います。

もっと生活に根ざして、消費者を知る。

生活のコンテキストにそって、消費者の行動を知る、必要があるかと思います。

ITの進歩によって、MROCやモバイル・リサーチによって、顧客の深い理解や360度理解が可能になってきています。

またMROCは、インサイトだけでなく、MROC内で、共創/コクリエーションを通して、新たなソリューションを消費者とともに創造することも可能です。

インサイトとソリューションの両方の発見を同時に可能にしてくれるのがMROCです。MROCの今後のさらなる「進化」を期待したいと思います。

 

2014年6月27日金曜日

#128 IIeX NA会議報告 (5) リサーチの役割


<第128回>  ますます拡大するリサーチャーの役割 2014年6月

● 会議で思ったことの1つとして、マーケティングにおける「リサーチの役割」がますます拡大されてきたということがあげられます。

これはマーケティング側が、リサーチに期待しているのか?
 
それとも、リサーチ側の自主的ムーブメントでしょうか?

● 従来は、データ・サプライ、すなわちマーケティング活動の意思決定に必要な「データ」の収集と分析、結果を報告すればよかった市場調査。

ご存じのように、データ収集だけ、つまり「クロス集計表」だけの納品でよかった。

これはある意味、効率がよい仕事でした。データの集めっぱなしで、あとはマーケティングにおまかせ状態でした。

● ところが、私の知る限りでは、2000年初めごろから、「インサイト」「インサイト」と言われだしました。

私がアメリカのトイレタリー・メーカーであるコルゲート・パルモリブの日本法人ヒルズ・コルゲートに入社した1999年には、すでに本社のリサーチ研修で、「コンシューマー・インサイト」のトレーニングがありましたので、アメリカでは1990年代後半頃だと思われます。

2010年代に入って、ますます「インサイト」重視の傾向が加速しているように感じます。

これはこれで、ある意味よい傾向だと思われます。

マーケティング・リサーチは、単なるリサーチではなく、マーケティングのための「リサーチ」ですので、マーケティング活動に役立つものでなければなりません。

マーケティングを知らずして、よいマーケティング・リサーチはできないでしょう。

リサーチはあくまでも手段。

目的であるマーケティングを理解しないと、目的を見失った「調査のための調査」になってしまいます。

その意味で、リサーチの有効性やROIが、厳しく問われることは非常に健全なことかと思います。

● 今回の会議では、このような傾向を「インサイトホリック」insighthholicインサイト中毒と皮肉るプレゼンターもいました。

一方、インサイトinsightはあるけれども、まだまだインサイトフルinsightfulではないとの指摘もありました。

● で、今回の会議で言われたことは、

我々は、インサイトを求めているのではない、行動の変化を求めている」と、

イギリスのブレイン・ジューサーのCOOのAlex Batchelor氏が、初日の午前のプレゼンで、いきなり問題提起を行いました。

9:40AM
The Goal Is Behavior Change, Not Insights
Alex Batchelor (BrainJuicer)

マーケティングの仕事は最終的には、態度変化でなく、消費者の行動変化、つまり、購買行動の変化ー自社製品や、ブランドを購入させることによって自社の売り上げやシェアを拡大することです。ゆえに、MRも、行動変化に焦点をあてるべきであるとの主張。

付け加えて、「行動にとって、コンテキスト(文脈)がすべてである」とも言っています。

このあたりは、モバイル・リサーチに対して期待が高まります。

● さらに、ベスト・プレゼン賞をとったトリガー・ポイントのWilliam Leach氏は、

CEOは、インサイトを求めていない。彼らが求めているのは、ソリューションである」と強調していました。

確かにその通りです。

CEOがほしいのは、調査レポートではなく、売上をアップしてくれる、売れる製品や売れる販売方法(SP program)です。

2:20PM
Becoming Behavioral Designers: Applying Behavioral Research And Design To Change Consumer Behaviors
William Leach (TriggerPoint)

● でも、ちょっと待って下さい。

調査の結果から、売れる製品や販売方法を考えるのは、本来はマーケターの仕事ではなかったでしょうか。もっと言えば、調査結果から、インサイトを引き出すのも本来は、マーケターの仕事でした。(もともとリサーチ機能が分離するまでは、マーケターがすべてを行っていました)

