2010年9月27日月曜日

ソーシャルネット時代の定性リサーチャー




《第35回》


今週のTOPICS


ツイッチャーの会の9月勉強会(第5回目)開催予定


今週9月29日(水)に渋谷で、


喜山荘一さん

(ぐるなび、元ドウハウス)をゲストにお迎えして、

「ソーシャルネット時代の定性リサーチャー」と題して、

1.変わる消費者行動、2.変わるリサーチ環境、3.ソーシャルネット時代の定性リサーチの可能性についてお話していただきます。


喜山荘一さんは、1963年、与論島生まれ。 東京工業大学経営工学科卒業後、株式会社西武百貨店入社。 1995年、株式会社ドゥ・ハウス入社。同社の常務取締役を経て、現在、株式会社ぐるなび総合政策室勤務。

●ツイッター・アカウント: @soichi_manyu

●ぐるなびのツイッター・アカウント:@gnavi_tweet   @gnavi_univ

●ご自身のブログ 与論島クオリア  


著者は多数。



 




●喜山さんの講演のあと、私の方から、グローバルで現在進行しています「デジタル時代の定性調査の新動向」についてもご紹介致します。

また、グローバルの定性リサーチャーの会

①QRCA:Qualitative Research Consultants Association http://www.qrca.org/や、

②GOMC:Global Online Moderator Community http://www.moderatorcommunity.com/

③QRWEB(Qualitative Research in Web 2.0)や、

LinkedInの中での定性リサーチャーのディスカッション・グループである

QRCA Qualitative Research Discussion

Online Qualitative Research: The Next Evolution

Qualitative Marketing Researchers and Professors


日本の定性リサーチャーの会「クオリの会」

もあわせてご紹介致します。


特に、定性リサーチャーの多くの方のご参加をお待ちしております。

参加申し込みはこちら。(無料)

勉強会終了後は、通例の「懇親会」もありますので、喜山さんとの歓談を楽しみにしております。



今週のHOSMR

Ray Poynter, ’The Handbook of Online and Social Media Research: Tools and Techniques for Market Researchers’の内容紹介メモ(著作権の侵害をしないように、独断と偏見によるポイントの要約)の第5回目です。

今回は、パートII 第7章の「オンライン・フォーカス・グループス」です。


7章 オンライン・フォーカス・グループ




・オンライン・フォーカス・グループ OLFGsあるいはOFGs(以下OLFG)



⇔伝統的なF2Fフォーカス・グループス(インパーソン・グループ)(以下IG)



・本章は、



①OLFG入門:特徴とIGとの違い

②OLFGの実施:準備とモデレータの役割

③OLGFソリューションの選択: 注意点

④OLFGを巡る賛否両論

⑤OLFGのリソース

⑥OLFGのまとめ



1 OLFG入門



1.1 モード



・参加者や、観察者、モデレータ、管理者モード



1.2 ディスカッション・ガイド



・ディスカッション・ガイドの提示



1.3 マルチメディア



・イメージやビデオの提示



1.4 参加者の対応



・参加者に事前に質問やメッセージ、リマインダーの送付や、

不適切な参加者の排除

発言の削除



1.5 マルティプル・ルーム



・対象者を分類するルーム機能、例えば男女別。



1.6 投票機能(Polling)






1.7 ウエブカメラ(Webcams)



・ウエブカメラによるビデオの視聴



1.8 マネジメント・インフォメーション・システムズ(IMS)



