2011年11月29日火曜日

MRの最近の動向についての私感

《第75回》


●ここ数年の世界のMR動向を2つのキーワードで表すとすれば、


1)同時リサーチへ


2)人間中心リサーチへ


であると解釈できるかもしれません。


●「同時調査」というのは、実際の購買や消費の前(プレ・リサーチ)でもなく、後(ポスト・リサーチ)でもない、その瞬間における意識や態度、行動を測定しようとするものです。


いわゆる、購買の決断の瞬間であるFMOT(First Moment of Truth)や、消費の瞬間SMOT(Second Moment of Truth)、さらにはそれ以前のZMOT (Zero Moment of Truth)の消費者の意思決定の瞬間の意識や行動を測定しようとする動きです。


これは、「リアリティ」の追求として、従来からリサーチが目指してきたことです。あいまいな記憶にたよるリコール・データではなく、誤差の少ない精度の高いデータを収集しようとする試みです。このリサーチにおける重要な目的が、ITの進歩によって、徐々に現実化してきています。


より精度の高いデータによって、有効な意思決定が行われることは喜ばしいことです。


これが、スマートフォンを中心とした「モバイル・リサーチ」の拡大です。


定性、定量調査の両面においてです。


また、点ではなく、線や面で消費者を継続的に捉えようとするMROCやモバイルMROCの動きも同様です。ソーシャルメディアやSNSでの発言やそのリスニングも、データの同時性を高めています。


●もう1つは、「人間中心」と呼べるのではないでしょうか。


マーケティングがターゲットとする消費者も、「人間」です。それゆえ、「人間(の意識や行動)」について、MRはもっと知らなければいけないという考え方です。


95%が無意識の文字であらわされない部分で決定されているというバイオメトリクスやニューロ・サイエンス、脳科学のMRへの応用もその1つです。


人間の意識や行動、本能のより深い理解をMRに応用しようとする「行動経済学」や「ゲーミフィケーション」などもこの分野に分類することができるでしょう。


人間は誰かとつながりたい、自分の意見の発言・共有を行いたいという「ソーシャルな存在」であるという本質と、ITの進歩が結びついた「ソーシャルメディアリサーチ」も、ある意味「人間中心」であり、かつソーシャル上での発言は「同時調査」を可能にしていると言えます。

JMRAアニュアル・カンファレンス・レポート (2)

《第77回》

ソーシャル・メディアを活用したショッパー・インサイトの把握
(株式会社マクロミル上田 雅夫)

●従来のショッパー・インサイトの調査手法の欠点を補う方法として、ツイッターの利用を試みた非常に興味深いチャレンジングな研究です。

店頭観察調査の実施実現の難しさ(お店の協力など)や、サーベイ調査による対象者の記憶の問題など、購買時点の態度・行動をより正確に測定する方法がショッパー・インサイトの発見では求められています。

ITの進歩は徐々にその可能性を高めています。

その1つであるツイッターを利用して、より精度の高いショッパー・インサイト調査の確立を目指した研究です。

●外部の人からつぶやきが見れないように(参加者間はお互いの発言は見られるの返信やRTは可能)、調査用のツイッターのアカウントと設定し、買い物について自由につぶやいてもらう方法。会話を妨げないように主催者側の発言は原則1日1回。