社会が複雑になり、マーケターの仕事もますます高度化するようになり、彼らは非常に多忙になりました。じっくりデータからインサイトを読み取っている時間はありません。

そこで、リサーチャーのJob description職務内容が拡大されました。

アメリカなどは、企業内に大量に抱える高給のリサーチャーをもっと有効に働かせようとするマネジメントの意向で、マーケターの役割の一部が、どんどんリサーチャーの仕事になってゆきました。
(リーマン・ショック以降は、さらにデータ収集も外部の調査会社を使わないで、社内DIY化する方向に進みました)。

● これによって、リサーチャーに必要なスキル・セットがさらに拡大されています。

クロス集計までですと、統計的知識だけでもよかったでしょうが、レポートのビジュアリゼーションやストリーテリング、イノベイティブなアイディアの発想、デザインやマーケティング・センスなどなど。これらに加えて、ネットやSNS知識なども当然、要求されます。

● この機会を顧客・消費者のプロとして、「ビジネスをリードするリサーチ」を実現し、リサーチの価値をさらに引き上げる絶好の機会と考えるかどうかは、我々次第かと思われます。

今回の会議のメイン・テーマであるテクロノジーの進歩によるMRの革新の動きとともに、リサーチャーにとって、2010年代は、非常にチャレンジングな時代だと思います。
 

2014年6月26日木曜日

#127 JMRX特別勉強会: 「レイ・ポインターと英語で学ぶMR」開催のお知らせ


<第127回>  最新のMRトレンドを世界のMR業界のThought Leaderから、1か月で学べます!2014年6月

● JMRXではこの度、『オンライン・ソーシャルメディア・リサーチ・ハンドブック ~リサーチャーのためのツールとその技法』の著者であるレイ・ポインター氏をイギリスからお招きして、1ヶ月間のMR集中ワークショップを開催致します。
世界を代表するリサーチャーが共同執筆したESOMARのMRテキストを使用し、「英語でリサーチを学ぶ」ことによって、最新のMR動向をマスターできればと思っています。

【開催要項】

●日時:  7月の毎週、火曜日と木曜日の2回、合計で8回の開催
      19:00-21:00 (開場 18:30)
●会場: 東京都千代田区飯田橋4-7-4 飯田橋グランプラス2F エスプリ
      【最寄り駅】 東京メトロ「飯田橋駅」A4・A5出口から徒歩3分; JR総武線「飯田橋
駅」から徒歩3分。薬ヒグチの角を右折後の右角のビル(グランプラス)2F
●定員: 各回20名
●参加申し込みは、全セッションあるいは、1セッションのみの参加も可能です。
  各回2,000円。8回一括の参加料金は1万円。
  別に全回共通のテキスト1冊の代金20ユーロ(約2800円)。
  先着40名の方に10%+為替手数料のデイスカウント価格2,500円で配布。


【プログラム】

テキスト: ESOMAR「Answers to Contemporary Market Research Questions」    

第1回: 7月3日(木)  イントロ(テキストの章01) MRのコンテキスト(02)告書作成(13)   

第2回:     8日(火)    定量調査(03) 調査票の作成(05)
 
第3回:  10日(木)   定性調査(04) 定性データの分析(10)
 
第4回:  15日(火)   リサーチの応用分(16) モバイル調査(19)
 
第5回:  17日(木)   新しい手法群(17) コミュニティ調査(08) ソーシャル・メディアリサーチ(09)
第6回:  22日(火)   定量データの分析(11) 分析手法(12) 格調査(06)
 
第7回:  24日(木)   B2Bリサーチ(07) インターナショナル・リサーチ(20) 政治世論調査(21)
第8回:  29日(火)   リサーチ倫理・ガイドライン他(15) 現在のリサーチの論争点(14) 新人リサーチャーからの質問(18)

