2011年5月18日水曜日

MROCと顧客ロイヤルティ、顧客経験

《第59回》


●次回の第13回JMRX勉強会2011年5月度は、先日予告しましたように、

株式会社アイエムジェイ マーケティング本部 統合型マーケティング戦略室 チーフコンサルタントであり、

日本初のNPS認定資格者(Net Promoter Certified Associate®) の

高見俊介氏による

「ロイヤルティリーダーに学ぶソーシャルメディア戦略」

を来週5月23日(月)に、東京ウイメンズプラザで開催致します。

お申し込みはこちらから:http://kokucheese.com/event/index/11456/


●この3月に同名のご著者を出版されたところです。

「ソーシャルメディア活用による顧客ロイヤルティ向上」のテーマについて、

多くの事例を交えながら、わかりやすく解説されています。

ソーシャルメディアや、
ソーシャルメディア活用の効果測定、
ソーシャル・リスニング、
顧客ロイヤルティ、
顧客経験(体験)、
顧客満足、
ソーシャルCRMなどに興味のある方には必読の書です。

●「ソーシャルメディアのビジネス戦略とロイヤルティマネジメント

~先進企業のケーススタディを踏まえて~」参照

MROC製品開発上の代表的事例である

ゴディバ・チョコレートの事例も紹介されています(113頁)。

●ちなみにMROCは、顧客ロイヤルティの分野でも、ロイヤルティに影響を与える「顧客経験(Customer Experience)」-コンタクト(タッチ)ポイントを広く、深く理解する上で有効な方法です。(E-MROC)


●企業経営にとって(=CEOにとって)、「顧客ロイヤルティ」や「ソーシャルメディア」の重要性を認識することの大切さを強調されています。

●この2つを結ぶ重要な指標として、NPS(ネット・プロモータ・スコア)が紹介されています。(40頁以下参照)

NPSは、製品/サービス、ブランドに対する顧客ロイヤルティを測る指標。

「X社を友人や同僚にすすめる可能性は、どのくらいありますか」という質問に対する
11ポイント評価の回答(非常に可能性が高いー非常に可能性が低い)によって、

ソース:Net Promoter Score (NPS) Criticisms and Best Practices対象者(顧客)を



10-9: 推奨者(プロモータ)、
 8-7: 中立者(ニュートラルPassives)、
 6- : 批判者(ディトラクター)に分類し、

NPS指標=[推奨者(プロモータ)の%]-[批判者(ディトラクター)の%]


●以前、私のもう1つのブログでも、このNPSをご紹介しました。

NPSとSocial Mediaの関係

これは、Dave EvansのSocial Media Marketingの内容を紹介したものでした(128頁参照)。


●リサーチの分野では、NPS指標は、フレッド・ライクヘルドの原著のThe Ultimate Question: Driving Good Profits and True Growth (翻訳:「顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」)が2006年に出て以降、大きな論議を呼んでいる指標です。

●リサーチにおいて、売上(=購買)を予測する、つまり売上と、高い関連性のある「指標」を見つけることは非常に重要なことです。

なぜなら、

もしその指標を見つけることができれば、その指標のスコア(評価値)を向上させるように、マーケティング活動を行えばよいからです。

そして、そのキー指標を向上させるには、さらにどのような評価項目を向上させればよいかを解明できれば、さらにより有効なマーティング活動を効率よく展開できるからです。

その指標を向上させる項目がわかれば、さらにその評価の変化を追うことで、売上低下の原因や、その改善点などがわかる利点があります。


●「顧客ロイヤルティ」のケースでいえば、

売上と顧客ロイヤルティとの間には、高い関連性があると考えられています。

つまり、企業やブランドなどに顧客ロイヤルティが高い人ほど、それらの商品を購入し、売上に貢献するだろうと考えられるわけです。

それでは、「顧客ロイヤルティ」をリサーチでどのように指標化できるかが問題になります。

その方法の1つがNPSです。

●それ以外では、例えば、

「顧客満足度」(CS:Customer Satisfaction)で測定しようとする人もいます。

しかし、満足した人が必ずしも、その商品を繰り返し購入するとは限りません。現在では、購買行動を予測する指標としてのCS指標の有効性は低下しています。

つまり、CS指標に実際の購買行動を予測する力がなければ、いくら予算をつぎ込んで、満足度上向上運動や、改善を行っても、売上アップにはつながらないということです。

●またあるリサーチャーのグループは、NPSという単一指標(NPSは、ブランドや製品を他人に奨める可能性を0-10の11点満点で尋ねる1つの質問)では、ロイヤルティは測定できないとして、多重指標(複数の質問から作成する指標)を提案しています。

例えば、私があるグローバルの調査会社で、顧客ロイヤルティのソリューションを担当していたモデルでは、次の4つの質問から、ロイヤルティ指標を構成していました:

①伝道 Advocacy(推奨 recommend)
②維持 Retention(継続利用Continue to use)
③増加 Expansion(多購買Buy more)
④他購買Buy other

推奨の質問は①に含まれています。


このモデルのロイヤルティ指標も、NPS同様、売上などの財務指標との間の高い相関関係が検証されています。

多重指標の場合、各測定(質問)間のウエイトづけが問題になりますが、このモデルでは単純に平均値を算出していました。
 
●ちなみに、このロイヤルティ・モデルでは、下記の図(クレジットカード企業の例)のように、合理的なモチベーション(ここに顧客満足が含まれる)と、情緒的なモチベーションによって影響をうけ、それらが、個々の顧客経験(タッチポイント)によって説明されています。これらの関係性を、構造方程式モデリングの因果解析手法を使って定量化しています。


●USの企業やCEOにそのわかりやすさから、広く受け入れられた事実に対する、
リサーチャーや研究者からの「嫉妬」もあり、彼らのNPSに対する批判は手厳しいものになっています。

売上との関連性に疑問を持つリサーチャーや、11点尺度の信頼性や、11点を3分類する方法に反論する研究者もいます。Net Promoter

最近でも、NPSをめぐる議論は、リサーチャー間で盛んに行われています。

例えば、

1)フォレスターのリサーチャーであるRichard Evensen氏の

Stop Using NPS (Net Promoter Score) But Please Save The Question!

・NPSは、スネーク・オイル(いんちき薬 《行商人などが万能薬として売る》) だと批判しています。

そして、Stop using NPSだと主張しています。

その理由として、

①国や文化によって、11点尺度の評価が異なるので、推奨者から批判者を引いた%に問題あり、
②顧客ロイヤルティ向上のために改善を行う従業員の動機づけの良い指標にならない、
③NPS指標と、実際の顧客の行動との関連性に疑問あり。

NPSをめぐるさらなる議論:The Forrester Community for Market Insights Professional参照。

2)Jeffrey Hennings氏のMarket Researchers Are From Mars, NPS Advocates Are From Venus


・NPS批判派(主にMR)とNPS擁護派の論争は、まるで火星人と金星人の議論で噛み合わないと言っています。
 
Market researchers are from Mars, NPS advocates are from Venus, but business is conducted here on earth. What do you think the two sides could learn from one another?

●リサーチャー側は、厳密性にこだわるだけでなく、複雑な現実世界においてNPS指標のもつビジネスを動かす上での「単純明快さ」の力から、インサイト創造の上で多くを学ぶ必要があるように感じます。


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このブログは毎週、月曜日中に更新されます。

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