2014年6月30日月曜日

#129 IIeX NA会議報告 (6) MROCとインサイト、ソリューション


<第129回> インサイトとソリューションとの混同 2014年6月

● 前回のブログで、会議においてトリガー・ポイントのWilliam Leach氏が、

CEOは、インサイトを求めていない。彼らが求めているのは、ソリューションである」と述べているとお伝えしました。

これを聞いて、日頃思っていることを会議の会場で思い出しました。

● 以下のようなことをよく聞かれるかと思います。

・リサーチからヒット商品は生まれない。
・顕在ニーズからはヒット商品は生まれない。ゆえに潜在ニーズをさぐる調査方法が必要である。
・消費者は自分のほしいものを知らない。だからリサーチをしてもムダである。

(写真はIIeXが開かれたアメリカ・アトランタ市のホテルからのダウンタウンの様子)


このような議論を聞くといつも、インサイトとソリューションが混同されているなーと感じます。

● 調査でニーズを明らかにして、それに基づいて、ソリューション(それを解決するアイディア)=製品アイディアや販促アイディアを考えるのが通常のやり方だと思います。

一般的に言えば、ソリューション(製品アイディアや販促アイディア)は、消費者のニーズ(インサイト=生活課題、欲求や要望、不満や改善点など)に根ざしている方が、成功確率が高いと言われています。なぜなら、消費者がもつ生活課題の解決に役立つので、消費者の受容性が高くなり、購買率も高くなるからです。

ヒット商品や売り上げアップに成功した販売促進アイディアは、製品開発や販促についての問題解決のための「ソリューション」だと考えられます。

● 消費者は、ほしい商品のアイディアを具体的に表現できなくても、「あーしたい、こーしたい、そーしたくない、この点が不満だ、不便だ」などというニーズは、聞き方を工夫すれば言葉にだせると思います。

よく出される例として、消費者は、ウオークマンの具体的なアイディアは回答できなかったでしょうが、屋外で自分の好きな音楽を聞きたいとか、大きなラジカセを屋外に持ち出して聞いている音楽ファンを「行動観察」すれば、彼らのニーズ=インサイトは理解できたでしょう。

● しかし、インサイトなしでも、つまりリサーチなしでも、ジャスト・アイディア、ひらめきで、成功するソリューション=アイディアを生みだすことも不可能ではありません。

むしろ、ある意味、企業にとって、それの方が好ましいかもしれません。なぜなら高いリサーチを節約できるからです。またリサーチをやっても、よいインサイトやソリューションが生まれる保証はどこにもありません。

ちなみに、ここで言うリサーチは、ソリューション生成のためのリサーチです。仮説を検証したり、リスクを低減、価値の最大化などの最適化のためのリサーチは除いて考えて下さい。

● また顕在vs潜在ニーズとソリュションについても同様に考えることができます。

ニーズが顕在であろうが、潜在であろうが、ソリューションがよければそれに越したことはありません。

例えば、おいしいものが食べたいとか、喉の渇きを潤したいなどといって、古典的な非常にありふれた陳腐な顕在ニーズから、売れる製品や販売方法を考え出すには「ソリューション力」が試されます。そのための刺激剤として(私の個人的言葉で表現すると「頭の体操」としての)リサーチが役立つます。

例えば、昨年のヒット商品である「伊右衛門 特茶」や「炭酸水」などは、特別のありがたい「潜在ニーズ」から生まれたヒット商品ではありません。

逆に言えば、潜在ニーズから必ずヒット商品が生まれるわけでもありません。すごい潜在ニーズが発見されても、それを解決する具体的な製品やサービスのアイディアが出せなくては成功しません。

● 成熟した市場において、イノベーションによる画期的な商品を除いては、なかなかヒット商品の開発が難しいのが現状です。

むしろ現在は、ありふれた顕在ニーズから、いかにソリューション力を生かして、ヒット商品アイディアを生み出すかも試されている面もあります。

リサーチが、よいインサイトや潜在的ニーズを発見してくれないから、ヒット商品やサービスを生みだせなーいと、言い訳するようなマーケターの方が(おられないと思いますが)いましたら、リサーチャーは可哀そうです。


しかし、このことは想定外の「潜在ニーズ」の探索作業を否定するものでは決してありません。我々リサーチャーとして、画期的な潜在ニーズの発見に日々精進する必要はあります。


● いずれにしても、もっと消費者を深く知る必要があることには変わりはないかと思います。

もっと生活に根ざして、消費者を知る。

生活のコンテキストにそって、消費者の行動を知る、必要があるかと思います。

ITの進歩によって、MROCやモバイル・リサーチによって、顧客の深い理解や360度理解が可能になってきています。

またMROCは、インサイトだけでなく、MROC内で、共創/コクリエーションを通して、新たなソリューションを消費者とともに創造することも可能です。

インサイトとソリューションの両方の発見を同時に可能にしてくれるのがMROCです。MROCの今後のさらなる「進化」を期待したいと思います。

 

0 件のコメント:

#150 レイ・ポインターのMR白熱教室2015 第4回(最終回)報告

<第149回> レイ・ポインターのMR白熱教室2015 第4回(最終回)報告 2015年6月23日 ● 第4回目のテーマは、 『データからストーリーテリング』 でした。 ● 7月にレイとの懇親会を予定しております。世界のMRのソート・リーダー(thought ...