・参加者の参加・発言状況をモニター



1.9 分析オプション



・発言録(バーベイタム)や、タグ・クラウド、図など



2.OLFGの実施



・IGにもベスト方法について合意がないように、OLFGにも同様に存在しない。



2.1 手法の選択



・表7.1 ・オンラインの方が好ましいもの:事実のリストアップ

      ・オフラインの方が好ましいもの:2人での作業、図や製品の分類

      ・同じ            :言語連想、アイディア出し

      ・オンライン用に改善が必要なもの:ブレインストーミング、画像解釈



2.2 注意点



・すべての人が発言しているかどうかに注意

発言を記入している時は、提示物を見たり、他の人の発言を聞かない時があるので注意

発言を記入している間に、関心のある議論が先に進行して行く点に注意

発言は同時進行ではない点に注意



2.3 参加人数:少数の参加者



・オフラインよりも少数の参加者

・ある人は1グループ、4-6人を推奨。他の人は、6-8人や3-5人。

・ItrackのDoug Batesは、8-10人推奨。



2.4 セッション時間:短い



・オフラインよりも短い時間。

・OLFGは効率的。長時間の拘束が難しい。家庭ではいろいろな「邪魔」が入る可能性。

・標準時間は90分



2.5 2人モデレータ制



・1人はディスカッション・ガイドに集中。他の1人は、参加者やクライアント、その他の質問に集中する。



2.6 参加者の選択



2.7 言葉



・スラングは使用しない。



2.8 参加者のモニター



3. ソリューションの選択



3.1 専用ツールを使うかどうか



・Itracks社などの既存のパッケージ・サービスの使用-高価



・チャット・ソフトウエアやウエッブ・ミーティングサービスの利用-安い



・安価なチャット・ソフトウエアの使用は、クライアントと参加者のプライバシー問題が生じる可能性がある。



3.2 レンタルか購入か



3.3 操作の簡便さと、ツール(機能)の威力



・必ずしもトレードオフの関係ではない。



3.4 レポーティング



3.5 他のツールとの統合



・パネルや、顧客データベース、オンライン・コミュニティとのデータの連結



3.6 マルティメディア・ツールの利用



3.7 使用言語



3.8 費用



・トレーニング費用、IT費用、ソフトウエア費用、使用料など



4.OLFGを巡る賛否両論



OLFGが、定量のオンライン・パネル(安さが売り)のように成長しなかったのか。



4.1 費用



・費用節約の要素は、地理的条件-国土の広いUSではOLFGによって、旅行費用が節約できる



・一方、OLFGの2人モデレータや、少人数グループはコストアップにつながる



・さらに参加者のリクルートをオンライパネルから行わない場合さらにコストアップ



4.2 品質 

 

・OLFGの品質への不満・不安が大きい。特にOLFGの未経験者には。



・OLFGの問題点

①参加者の「相互作用」を生むことが難しい

②グルインのもつ重要な特徴である「ノンバーバル」な要素(表情など)を失う



・OLFGの利点

①セッション終了後に発言録を見ることができる

②広い地域のいろんな人々の意見を同時に聞ける



・OLFGと通常のグルインとの比較研究では、ビジネス上の提言の部分では同じであった。



・しかし、現状では、定性調査のバイヤー、プロバイダーの双方とも、OLFGよりも、通常のグルインの方を好んでいる。



4.3 著者見解



4.3.1 クライアント側の状況



・OLFGの利点

①オフィスや自宅から実施可能

②セッション中にモデレータにメッセージを送ることが可能



・しかし、それ以上に、クライアントとリサーチャーが時間と場所を共有して、プロジェクトについて直接議論ができる点をクライアントは重視。



4.3.2 ITの利用



・定性リサーチャーのIT利用への抵抗



4.3.3 リーチの問題



・OLFGの利点-地域的広がり



・グルインでは地域的広がりによる対象者の「代表性」アップは評価されない



4.3.4 スピード



・オンライン・パネルやオンライン・コミュニティからリクルートしない場合は、スピードでの利点はない



4.4 OLFGを巡る議論のまとめ



4.4.1 反対派



・OLFG反対意見

①グループダイナミクスが出せない-通常のグルインは同じテーブルでの議論

②インサイトの深さがない-モデレータが対象者との直接接触ではないので、深いインサイトが引き出せない

③ノンバーバル情報がない-モデレータがインサイトをさぐる重要な手がかりであるノンバーバルがない。さらに、対象者の表情やボディランゲージは、調査の質(対象者の調査への関与度などー直接顔が見えることの重要性)をも表す。