【レイ・ポインター(Ray Poynter)氏略歴】レイ・ポインター氏は、MR業界において、30年以上の経験を持ち、MRの国際会議のスピーカーや著者、ワークショップの講師として、世界的に有名です。最近では、アムステルダムや、ロンドン、ストックホルム、モスクワ、ミラノ、メルボルン、シドニー、メキシコ、マイアミ、シカゴ、ニューヨーク、トロント、シンガポールなどで行われたMRの国際会議で講演を行いました。ポインター氏は、ソーシャル・メディアにおいて、最も影響力のあるリサーチャーとして、しばしば「リサーチ・ライブ」誌に登場します。ツイッター(@RayPoynter)や、ブログで彼の発言やコメントを読むことができます。ポインター氏はまた、「オンライン・ソーシャル・メディアリサーチ・ハンドブック」の著者としても知られています。 (2010年にWileyから出版。日本ではGMOリサーチ・JMIが2011年に翻訳出版)。ポインター氏はまた、次世代MRイベントを主催するNewMRの創設者でもあり、ジョージア大学のMRコースのテキストの著者の1人であり、ESOMARのグローバル価格リサーチの専門家でもあります。
現在、ビジョン・クリティカル・ユニバーシティのDirector
http://newmr.org/


 

#126 IIeX NA会議報告 (4) インサイト・コミュニティ

 
<第126回> 今後はモバイルやコミュニティが拡大 2014年6月

● インサイト・コミュニティのビジョン・クリティカル社は、今回のIIeX会議のスポンサー企業の1社でした。

さらに、以下の3セッションでプレゼンを行いました。

1) 1日目の12:20PM
Micro Workshop presented by Vision Critical:
Gamifying the Future - Releasing the Insights About
the Future of Insights Through Gamification
Ray Poynter (Vision Critical)

2) 2日目の11:20AM
Building The Enterprise Insights Platform Of The Future
Andrew Reid (Vision Critical)

3) 3日目の2:00PM
New Skills for a New Era
Ray Poynter (Vision Critical)

でした。

● 最初のセッションは、VC社ディレクターのレイ・ポインター氏によるワークショップです。

これは私も参加していました。いつかのグループに分かれて、与えられたテーマで議論するものでした。内容は、紙に書かれたリサーチの課題をいくつか与えられて、それらを解決するためのリサーチ・デザインを考えるものです。

結果は、モバイルやコミュニティの手法を使う頻度が高ったということです。例えば、ある製品カテゴリーの新製品を考える場合、参加したリサーチャーの多くは、従来のグルインではなく、MROCや、モバイル・エスノなどの新手法を積極的に使う傾向があったということです。

特に次の4つの手法の活用提案が多かったそうです。

1. Smartphone Ethnography 2. Mobile Diaries 2. Insight /Online Communities 3. Geofencing/Tagging
 


この結果から、ポインター氏は、将来のMRの手法の傾向として、モバイルやコミュニティが主流になるだろうと予測しています。

もっともIIeXのようなイノベーションを目的とした会議の参加者の意見である点は考慮する必要があるかと思います。

ワークショップの詳細は、下記を参照。
http://www.visioncritical.com/blog/iiex-2014-workshop

● 次のセッションは、

ビジョン・クリティカル社の創業者であるあるアンドリュー・リード氏の発表です。

現在、カスター・レボリューションが起こっている。それに対応するためには、カスタマー・コラボレー-ション(CC)が必要であると提案。

マーケティング・オートメーションのパワーを活用して、それを実現するために、Enterprise Insights Platformの構築が重要であると主張。それによって、カスタマー・セントリックが可能なると。
要は、顧客中心を実現するために、顧客と協働できるプラットフォームを導入・活用することを提案しています。(結局それがVC社のインサイト・コミュニティのプラットフォームということですが)

● 最後のセッションは、再びレイ・ポインター氏の「新しい時代に必要なニュースキル」と題したプレゼンです。

ポインター氏は次の9つのスキルが重要だと言っています。

なぜ9つかというと、あとの1つは聴衆(読者)が考えて付け加えてもらうためだそうです。ソーシャルやビッグデータの時代に、リサーチャーとして保有すべき「スキル」は何だと思いますか?