●提出ペーパーによりますと、この調査によって、

①十分な発言が得られた、
②RTや引用により会話が成立
③購買理由において非価格の比率は低くない
④購買理由は日々変化する

点を明らかにし、ショッパーインサイトの発見に、ソーシャルメディアであるツイッター活用の有効性を検証しています。

●(所感)モバイル調査の1つです。モバイル・アプリでも可能だと思います。

ソーシャルメディア・モニタリングでも、ショッパー・インサイトはリスニング可能でしょう。

また、MROCの中での展開も可能です。エスノ的観察も実施可能でしょう。

このように、ITの進歩は、ショッパーインサイト・リサーチの可能性を大きく拡大してくれるものと期待されます。


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以下、プレゼン中の私の個人的ノートです。

●12:58-13:20

はじめに

調査概要

調査結果

・ショッパーインサイトへの関心の高まり

Deloitteの研究

・これまでの購買意識のアプローチ方法

既存手法ではショッパーインサイトの測定が難しい

Twitterプラットフォームを活用するメリット

1440万人

即時性の高いコミュニケーション

文章ではなくつぶやき⇒本音の収集

全国25-34才

iPhone所有者で、日常的にツイートしている人が対象

50人―42人

調査用のIDを取得

自発的発言、働きかけは必要なものに限定、最小限

期間中のツイート数

1人当たり1-2ツイート

毎日約半数がツイート

書き込みのあった購入業態

CVS,スーパー

書き込みタイミング

何かしたタイミング

メンバー間の相互作用:会話が見られた

同一個人の状況の変化:購買理由が状況に依存

発言内容

感想が6割、理由が4割

購入理由で非価格の理由の比率が高いープロモーションに活用

結論

1) 気分の変化:気が緩み購入

⇒気分を変化させる売り場を作る

2) ネットの影響:ネットの記事の影響

⇒リアルとバーチャルの連動

3) 店頭における推奨:オススメ

⇒適切な推奨

実験調査の長所

コミュニティによる相互作用だけでない

記憶に頼らずに意識・態度を変化

時間軸の行動(背景・状況)

表現の多様性(写真、絵文字)

短所

構造化する必要がある調査に不向き

SMRの今後の展望と課題

場所・時間に制限されない

他の調査への応用(耐久財の購買過程、契約型サービスの満足度調査)

位置情報、購買情報

全員ができるわけではない

JMRAアニュアル・カンファレンス2011レポート (1)

《第76回》

●先週、一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会のJMRA Annual Conference 2011に出席しました。


●JMRAアニュアル・カンファレンスの今年のテーマは、


Renovation! 次世代リサーチの創造へ


非常にタイムリーで、チャレンジングなテーマで興味深いです。


どのような質の高いイノベイティブな発表が行われるか非常に楽しみに参加させていただきました。


●カンファレンス委員会の皆さん、企画、準備、当日運営、お疲れ様でした。


テーマへの関心の高さが示されたように、委員会の発表では、リサーチャーが400人近く、それに学生、その他を入れて、500人近くが参加されたとのことです。
http://www.jmra-net.or.jp/conference/index.php

参加者の交流促進のため、「参加者名簿」が配布されました。これはよい試みだと思います。


しかし、残念ながら、名簿掲載者が247人、非掲載希望者が132人でした。100名以上の方が、「なんらかの理由」があって名簿への所属・名前の掲載を辞退されていました。


(私個人は、すっかり会議を忘れていまして、当日飛び込みで参加しましたので、名簿には記載されていません)


●本投稿は、私の個人的な会議ノートです。


誤解や聞きもらし、書きもらしなど多々あることをご了承下さい。あくまでも私のフィルターを通した個人的感想・意見であることをお断り致します。プレゼンの正確で詳細な内容は、後日JMRAのHP上で公開される「プレゼン資料」および、当日配布された「発表ペーパー資料集」(この資料は、残念ながら「禁無断転載」ですので、そのままここで使用することはできません。出席された同僚の方にお尋ね下さい)をご参照・補足をお願い致します。


●会場内へのテープレコーダーや、デジカメ、ビデオの持ち込みは禁止されていましたので、残念ながら会議画像を掲載することはできません。録画は兎も角として、写真ぐらいはいいのでは思いますが。先日出席したUSマイアミで開かれたESOMARの会議では、バンバン写真をとってきましたが。


会議でのプレゼン資料を携帯でとり、それをTwitter上で流した@ushido氏が、カンファレンス委員会の方から削除の注意を受けていました。。。


また、会場は地下2階でしたので、WiFiが入りませんでした。来年は会議室イベント専用のWiFiの提供をお願いしたいところです。それが世界の常識になりつつありますので。。。


Twitterでも、


ctrtokyo 川平 慈子,Chika Kawahira さんが、


ただ、会場が地下でPCからはモバイル接続が難しそうでしたので、やむなしなところも。。RT @mr_edokko: JMRA2011のハッシュタグ ツィートが250件とはちと寂しい

