2010年4月5日月曜日

リサーチは変われるか?

●桜満開の春です。(株)エクスピリッジのロゴは桜です。

●まず、訂正から。。。

前回のBlogで「2020年のリサーチ?」と題して、「2020年にはサーベイ・リサーチがなくなる」というRay PoynterとJeffrey Henningの議論を紹介しました。

これに対して、5,000人以上のリサーチャー・コミュニィティを率いる@SURVEYMLさんが、メールで、

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Subject: [surveyml:12482] サーベイ20年消滅説


Date: Tue, 30 Mar 2010 00:17:06 +0900 (JST)

From: 萩原 雅之 masashi.hagihara@gmail.com

Reply-To: surveyml@freeml.com

To: surveyml@freeml.com

萩原@TCI/MNRIです

昨日のツイートサマリーの前振りに書いた

個人的には、先週行われた Marketing Research Society のコンファレンス

で飛び出した「サーベイ20年消滅説」について、海外のリサーチャーの間で

議論がされていたのが興味を惹きました。

英語のブログなのでもやもやしてた方も多いと思いますが、エクスピリッジ

の岸川茂さんが、海外でのブログやツイッターでの経緯や議論を

◆2020年のリサーチ? (みんなのMR.COM)

http://www.minnanomr.com/2010/03/blog-post_29.html

http://www.minnanomr.com/

でまとめていらっしゃいます。

岸川さんは『図解入門ビジネス最新マーケテティング・リサーチがよーくわ


かる本』というご著書があり、海外の動向も詳しいようなので今後とも日

本の事情も踏まえた海外の情報提供をぜひお願いしたいです。

今気づいたのですが、20年で無くなるのだから2030年ですね>岸川さん(笑

なお、この Marketing Research Society については、岸川さんのブログに

も出てくるリサーチ業界の有名ブロガー Jeffrey Henning 氏が、

◆The New New, Old New & Old Old at Research 2010

http://blog.vovici.com/blog/bid!

/26939/The-New-New-Old-New-Old-Old-at-Research-2010

というエントリーにまとめています。変わったタイトルですがマーケティン

グリサーチ業界の将来に関して最新のオーバービューになっていますし、関

連リンクも多数紹介されていました。

萩原 雅之 masashi.hagihara@gmail.com

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トランスコスモス株式会社エグゼクティブリサーチャー

マクロミルネットリサーチ総合研究所所長

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*このメールは、@shigeru_ONOさんから提供していただきました。
 
** @SURVEYMLさんの影響力は絶大で、先週1週間のBlog延べ閲覧数は

400近くになっています。 400人の方が読んでいただきありがとうございます。

いつも書きたてですので、文章的にも、内容的にも十分遂行されていませんので恐縮です。
 
 
 
●つまり2020年ではなく、2030年にサーベイがなくなるというわけです。
 
●10年延びても、やはりサーベイはこの世から(Rayの主張を厳密に言えば、
マーケティング・リサーチから)消滅することはないと思います。

関係各位の方、ご安心を。。。
 
●消滅説では、マーケターの意思決定のためのデータから、サーベイ・データがなくなる
ということを意味します。
 
例えば、U&Aのデータや、ブランド・トラッキングデータ、その他購入・使用の実態調査データ
(これらのデータは「代表性」が求められる)によって、マーケターは日々意思決定を行っています。
 
また、製品開発関連の調査(コンセプト・テストやプロダクト・テストなど)も、調査票を使って
消費者に尋ねるという意味でサーベイ・データになります。

新製品をどれにするか、改良品候補の中からどれを選ぶか、
またデザイン会社が作成したパッケージ案からどれを最終案にするかなどなど、

「選択」の意思決定のためのサーベイ・データは最も多く収集されています。
 
これらを「インターネット」を使って、つまり「オンライン・パネル」を使って行っている場合も、
データ収集方法は異なりますが、やはりサーベイです。
 
もし2030年にサーベイが、マーケティングの意思決定のためのデータから消滅すると、
現在、主流の「インターネット調査会社」はどうなるでしょうか???
 
