2011年5月23日月曜日

MROCに対する理解不足と誤解 その2

《第60回》


◆第13回JMRX勉強会2011年5月度は本日開催

●株式会社アイエムジェイの高見俊介氏による

「ロイヤルティリーダーに学ぶソーシャルメディア戦略」

●まだ申し込み可能です:http://kokucheese.com/event/index/11456/







◆MROCに対する理解不足と誤解 その2
 
●4月18日号で、日本版MROCの離陸: MROCに対する理解不足と誤解をとりあげました。その第2回目です。
 
●先週Twitterで次のようなツイートがありました。 

@totemoiiko MROCって、当たり前だけどメソドロジーじゃなくて、単なる(かどうかは別にしても)コミュニティなんですよやっぱ。定量パネルみたいな。その辺りを置き去りにして、サービスファンクションに定量、定性、MROCって並んでいるのは超気持ち悪い。
 
●すこし誤解があるような感じです。
 
●確かに、定量、定性とMROCは並列ではありません。MROCの中で、定性調査が行われたり、定量調査が行われますから、同レベルの概念ではないでしょう。
 
ひっかかるのは、「定量パネル」の箇所です。MROCはその起源は、定性調査にありますので、定量パネルというのは適切でないかもしれません。MROCで、定性調査ができないという誤解を与えるかもしれません。
 
MROCの大規模なものを「コミュニティ・パネル」と呼びますが、そこでは定量調査が行われます。(定性調査も)。カナダのVisionCriticalが提供しているサービスです。
 
定量パネルというと、オンライン・パネル、つまり、ネット調査の対象者のパネルと混同される可能性があります。
 
MROCの参加者は、オンライン・パネルからもリクルートされますが、MROCとオンライン・パネルで行われる調査の種類は全く異なるものです。
 
●MROCは、りっぱな「メソドロジー」(方法)です。リサーチ・ツールです。逆に短なる「コミュニティ」ではありません。ロイヤルティやエンゲージメント育成や販促などを目的とした単なる「マーケティング・コミュニティ」ではありません。調査課題の解決を目的として、リサーチにフォーカスしたコミュニティです。
 
欧米では、昨年あたりから、マーケティングの意思決定を行う調査プロセスの一部として、広く認められたリサーチ・ツールです。
 
●先週、クライアント様から次のようなご質問もいただきましたので、共有させて下さい。
 
Q:MROCを実施するに当たり、クライアントが既存でもっている自社の会員でやってみたいといってきた場合、モニターは必要なくなるが、実施は可能でしょうか?
 
A:可能です。

但し、MROCでの課題解決にふさわしい「参加者」であるかどうかの吟味が必要かと存じます。テーマに関して、あまり関心がなく、発言力のない人の場合、よい回答が得られなかったり、途中で脱落される可能性があります。

自社商品購入者や、キャンペーン応募者などから作成されたクライアント様の「顧客リスト」にはさまざまな消費者が含まれています。単に受身的に商品を消費する人から、高い問題意識をもって、積極的に企業に提案をしたいという人まで、さまざまです。

コミュニティ上で、相互作用が起こり、参加者間の自然な会話が盛り上がるためには、他の参加者とのつながりを深め、積極的に自分の意見をいうような発言力があり、テーマへの関心度や知識が高い生活者からなるコミュニテイが望ましいと言えます。

このあたり、テーマにより、ケースバイケースで対応になるかと。

ブランドによっては、強いロイヤルユーザーをお持ちのブランドであれば、そのロイヤルユーザーの中で、ソーシャルメディアの利用度などによって、クライアント様の顧客データベースから参加者を抽出するといったプロジェクトが以前ありました。

Q:MROCの結果を分析し、商品や広告アイデアを出すことがクライアントから求められた場合、MROCで有益な情報がないととても困ると思いますが、その場合はどのようにしますか?あと、MROCの結果を見ての、アイデアは既存の広告代理店のクリエイターなどがやるアイデアと明らかに違いが出るものでしょうか?