④タイプ・スキルに依存-回答が対象者の入力スキルのレベルに影響される

⑤刺激物呈示の限界-味、接触、匂いを嗅ぐなどができない



4.4.2 賛成派



・OLFG賛成意見

①より正直な意見-特にセンシティブな内容について

②影響度の低い回答-他の参加者の意見の影響を受けない

③より効率的-参加者はより直接的に回答。モデレータもより直接的にプローブが可能

④より代表性がある-接触しづらい人や、広い範囲の人のリクルートが可能

⑤グループのコントロールが容易-進行を妨げる人や発言力の強い人のコントロールが可能

⑥簡便で安い-早くて安い



4.5 研究結果 



C.Chengら(2009)のOLFGとIGとの比較研究によると、



①参加の平等性や意見の開示(匿名で他の参加者の影響を受けないのでより正直に自分の意見が言える)の点では、OLGFが優れている、

②OLFGは情報量では劣る。なぜなら、偶発的な会話や事例などの会話の発展性がないゆえ、

③結果の品質については、どちらが優れているかは結論できなかった、

④インサイトの発見は、オンラインvs.オフラインよりも、モデレータのスキルに負うところが大きい。



7.5.OLFGのリソース



・OLFGサービスの提供企業の紹介



Itracks

Artafact

ChannelM2

QualMeetingなど



7.6.OLFGのまとめ



・定性のオンラインリサーチは、同時性のOLFG(通常のグルインと変わらないあるいは劣るという認識から、通常のグルインではつかめない点を発見できるだろうという理由で)から、非同時性の次章で説明するBBFGや11章のMROCの方向に焦点が移行してきている。





週刊リサーチ・ブロゴスフィア


Weekly Research Blogosphere


*1週間の世界中のリサーチ関連の主なブログ・テーマを簡便に
レビューすることができる「週刊リサーチ・ブロゴスフィア」です。
興味をもたれたブログの詳細は、リンク参照。

⇒は投稿に対する個人的コメントです。

◆先週(9月19日-9月25日)の1週間分の世界のリサーチ・ブロゴスフィア

今回は、23ブログの24投稿をレビュー


《海外編》


*今回からBlackbeard Blogは削除しました。


1.Jeffrey Henning 's Vovici

初めて1週間お休み。


2.Joel Rubinson on Marketing Research

お休み

3.Rearch Rockstar

1.Build A Virtual Market Research Department in 30 Days (9/23)

・クライアントの社内にバーチャルのMR部を作ることのすすめ。


4.Tom H. C. Anderson - Next Gen Market Research

2.Text Analytics Guru Interview (9/20)

・テキスト・アナリティクスのグルであるSeth Grimesとのインタビュー。


5.The Future Place Blog

3.Great Festival opportunity for students and junior researchers (9/21)

・12月6日ー10日に開かれるFestival of NewMRPoster competitionについて。

4.Jon Krosnick’s page – a key resource for all market researchers (9/22)

・スタンフォード大学のJon Krosnick教授のサイトが、リサーチャーにとってのキーソースの1つであるとの指摘。

⇒確かに調査関連の多くの研究テーマや文献が掲載されています(英語)。時間を見つけて読んでゆきたいと思います。これはおすすめです。

この投稿の中に、先日JMRAで講演されたミシガン大学のMick P. Couper教授の名前もでていました。このサイトも参考になります。

5.Thank you Nottinghamshire NHS (9/23)

Ray氏が体調を崩してイベントをキャンセルしたとのこと。

⇒早速、ツイッターでお見舞いのDMを送っておきました。


6.Random Sampling

お休み

7.Straight Talk with Nigel Hollis

6.The definition of brand equity (9/20)


・ブランド・エクイティの定義考。


8.LoveStats


・ソーシャル・メディア時代にふさわしいユニークなブランド名をもつべき。

9.The Survey Geek 

お休み

10.Insites Blog

8.Better than reality (9/20)