http://www.visioncritical.com/blog/9-tips-how-thrive-modern-insight-professional

1.コミュニケーションのスキル
2.協働が重要collaboration
The ability to scope, resource, and manage a multidisciplinary project is probably going to be more important than any specific insight skill.
3.因果関係と相関関係の違いの理解
4.何事も疑う気持ちsceptical
Insight professionals are going to need to be the truth tellers.
5.先見の明が必要ー新さに可能性を見出すSee the potential in the new
6.不確実な現在に対応するためベイジアン思考の採用Bayesian thinking
7.妥当性を上げるためにトライアンギュレーション手法を採用Triangulation
8.翻訳能力を向上させる:クライントの課題を消費者に翻訳し、消費者の声をクライアントに翻訳して届ける:トランスレーター
The insights business is mostly about being a translator.
9.インサイトをわかりやすくー何をすべきかを説明するスキル:イリュミネーター
insights should work like the door to the refrigerator: when you open it, the light comes on.
















● 余談ですが、右の3人の方の写真、誰だかわかりますか?
アメリカで教育を受けた人ならすぐにわかるかと思います。

ポインター氏のプレゼンの中で、文化背景の違いがプレゼン理解に影響すると感じた例です。文化というよりは、個人の教養の問題かもしれませんが。(^-^;

上記の5番目のスキルに関連して、橋と鉄道の建設ニーズから、鉄の重要性を感じ、鉄鋼業を起こしたカーネギーの先見性に触れています。

左から鉄道王、コーネリアス・ヴァンダービルトhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%8D%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%AB%E3%83%88

石油王、ジョン・ロックフェラーhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%A9%E3%83%BC

鋼鉄王、アンドリュー・カーネギーhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%8D%E3%82%AE%E3%83%BC

● 3人のVC社関係者以外のプレゼンとして、

3日目の
10:20AM
New MR in New Europe: Tesco Case Study
Dinko Svetopetric
(MRevolution Sp. z o.o)
がありました。

これはVC社のパートナー企業であるホーランドのワルシャワにある調査会社MRevolution Sp. z o.o.が、インサイト・コミュニケーションの事例を発表したものです。

これも当日に会場で撮影したプレゼン・スライドをFacebookにあげておきました。

https://www.facebook.com/photo.php?fbid=814471791909893&set=pcb.814472281909844&type=1&theater

世界12か国でスーパーを展開するイギリスのテスコ社が、ポーランドでインサイト・コミュニティを活用して、顧客の維持拡大に成功している事例の紹介です。

テスコが顧客との新しいコミュニケーションの方法を開拓。顧客も参加を楽しむ。テスコの関係サプライヤーも価値を共有。企業、顧客ともWIN-WINの関係を構築したとのことです。
 

2014年6月25日水曜日

#125 IIeX NA会議報告 (3) MROC

<第125回> MROCは共創コミュニティへ 2014年6月

● 前回述べたように、今回のIIeX会議では、MROC関係のセッションは、以下の2つでした。

1) 3日目の9:40からのUSのKLコミュニケーション社の「瀕死のMROC-顧客との協働の方法The Impending Death of MROCs: How Do I Collaborate With Customers Now?」と、


2) 3:20からのPanel: The Great Methodology Debate: Which Approaches Really Deliver On Client Needs?でした。


● 1つ目のセッションについては、その日のうちに、Facebookにプレゼン資料をアップしました

まだ公式にはどのプレゼン資料も公開されていません。これは、会議中にデジカメで撮影したものです。それで見づらくなっています。ご了承下さい。

今回は参加者が多くて、会議中にスライド撮影をするのが大変でした。前半2日間は大会議室でしたが、最後の1日は、比較的小さな会議室に分かれてセッションが同時進行しましたので、撮影に成功しました。☺ (という裏話つきです)

https://www.facebook.com/photo.php?fbid=814464355243970&set=pcb.814465025243903&type=1&theater

・ コミュニスペースのMROCビジネスの成功にもかかわらず、MROCの先進国であるUSでも日本同様、MROCは問題を抱えているようです。

KLコミュニケーションズ社のSean Holbert氏によると、MROCの問題とは、価値の低下や予算の問題、作業負荷の大きさなどです。

これらの問題の重要性から、プレゼンのタイトルが「瀕死のMROC」と少し大げさになっています。

KL社は、USの中でも早くからMROCビジネスを展開した企業の1つです。
http://www.klcommunications.com/

MROCの価値をアップさせる1つの方法として、KL社は共創CoCreationを提案しています。

単にアイディアやコンセプトを評価したり、考えや意見を共有するだけでなく、コミュニティメンバーがアイディアを生み出し、コンセプトを開発したり、ソリューションや経験を協働して行こうとするものです。