A:ご指摘は、グッドポイントであり、よく聞かれますご質問でもあります。

もともとMROCはコミュニティであり、長期の日常での調査です。日常に密着しているがゆえに、想定外のアイディアがでる「可能性」は、「アイディア出し」を目的とするグルインよりも高くなります。しかし100%の保証はありません。参加者の質やコミュニティの運営にも影響されます。アイディア出しに特化する場合は、参加者は、イノベータ、インフルエンサー、フォロアーといった条件で絞った方がよい場合もあります。

さらに、長期MROCが定着していない日本の市場向けに、(株)MROCジャパンが独自にご用意致しました「短期的MROC」では、この問題はより深刻になります。「2週間前後で、グレート・アイディアがでれば、みんな苦労はしない」とも言えますが。。。

このあたりは次のようにご理解いただき、クライアント様と理解を共有していただければと存じます。あまりクライアント様の「期待」を上げますと、逆に「不満足度」が高くなりますので。

本来MROCは長期的なものですので、製品開発や広告開発の「アイディア出し」といった全くゼロからのアイディア・ジェネレーションが目的の場合は、できれば長期MROCをおすすめ下さい。

そうでない場合、すなわち短期MROCをお使いの場合は、

① グルインなどど同様、アイディア候補のブラッシュアップや有力候補の選定、既存商品との比較評価といった具体的な目的(短期で解がでる目的)に絞るーMROCはすべての課題(目的)に対応するものではありませんので、ご提案される場合は、このあたりご留意お願い申し上げます。この場合でも、グルインよりも長期でかつ日常生活に密着していますので、より深い評価をえることができます、

② あくまでも、完成アイディアではなく、そのヒントをえるというスタンスで捉えていただければと思います。つまり、MROCは本来、消費者と企業との共創(コ・クリエーション)作業ですので、MROCを運営しながら、そこからクライアント様や御社のプランナーの方々が、ヒントをえて、アイディアを作り上げて行く、つまり消費者言語を収集しながら、クリエイターの方がヒントを獲得する場としてのMROC(消費者の生の声の貯蔵庫)として位置づけていただければと存じます。つまり、MROCは、自社の「マーケティング用ソーシャルメディア」になります。そのようにお考えいただくと、プロのクリエイターの方にとっては、MROCは敵ではなく、頼もしい味方になるかと思います。両者のアイディアの優劣の比較も必要がなくなります。

●このように、問題意識や関心が高い消費者が、コミュニティ参加中の集中度の高い中で、日々の生活の中で思いついたことや、自分たちの生活をよりよくするために、企業に対して、こんな商品を作ってほしいとか、このように改善してほしい、このような売り方をしてもらうとより買いやすいといったようなアイディアの提案・収集の場としてMROCは存在価値があります。単に口コミサイトに投稿しても、それが企業の担当者まで届く保証はありません。多くの場合は投稿のみで終わるでしょう。MROCでは、企業の担当者がそのアイディアに対して、消費者にさらに詳しく聞くこともできます。さらにそのアイディアについて、参加者の他のメンバーの意見も聞くことができます。

企業の担当者の方は、自分で、あるいは企業内だけで考えないで、生きた生活者の声を継続的にリスニングするシステムとしてのMROCの社内構築をおすすめ致します。他のリサーチ・ツールと比較しても、そのROIは高いものです。

●MROCのように、新しい概念であり、定番の参考とする本などもない場合、最初に導入された時に、間違って紹介されるとそれが1人歩きする怖さがあります。

仮に、もしある人や会社が、最近、欧米で話題になっているMROCが、既存の「掲示板グルイン」(BBFG: Bulletin Board Focus Groups)のようなものだと紹介されたとします。MROCに興味をもたれたあるクライアントさんが、調査会社から「MROC=掲示板グルイン」 というプレゼンを受けた場合、過去に掲示板グルインをやってあまり良い印象をもっていなかったそのクライアントさんは、MROCを2度と使わない可能性もあります。

新しい概念の場合、正しい理解の普及促進が強く望まれます。その上で、日本市場に合うように日本版MROCに改良することが良いかと思います。

◆NewMRバーチャル・イベントは、今週25日(水)開催:エスノにご興味のある方は必見
 
●今週25日のThe NewMRVirtual Festivalは、エスノグラフィがテーマ。
 
総論、ゲーミング、テキストアナリティクス、ニューロサイエンスに次ぐ、第5弾です。
 
プログラム  合計12プレゼンが行われます。
 
●USセッションでは、CommunispaceのJulie Wittes Schlackが In Time, In Context, In-Spired: Mindfulness in Mobile Ethnographyと題して講演予定。

●LinkedInでのエスノ議論:When is it ethnography and when is it not ethnography?
 
 
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