●しかし、まずこのような会議を実施すること自体に大きな意義があると思います。


次は、テーマのもとに会議で発表されるペーパーの内容のレベルが重要です。多くの方は、この部分に大きな期待・関心があると思います。


今回は、以下の5つの発表がありました。


1 ソーシャル・メディアを活用したショッパーインサイトの把握 (株式会社マクロミル上田 雅夫)


2 潜在意識へのアプローチ:潜在意識反応測定法(ジーエフケー・カスタムリサーチ・ジャパン株式会社杉山 由佳)


3 "伝統的な調査手法と“傾聴”から見えてきたこと -自主調査「東日本大震災被災者アンケート」-" (株式会社サーベイリサーチセンター" 岩崎 雅宏、石川 俊之")


4 スマートフォンを活用した次世代リサーチの創造(株式会社インテージ小島 賢一)


5 "カスタマー・ディライトとディスアポイントメントが顧客ロイヤルティ形成にあたえる影響の研究"
(株式会社電通マーケティングインサイト古口 敏道)


●今年のベストプレゼンテーション賞は、5番目の電通マーケティングインサイト


ベストペーパー賞は、3番目のSRCにそれぞれ送られました。


おめでとうございます。


発表者の皆さん、お疲れ様でした。研究に多くの時間をとられ、当日の発表も大変だったと推察致します。


●発表者の方々の多大なご努力に敬意を表しつつ、本投稿では、若干辛口の個人的感想を共有させていただければと思います。


私個人、発表されてた方個人や所属会社様とは、なんら個人的関係はありませんので、以下の論評はあくまでも「発表内容のみ」についての個人的感想とご理解下さい。


●発表詳細は、本投稿に続く、個別レポートを参照下さい。


●まずベストプレゼン賞の「カスタマー・ディライトとディスアポイントメントが顧客ロイヤルティ形成にあたえる影響の研究」は、顧客ロイヤルティ(顧客満足度調査)研究の再検討です。これまでの研究に新たな知見を付加した意義は高く評価されるべきだと思います。


過去の価値に新たな価値を付加する今回のテーマ「リノベーション」に、まさに合致するものだとも言えるでしょう。


しかし、この研究は、伝統的調査分野の延長戦上にあるものです。現在はMR革命と言われているように、ビジネスにおける既存MRの有効性に対する懐疑と、ITの急激な進歩の中で、MRの根本的改革が求められているのが現在です。


そのような中で、日本のベストプレゼン賞が既存分野の研究であったのが少し残念な気がしました。


いきなり画期的な「イノベーション」は難しいので、控え目な意味で「リノベーション」が掲げられているとすれば残念です。


●ベストペーパー賞の"伝統的な調査手法と“傾聴”から見えてきたこと -自主調査「東日本大震災被災者アンケート」-" も同様です。従来の調査員による面接聴取法に、「傾聴」姿勢を加味することによるインサイトの発見の意義は大きいと思いますが、従来の訪問面接調査の方法の改良です。
ここでいう傾聴は、ソーシャルリスニングでいうところの「リスニング」ではありません。

少なくともこれら受賞の2つは、私が目指している「次世代リサーチ」の創造の方向とは異なるものです。個人的には、上記の1や2、4の研究の方がより将来的可能性を含んだ研究だと感じました。


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以下、個人的会議ノートです。ご参照下さい。


◆カンファレンス委員会担当理事/小西克己氏のご挨拶


●10:07-10:15


リフォームは、古くなったものを回収すること。リノベーションは、時代の変化に合わせてグレードアップ、付加価値をつけること。業務への学び・気づきを期待。




◆基調講演: 日本コカ・コーラ(株)会長 魚谷雅彦氏


●現在、ブランドヴィジョン代表取締役社長
(右の写真は当日の写真ではなく、WEBからです)
●10:15-11:30


「マーケティングで経営を強くするーマーケティングによる新たな価値創造―」


・Steve Jobs 1976-2011は、マーケティングの天才 


アップル成功の要因


アップルが提供した価値


ユーザー(生活者)にとって「身近」で「パーソナル」


「デザイン」が優れている、魅力的、斬新


「使いやすい」(直感的に操作ができるGraphical Interface)