これは、MROCが共創コミュニティにとってかわられるというものではありません。MROCの価値をより高める方法として、共創という活動が重要であるということです。MROCの活用の方法のバリエーションの1つとして捉えた方がよいかと思います。

● 2つ目のセッションの方は、MRの新手法の

①Text Analytics(TA)、
②Social Media Monitoring(SMM)、
③MROC、
④Mobile、
⑤ニューロマーケティング

の中で、どの手法が最も有効かというテーマで、それぞれの分野の世界的第一人者が討論したセッションでした。

Panel: The Great Methodology Debate: Which Approaches Really Deliver On Client Needs?
Moderator: Lenny Murphy (GreenBook)  司会
Panelists: Tom Anderson (Anderson Analytics), TA

Niels Schillewaert (InSites Consulting),  MROC
Michalis Michael (Digital MR),  SSM
Mark Michelson (MMRA), モバイル
Steve Genco(Intuitive Consumer Insights) ニューロ

各自がそれぞれの手法の利点を以下のように説明していました:

>ニューロ: 第2世代に入り、多くのベンダーが参入し、より科学的になり、方法論も透明性がアップしたと主張。さらに、オンラインにより、調査の規模の拡大が可能になったということです。これまで機材やコストの関係で、少人数しかテストできなった点が改良されつつあるとのことです。

>TA: これまでの情報の80%が、過去2年間に生まれて、その多くは、非構造データだそうです。それゆえ、TAの重要性がますます高まっているとのこと。これまでのTAはすべてを解決可能と言いがちでまわりをがっがりさせたけれども、近い将来、次世代TAの出現により飛躍的にその有効性が増加するとのこと。

パネラーのAnderson氏の直前のブログに対するコメントで、Adriana Rocha氏は、この討論の必要はなく、勝者はいないと主張しています。そして、今後のMRは、1つの手法に頼るのではなく、協働作業であるべきだと述べています。

MR cores will be based on collaboration, integration and continuous knowledge generation/ curation

Battle of the Methodologies
http://blog.odintext.com/?p=824&fb_action_ids=812683822088690&fb_action_types=og.likes&fb_source=feed_opengraph&action_object_map=%7B%22812683822088690%22%3A649317065150096%7D&action_type_map=%7B%22812683822088690%22%3A%22og.likes%22%7D&action_ref_map=%5B%5D

モバイル: その他の手法を結びつけるデータ収集のチャネル的存在である。タイムリーに実施できる点が大きな特徴。

パネラーのMichelson氏も、直前のブログで同様なコメントをしています。

Mobile vs. MROC vs. Social vs. Text Analytics? Really?
http://www.threadsqualitative.com/uncategorized/mobile-vs-mroc-vs-social-vs-text-analytics-really/

>SMM: TAと重複する部分が多いけれでも、トラッキングできる点が大きな優位点。

>MROC: 包括的な手法(holistic)である。つまり、コミュニティの中で、モバイルもTA、SMMも活用することが可能。場合によっては、ニューロも可能。

・お互い相互補完の関係であるけれども、

TAはまだ未完の部分が多い点で、これらの手法の中では、最も今後が期待される手法であると、TAのパネラーのAnderson氏が最後に主張。

● その他のIIeXレビュー資料

1)  Innovate or ?
http://regbaker.typepad.com/regs_blog/2014/06/innovate-or-.html
2)  Innovation in MR
http://researchaccess.com/2014/06/innovation-in-mr/

1)と2)は同じ内容です。

著者は、MRの新しい手法の中で、モバイルとMROCを除いて、あまり成功していない理由の1つは、それらの新しい方法が、MR業界以外の人々によって、テクノロジーにフォーカスして開発されたため、MRのクライアントのニーズに合致していない点にあると指摘しています。早くて、安い以外の新たな価値をクライアントに提供しきれていないとも指摘。