・バーチャルの情報と現実世界の情報を重ね合わせるAugmented Reality(拡張現実、AR)について。

Join the big social media research debate (9/20)

・ソーシャル・メディア・リサーチの妥当性をめぐる議論


10Get hijacked by your consumers now! (9/23)


・ESOMARの年次会議で発表されたイギリスのコーラのコミュニティ・スタディの紹介。

10代後半のコーラなどの炭酸飲料の消費量減少の課題解決のための調査プロジェクト。



11.The Researcher's Perspective

11.Flavor – So What? The Impact of Sensory Evaluation in Product Development (9/21)


・MRにおけるセンサリー・リサーチの活用について。


12.Future of Insight

お休み

13.Voices of CMB

12.The Dangers of Relying On A Single Market Research Question (9/22)

・「1つの質問」の回答結果で、ビジネス上の意思決定を行うことのリスクについて。

⇒1つの現象について、多方面から聞くことの重要性。シングル指標ではなく、多重指標の必要性。一方で、質問の簡潔性は求められるけれども。また、質問の聞き方によっても回答分布が変わってくる可能性も示唆。
13.Consumer Insights Show Consumer Uncertainty on Health Reform(9/24)

・CMBのPulse Study結果から。Health Reformの影響について。
 
14.Consumer Spending This Holiday Season- Shop Early, Shop Often (9/24)

・10月5日に行われるCMBのwebinarの予告


14.The Forrester Blog



Forrester's European Technographics® Benchmark Surveyから。


annual State Of Consumers And Technology: Benchmark Data Overview report より。

年齢区分:Gen Y(18-30歳), Gen X(31-44), Younger Boomers(45-54), Older Boomers(55-65), and Seniors(66歳以上).



Mobile Technographics®から。



《国内編》



15.MARKETING RE-SEARCH BLOG

お休み

16.Marketing Research Watch

お休み

17.マーケティング・リサーチの寺子屋

お休み

18.tanoue40's Blog

お休み

19.アウラなブログ

お休み

20.マーケティング・リサーチャーの生態

お休み

21.いまんとこの最適解


18.聞き方の技術―リサーチのための調査票作成ガイド― (9/19)

聞き方の技術―リサーチのための調査票作成ガイド― の書評。

「『尺度を合成すると誤差が相殺される』という記載がありましたが、ここは理解できませんでした。私の理解では誤差は累積する・・・と思うのですが。。。」

⇒本屋で最初に見た時は、「調査表作成で1冊の本を書く大学の先生」という印象。またそれを出版する出版社もあるのかと(日本経済新聞出版社)。


19.課題解決! マーケティング・リサーチ入門 (9/20)

課題解決! マーケティング・リサーチ入門の書評。

「疑似体験をしながら、リサーチャーとしての幅を広げるのによい本だと思います。」

20.JMRAトピックスセミナー:サマリ (9/21)

・9月21日行われたJMRAセミナー紹介。

「2003年以降、米国・ヨーロッパではアクセスパネル市場が急成長。現在は衰退期にある。(Japanはまだ衰退期ではないだろう)」


21.JMRAセミナーの感想 (9/22)

・「これからのリサーチ」についても語られていました。ソーシャルメディアを用いたリサーチ、MROCSなど。Couper教授にもまだまだ未知数のようでした。(なので『一緒に考えていきましょう』という発言が多くみられました)ここは我々も試行錯誤しながら、検討していく必要があるということでしょうね。」

⇒欧米リサーチの実務世界の良い点の1つは、研究者より先に進んでいる点があること。

22.モバイル空間統計 (9/23)

基地局データから“これまでにない”人口統計データを――ドコモの「モバイル空間統計」


22.みんなのMR.COM

23.リサーチ・スキルって、何だろう? (9/21)


23.Digital Consumer Planner's Blog

24.ブランド・リスニング(傾聴)の事例の紹介 (1)  (9/24)


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《このBlogは毎週月曜日中に更新されます。月曜日がお休みの時は火曜日中です。また臨時に更新されることがあります》

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