・ドラッカーの「マーケティング」の紹介


顧客創造


マーケティングとイノベーション、それ以外はコスト


・伝統的マーケティングから経営型マーケティングへ


お客さま起点の経営


顧客を創造、価値を創造


・ブランド価値を創造するコカ・コーラのマーケティングの紹介


コカ・コーラは、世界で最も価値が高いブランド:719億ドル(インターブランド調査)


企業価値=時価総額6兆円


企業価値=マーケティング価値を高める


・コカ・コーラ価値創造の基本概念


ブランド・ビジョン・ミッション


コーポレーションミッション:Refresh the Worldいつでもどこでも誰にでも


3層連動マーケティング:①グローバル、②ナショナル(国)、③ローカル


・消費者とブランドのコミュニケーションネットワーク


自販機98万台


1日5000万人と接触


・独自のフランチャイズモデル:12ボトラーズ


・日本独自のブランド展開


日本でのイノベーションを世界で展開させようとする意気込み


イノベーションを形にする技術とマーケティング


日本コカ・コーラの成長は「イノベーション」から


自販機チャネル開拓、缶コーヒー、ティ、スポーツ飲料導入、PET製品開発


・消費者に対して新たな価値創造、ブランド価値の最大化、ブランド価値からブランドラブ


・グローバルネットワークによるシナジー:情報・アイディアの共有/ ベストプラクティスの共有


・グローバルとローカルの融合:ハイブリッドモデル


日本の消費者インサイト


・マーケティング環境の変化


環境変化とマーケティング


市場環境の変化:フラット化、スピード化、加速化、ボーダレス化、情報化、競争激化


生活者・行動の変化:多様化/パーソナル化、価値の二極化、安心、安全、健康重視、新しいつながり方/関係構築、企業・モノへの信頼低下


・これからのマーケティングに求められるもの


基本の徹底/強化:ブランド価値構築、顧客起点、新たな価値創造、統合マーティング


ブランド価値=基本価値(形、中身、機能、サービス、価格)+情緒価値(イメージ、気持ち、満足感、共感)


コカ・コーラの例:


基本価値:炭酸飲料(フォーミュラ)、おいしさ、コンツアーボトル、赤いロゴマーク(アイコン)


情緒的価値:すかっとさわやか、かっこいい、ユニーク(本物の)、自分の飲み物(共感)


・顧客起点:コカ・コーラの失敗―1985年NEW COKEの発売


Roberto C. Goizueta CEO: ブランドは消費者のもの


顧客起点:旭山動物園の例


「行動展示」を中心とした革新的発想(入園視点)


・マーケティング4Pから5Cへ


製品、価格、プロモーション、流通から、


顧客への提案、顧客のコスト、コミュニケーション、利便性、協働(コラボレーション)へ


ブランド体験をつくる統合マーケティング


統一されたメッセージ=価値の積極的な伝達


全ては主観による


プラスアルファの価値作り:ターゲット(生活者)にとってのベネフィットの進化


機能的ベネフィット⇒情緒的ベネフィット


ハード⇒ソフト


製品⇒サービス


わかりやすさ⇒使いやすさ


「ロイヤルティマーケティング」:NTTドコモ


ロイヤルティの高いお客様を増やす=顧客価値


新規顧客、リピーター、メンバー、パートナー


新規獲得活動/関係深化(サービス・メンバー)活動/継続促進プラグラム


製品開発+SRM:コカ・コーラい・ろ・は・す


ライフスタイル提案型製品


ブランディングと企業文化作り


ブランド価値を中心とした企業文化作り


コーポレートブランド価値の創造


新しいコミュニケーションのあり方


360度マーティング


IMC


デジタル化への取り組み


◆リサーチ、リサーチャーに期待すること:


リサーチ=経営型マーケティングの起点となる重要な役割


・リサーチでなく、Center of Intelligenceとなる


調査でなくインサイト


・リサーチャーは、生活者・消費者のGuardian


消費者起点の徹底


・戦略的な関わりを強化する


マーティングパトナーであれ

『宣伝会議』2011年9月1日号のMROC記事

《第74回》

●宣伝会議に寄稿したMROC記事のもとの原稿です。

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欧米におけるリスニングリサーチ動向


岸川茂 (株)MROCジャパン代表

ソーシャルリスニングの誕生

 マーケティングリサーチ(MR)の分野では、数十年に一度の「変革」が現在進行中である。それを象徴する言葉として、欧米のリサーチャーの間で、次世代(Next Gen)MRとか、ニュー(New)MR、MR2.0といった用語が頻繁に使われている。また欧米のMR関連の会議のテーマでも、例えば、ESOMARの昨年の年次会議のタイトルがODYSSEY 2010 THE CHANGING FACE OF MARKET RESEARCH、今年(9月開催)がCONGRESS 2011 IMPACT - RESEARCH RELOADED、アメリカ・マーケティング協会(AMA)のリサーチ会議(9月開催)AMA Research and Strategy Summit 2011:Driving Research TransformationといったMRの革新が取り上げられている。このMRの変革と、現在世界で普及拡大するソーシャルメディア(SM)の間には大きな関連がある。本稿では、SMの影響によって現在MRにどのような変化が進行しているかについて、欧米のMR動向を紹介する。


 MRは、マーケティング活動のために意思決定を有効にするための消費者理解とリスク低減を行う。一方、SMは、ブランドや商品、企業などについて消費者が会話を行ったり、情報を共有することを可能するオンラインのテクノロジーである。この両者が出会うことによって、消費者理解のための「リスニングリサーチ」という新しい方法が誕生した。次世代MRの中で最も注目されている分野である。


 今年出版され、欧米ではソーシャルリスニングの必読書と評価されているListen First! Turning Social Media Conversations into Business Advantageの著者で、USの権威ある調査研究機関であるARF(Advertising Research Foundation)のKnowledge Solutions Directorであるラパポート氏(Stephen D. Rappaport)は、リスニングリサーチのソリューション(解決手段)として、次の5つを挙げている。すなわち、1)検索エンジン、2)メディアモニタリング、3)テキスト分析、4)プライベイトコミュニティ(エムロックMROCs:Market Research Online Communities)、5)リスニングのプラットフォーム提供ベンダー及びフルサービス提供ベンダー。リスニングの目的に応じて、この中から1つのソリューションを使ったり、或いは複数のソリューションを組み合わせるとしている。 ちなみにARFの「リスニング」の定義は、「自然に起こる会話や行動、シグナルを研究すること」である。それは意図的である場合とそうでない場合があり、それによって人々の生活の声がブランドに届けられる。

ソーシャルリスニングとMROC

  2004年に命名されたブログに代表されるWEB2.0(ソーシャルWEB)によるCGM(消費者生成メディア)或いはUGC(ユーザー生成コンテンツ)といった消費者が作り出すオンライン上の情報の爆発と、FacebookなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の普及拡大などのソーシャルの動向は、「ソーシャル・コンシューマー」を生みだした。


 このような動きに対して、欧米ではSM上の消費者の声を分析する「ソーシャルメディアモニタリング」(SMM)のためのプラットフォームが多くのITベンチャーにより開発され、そのフルサービス提供の企業も数多く出現した。前者では、NetbaseやRadian6が、後者ではConverseonやCymponyなどの企業が有名である。


 さらに、SM上の会話を単にモニタリングするだけでなく、SMのデータにMRの方法論を適用することによって、SMからビジネス上の意思決定に有効な妥当性と信頼性のある情報、いわゆるソーシャルインテリジェンスを収集しようする「ソーシャル(メディア)リサーチ」(SMR)が生れた。「サーベイ(Asking)のないMR」とも呼ばれる。代表的企業として、Research NowやPeanut Labsの親会社であるイギリスの情報企業e-Rewardsに今年の5月に買収されたカナダのConversition Strategiesがある。この買収はSMが消費者インサイトの有力な情報源であり、リスニングの重要性を改めて強調した出来事であった。


 ソーシャルリスニングに対して、クライアントの調査課題を解決するための質問を直接聞けなかったり、課題解決のための会話がSM上で見つからないという批判がある。SM上では消費者の会話をコントロールすることができない。また会話が行われた場合でも、その内容の多くが背後にある深い理由などを含まない「表面的」なものであるという非難もある。さらには、SM上で会話されないブランドや商品の場合は活用することができないといった問題も生じる。