そう言えば、会議で、

早くて、安くて、スケイラブル(規模を大きくできるかどうか)で、モバイル+アルファが何かといった問題提起がありました。

同様な指摘は、Research Business Daily ReportのBob Lederer氏によっても行われています。
https://www.youtube.com/watch?v=Z1MmHEEq7cA&feature=youtu.be

MRのアイディアなしのテクノロジーだけでは、真のMRのイノベーションにならないと。

Lederer氏がちょうど私の席の横に座っていましたので、自己紹介をしました。彼は、会場で集めた多くの名刺をせっせとパソコンに入力していました。DMを配信しているそうです。

 

2014年6月24日火曜日

#124 IIeX NA会議報告 (2) アジェンダ


<第124回> インサイトをテーマにしたプレゼンが満載 2014年6月

● 添付は会議のアジェンダ(プログラム)です。これを読むだけでも大変です。(^_^)
http://www.iiex-na.org/wp-content/uploads/2014/06/agenda06042014.pdf

3日間、朝8:30から夕方まで、約133のセッションがびっしり詰まっていました。セッションが並行して開かれましたので、1人の体では、そのうち53セッションしか出席できませんでした。本当はすべて聞きたかったので残念でした。

例外的に1時間や40分のセッションがありましたが、基本的に20分(QAを含む)で、1セッションの形をとっていました。

スピーカーの方は、20分の間にポイントを述べる必要があります。結構大変かと思いました。

他方、聞いている方は、だれることなく、集中して簡潔に内容が聞ける点が良いかと思いました。

ただタイトルだけで、並行して開かれる、どのセッションに参加するを事前に判断しなければいけないので、今回もハズレがありました。途中でバタバタと移動するのも面倒ですし。。。

● アジェンダで最もよく使われていた用語は、やはり会議のタイトル通り「インサイト」という言葉でした。

その他では、

イノベーション、モバイル、ビッグデータ、ビジュアリゼーション、リスニング、行動経済学、エスノ、無意識、ゲーミフィケーション、フェイシャル・スキャニング、ブレイン/ニューロ、ジオ/ロケーション

などの用語がよく見られました。

● MROC関係では、

3日目の9:40からのUSのKLコミュニケーション社の「瀕死のMROC-顧客との協働の方法The Impending Death of MROCs: How Do I Collaborate With Customers Now?」と、

3:20からのPanel: The Great Methodology Debate: Which Approaches Really Deliver On Client Needs?でした。

MROCは、欧米では既に定着した手法となっているので、インサイト・イノベションのテーマとしてはあまり新鮮味がないようです。(;_;)

● 以下は、Greenbookによるまとめです。これだけのセッションの内容をまとめるのは大変かと思います。

執筆者もすべてに参加できないので、内容は多分に個人的感想になっているようです。このコメントはあのセッションの内容から言っているようだとわかるものもあれば、そうではないものもあります。たぶんそれらは私が参加していないセッションの内容だと思います。

● Greenbookによる第1日目のまとめ
http://www.greenbookblog.org/2014/06/17/top-5-takeaways-from-iiex-day-1/

私が個人的に気になったポイントを挙げると、

・テクノロジーは、リサーャーと消費者を結ぶツールであり、それ自体はイノベーションではない。

・消費者を理解するには、情緒的ドライバーを特定する必要がある。

● Greenbookによる第2日目のまとめ
http://www.greenbookblog.org/2014/06/18/iiex-participants-take-on-day-2/

・情報はたくさんあるけれどもそれが有効なアクションにつながるように活用されていない。例えば、ブランドと消費者がどのような関係であるかについて、データから何が言えるか、などを明らかにする必要がある。

・コンセプト・テストにおいて、言葉によるコンセプトよりも、ビジュアルが重要である。

● Greenbookによる第3日目のまとめ
http://www.greenbookblog.org/2014/06/23/iiex-day-3-maintaining-work-life-balance-and-recruiting-new-talent/?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+greenbookblog%2FbrDV+%28Greenbook+Blog%29