 このソーシャルリスニングの弱点を補うのが、オンライン上で共通の関心を持った人々の集団がSMツールを使って相互作用を行うMROCである。2008年にフォーレスターリサーチのボートナー氏(Brad Bortner)が、Will Web 2.0 Transform Market Research?の中で、この新しいリサーチ手法をMROCと名付け、これまでの定性調査では発見できなかった消費者インサイト創出の可能性を示唆した。MROCは、通常のオンライン上のコミュニティをリサーチ目的に特化し、事前に招待された参加者で構成されたクローズでプライベートなコミュニティである。特定のブランドの情報源となるものである。そこでは、課題解決のために、グルインのような議論や、エスノ、デプス、ダイアリーなどの手法を駆使して、自然な会話のリスニングだけでなく、課題を掘り下げるアスキングも可能である。


 MROCを代表する企業は、今年の2月に、世界最大の広告会社オムニコム・グループに買収されたUSのコミュニスペースである。世界の有力企業に参加者数300-500人規模のオンラインリサーチコミュニティ(インサイトコミュニティ)を1年間以上継続して運営するビジネスモデルを展開している。成功事例数や、売上金額、運営コミュニティ数、社員数からいってもMROC#1企業である。

相互補完関係のソーシャルリスニングとMROC,既存の伝統的調査方法

 完璧な調査手法というものは存在しない。それぞれ長所と短所を持っている。調査課題(目的)に応じて、調査予算とタイミングを考慮して、最適なものを1つ選択するか、複数の手法を組み合わせてそれぞれの弱点を補う必要がある。前述のようにソーシャルリスニングとMROCは相互補完関係にある。


 昨年のESOMARのオンライン会議のBest Paperに選ばれたベルギーのInsites ConsultingのSynergizing natural and research communities Towards a perfect synergy between listening into conversations on natural, and on research communitiesは、Facebookのようなオープンでナチュラルなより規模の大きいオンラインコミュニティと、MROCとの相乗効果によるインサイトの創出を提唱している。また、MROCで発見されたインサイトが一般化できるかどうかを探る上で、他のSMのリスニングによる検証も必要である。


 さらにソーシャルリスニングやMROCは、既存の伝統的調査方法を否定するものではない。それらは、調査課題解決あるいはインサイト創出において、サーベイやグルインなどの既存の伝統的な調査と、相互補完的な存在である。


 これからの調査では、複雑な課題に有効に対応するために、例えば既存のグルインに、ソーシャルリスニングの分析を付加したり、MROCとソーシャルリスニングを組み合わせたりなどの複合調査(ハイブリッド調査)の重要性が指摘されている。SMRの第1人者であるConversition Strategiesの ペティ氏(Annie Pettit)は、USの有名なMR季刊誌であるQuirk’s Marketing Research ReviewがSocial Media Researchを特集した8月号の中で、ソーシャルリスニングが、サーベイにおける調査票の作成―例えば有効な選択肢を特定するなど、伝統的調査方法を補充するためのSMRの積極的な活用を推奨している。また最近では、WPPのMillward Brownと、Kantar Media Cymfonyが共同で、継続的に実施されているブランドトラッキング調査に、ソーシャルリスニングからえたインサイトを活用する方法のサービスの開始を発表している。顧客ロイヤルティ調査にリスニングによる顧客経験の統合課題も同様である。


 今後ますますこのようなリスニングと、従来の方法の統合が進化することが期待されている。これは本稿では説明できなかったけれども、リスニング・リサーチ登場のもう1つの背景であるMRのビジネス上における有効性の低下、とりわけサーベイに対する疑問を改善する上においても有効な方法である。リスニングリサーチを通して、もっと消費者の声を聞き、生活者の声をマーケティング戦略の中心に置くことによって、リサーチがビジネス成長に貢献することが強く期待されている。
 
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JMRAマーケティング・リサーチャーのMROC記事

《第73回》

●マーケティング・リサーチャーNo.115号46頁(2011年8月31日発行)にMROCについて寄稿しました。

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ちょっと教えて: MROCって何?    MROCジャパン代表 岸川茂


MROC(エムロック)については、「いまさら聞きにくい」リサーチのテーマというよりは、リサーチャーが、これからどんどん聞かなければいけない、探究しなければいけないリーサーチ・テーマの1つです。MROCは、2011年3月に出版されたマクロミル総合研究所所長の萩原雅之氏のタイムリーな好著『次世代マーケティングリサーチ』で多くの頁をさいて紹介されたことにより、日本の多くのリサーチャーやマーケターの間に急速に広まった次世代MRの中で最も有望なリサーチ・ツール=次世代MRプラットフォームです。


MROCとは、マーケティング(或いはマーケット)・リサーチ・オンライン・コミュニティMarketing (Market) Research Online Communityの略です。オンライン・リサーチ・コミュニティ(Online Research Community)とも呼ばれます。また、インサイト・コミュニティやイノベーション・コミュニティと呼ぶ企業もあります。


MROCは、販売促進やブランドや企業へのロイヤルティ醸成を目的としたマーケティング・コミュニティではなく、マーケティング・リサーチを目的として作られた「リサーチ専用のコミュニティ」です。アクショナブルな有効な消費者(生活者)インサイトの創出が期待されています。


USの情報サービス企業フォレスター社のリサーチャーであるブラッド・ボートナー氏が、2008年4月に「Web 2.0はマーケティング・リサーチを変革するだろうか?」という記事の中で、「MROCは、従来の定性リサーチの世界に衝撃を与えた。なぜならMROCは、安くて、早くて、かつグルインなどの伝統的な定性リサーチの手法が現在提供できていない新しいタイプのインサイトを創出することができるからである」と述べ、その数年前から表れていた定性調査の新しい動向をMROCと名づけました。


このようにMROC登場の背景には、Web2.0と呼ばれるITの発展によるブログなどのCGM(消費者生成メディア)やTwitterやFacebookなどのSNS(ソーシャルネットワークサービス)の拡大普及があります。「ソーシャルメディア時代における新しい消費者理解の方法」として、調査のアスキングからリスニングへの移行にともなう「ソーシャル・リスニング」とともに、プライベート・コミュニティであるMROC上の消費者の声をリスニングすることの「消費者インサイトを創出する上での価値」が高く評価されてきています。


MROCは、グループ・インタビュー(欧米ではFocus Groups)のオンライン版である掲示板グルイン(Bulletin Board Focus Groups)ではありません。調査の単位が、単にデモグラフィック属性や購入商品が共通の人々からなる「グループ」ではなく、共通のテーマに高い関心を持つ参加メンバーが、コミュニティに絆(エンゲージメント)を感じ、メンバー間に相互作用が生れる「コミュニティ」である点が、MROC成功のポイントの第1番目です。それゆえに、MROCの成否にとって、コミュニティ・メンバーの選択が非常に重要です。


近い将来、MROCが、「いまさら聞きにくい」調査テーマになるように、企業の意思決定をサポートするリサーチ・ミックスの中に定番化されることを祈りたいと思います。MROCについては、ここで説明した以外の「その他のMROC成功ポイント」や「MROCに向いているリサーチ課題」など言及しなければいけない項目がいろいろとありますが、この続きは筆者のブログ「みんなのMR.COM」で!


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2011年11月28日月曜日

第19回JMRX勉強会報告

《第72回》

●10月17日(月)に、「ESOMAR Congress 2011 in Amsterdamレポート」と題して、株式会社トークアイ 専務取締役佐野良太氏に、ご講演いただきました。http://kokucheese.com/event/index/18944/

会場を提供していただきました(株)ビデオリサーチに感謝申し上げます。

●会議のメイントピックであった「行動経済学」や、「ゲーミフィケーション」についてお話いただきました。

●ESOMAR会議については、
http://www.esomar.org/events-and-awards/events/global-and-regional/events2011/congress-2011/2_congress-2011.overview.php

●講演資料:
●Twitter http://togetter.com/li/201929

第18回JMRX勉強会報告

《第71回》

●9月24日(土)、「プレゼンストラテジー リサーチへの応用」と題して、平野幸司氏(株式会社idealShip取締役)から講演していただきました。ご協力ありがとうございました。
http://kokucheese.com/event/index/17436/

●講演資料:
Jmrx資料20110924
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