・MRの人材のリクルートについてーこれは重要なテーマですので、別の機会に述べたいと思います。

また、2日目の中で説明されている Insight Innovation Competitionについては後日言及する予定です。

● 他の参加者による第1日目と第2日目、第3日目のまとめ―このまとめの筆者は、Sentient Decision ScienceのAaron Reid氏で、感情測定の専門家ということで、その視点からセッションの内容がまとめられています。
http://www.sentientdecisionscience.com/iiex-day-1-recap-insights-subconscious/
http://www.sentientdecisionscience.com/iiex-day-2-recap/
http://www.sentientdecisionscience.com/iiex-day-3-implicit-empathy-mobile-close-memorable-show/

同様に気になるポイントとして、

無意識/潜在意識の重要性ー既存のリサーチは、クライアントに対して、価値やストーリー、違いを提供していない。極端に言えば、リサーチャーは「嘘つきである」。その反省から無意識の重要性が強調されています。

ニューロマーケティングという用語は使わないー私も出席していた彼のセッションで、Reid氏がNeuromarketingの用語を使わないと主張していました。なぜなら、そのような特定のマーケティングは存在しないし、すべてのマーケティング活動は、神経学的に処理される=つまり頭で考えられるものだからだそうです。なるほど。

共感empathyの重要性を指摘

その他、いくつか重要なポイントも指摘されていますが、それらについては今後の報告の中で取り上げたいと思います。

2014年6月23日月曜日

#123 IIeX NA会議報告 (1) イントロ


<第123回> インサイト発見のイノベーションを目的としたMR会議 2014年6月

● 6月16日(月)ー18日(水)の3日間、アメリカのアトランタで開かれたInsight Innovation Exchange North Ameica (IIeX NA)会議に出席してきました。
http://www.iiex-na.org/
 
● IIeX会議は、昨年USのフィラデルフィア(第1回:2013年6月17日ー19日)で開催されたのを皮切りに、

第2回: 2014年2月19日ー20日 EU会議(アムステルダム)
http://www.iiex-eu.org/
第3回: 2014年4月 8日ー 9日 LatAM(チリ:サンティアゴ)
http://www.iiex-latam.org/

で開かれ、今回が4回目でした。

● USのMRの情報サービス団体であるGreenBookが主催しています。
http://www.greenbook.org/

”Market Research is Dead” のもと、MRの将来像のビジョンやイノベーションの実践例、新しいMRのテクノロジーを共有することを目的に実施されています。

調査のビジネス上へのインパクトを求めるクライアントサイドのインサイト部門と、イノベイティブなソリューションを結びつけることにフォーカスしています。

他のMR会議と、IIeXが異なる特徴として、

①GreenBookが、グローバル・ブランドの企業であるUnilever, Ericsson, Procter & Gamble, and Johnson & Johnsonなどのアドバイスをうけて、クライアントのニーズに直接答える形で、会議のアジェンダを作成している点や、
②クライアントの担当者や、調査会社、MR業界外のテクノロジー企業が協働し、ビジネスが実現できる環境を提供している点、
③参加企業間の競争より、協働的な精神を作り出している点などです。

● 今年の12月4日ー5日にオーストラリアのシドニーで、AP(アジアパシフィック)地域で初めて開催されます!!!(昨年段階では、9月にシンガポールで開催予定でしたが変更)

今回のアトランタ大会が、650人近くの参加者がいたという主催者側の発表でした。
NewMRを探る関心の高さが理解できます。AP地域での初開催が楽しみです。

● 今日から毎日少しずつ会議内容を報告して行きたいと思います。

* 本日時点では、残念ながらまだ会議で使われたプレゼン資料は公開されていません。

会場のGeorgia Tech Hotel and Conference Center
https://www.google.co.jp/maps/preview?hl=ja&ie=UTF-8&fb=1&gl=jp&cid=12427132733477188050&q=Georgia+Tech+Hotel+%26+Conference+Center&ei=R92nU6KjE8Pn8AWkroDACA&ved=0CLMBEPwSMAs


 

#150 レイ・ポインターのMR白熱教室2015 第4回(最終回)報告

<第149回> レイ・ポインターのMR白熱教室2015 第4回(最終回)報告 2015年6月23日 ● 第4回目のテーマは、 『データからストーリーテリング』 でした。 ● 7月にレイとの懇親会を予定しております。世界のMRのソート・リーダー(thought ...