レイは、「アクセス・パネル」(或いは、コンビニエンス・サンプル)ー事前にプールされた対象者であり、調査を行う場合、まさに便利な存在ですーと呼んで、消滅するサーベイには含んでいません。

代表性やフレッシュ・サンプルを重視するサーベイ・サンプリング法と長い調査票を使う
調査がマーケティング・リサーチでは使われなくなると言っています。

 
●人々の意見や態度・行動を100人以上の規模で、ある程度短期間で、

リーズナブルなコストで、共通な方法で収集(測定)できる手段(データ収集方法)として、

「サーベイ」が確立して以降、サーベイにとって代わる方法は

発明されていません。グルインもデプスも、ニューロも、実験も観察も

置き換わることができていません。

サーベイでは、人間の感情の強さを正確に測定できないといって、
脳波や脈拍を測定しても、やはりサーベイに置き換わることができませんでした。


●意思決定を行う場合、組織のトップを説得する上で、データ(結果)の「信頼性」が問われます。

つまりサンプルの代表性=結果の一般化がこれまでは強く求められてきました。

●N数の少ない定性的データは、仮説作り(売れるためのストーリー作り)には適しています。

レイが言う、調査の今後の方向性としての自由回答式の調査や、ソーシャル・メディア・データ、
オンライン・コミュニティのデータなどがこれに当てはまります。

●他方、最終意思決定のためには、結果の一般化が保証されているサーベイ結果が必要です。

しかし、今後の考え方として、速さや低コストゆえに、定性データに基づいた仮説により
意思決定を行い、素早く軌道修正を繰り返す(仮説⇒検証⇒仮説⇒・・・)ことがあります。

また、同時に消費生活が非常に多様化した現在、平均値的な「一般化」の意味も
問い直されています。

市場の「多数派」を見つけ、その最適製品を開発・販売してゆく考え方が

機能しなくなっている面もあります。

少数派やニッチに向けての製品がヒットを生む場合もあります。

N=1の意見も、貴重なインサイトの発見につながる場合もあるわけです。

この意味でも、従来の伝統的なデモグラ属性や心理的特徴などによる

消費者セグメントの分析手法の限界、その有効性が問われています。

分析発見したセグメントが実際の市場では存在しない、あるいは特定できない場合も
起こっています。 
 
ペルソナ手法によるユーザー像の分析の方がより実際的な場合も起こっています。

●ところで、2030年と言えば、これから20年後です。

逆に考えれば、今から20年前は、ちょうど私がマーティング・リサーチャーのキャリアを
スタートした時期です。

あの時点では、インターネットは影も形もありませんでしたので、あの当時、

レイ流に言えば、「20年後には訪問面接調査がなくなる」(インターネット調査が主流に)
となったのでしょうか。
 
その後、広告代理店、メーカーで働き、その後およそ15年ぶりに古巣のリサーチ業界に
戻ってきました。
 
データ収集や、集計処理、グラフ作成、報告書などの書類作成などは、
パソコンとソフトの進化により、調査会社の作業は変わりましたが、
基本的には、企画ー実査ー集計ー報告書の作業の流れはほぼ同じでした。
 
また残業の多さ、退職者や、肉体的・精神的病気になる人の存在といった
労働集約的業界体質や、
 
メーカーのリサーチャーと比較して、同じ年齢で100万から200万の年収差や、
福利厚生といった待遇面(これは大手と中小零細といった会社によって状況が異なるでしょうが、
平均値的に考えた場合)
 
さらに、マーケティング意思決定への関与度(あるいはインパクト)の低さは感じます。
 
私がメーカーに在籍していた時は、調査会社は平等なパートナーとして、
その有効活用を心がけました。  モチベーションを上げるためにも、できる限り、
企業側のマーケティング情報の共有と、調査結果のフィードバックを行いました。

逆の立場になると、その対応はクライアントによってさまざまです。

●マーケティング関係業界において、「調査」のビジネスにおける有効性を高め、
そこで働く人々が、自己実現と自己成長、社会貢献(人々の生活の充実)を目指して、
平均以上の待遇で、誇りとやりがいをもって働ける、自由で楽しい会社になるように、
リサーチャーの方々のスキルアップにこれまでの経験が少しでもお役に立てればと思っています。

●少しでも良くするために、調査、リサーチャー、調査会社の現状を以下のような点で
評価すると。。。以下、思いつくままにリストアップしました。。。

皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

良い点(もっと伸ばす点): (少なくてすいません) 

①リサーチを実践的に学べる、
②・・・

現状はそうではないけれども、今後新たにこうしていった方が良いと思われる点:

①もっと議論や勉強会があればよい、
②リサーチについてのブログももっと多くあってもよい、
③・・・

中止すべき良くない点:

①・・・

改善すべき(良くない)点:

①会社、リサーチャーによって質・レベルがバラバラー個人的な仕事スタイル、
② 残業が多い、
③待遇がよくない?、
④研修・教育体制が不十分、特にマーケティング教育、
⑤転職者が多い?、
⑥作業の合理化が進んでいない、
⑦マーケティング活動の現場との距離感がある、
⑧一人前のリサーチャーになるのにようする期間をもっと短縮できないか、
⑨リサーチャーのキャリアプランがもっと明確にならないか、
⑩リサーチャーの課題解決能力や調査スキルをさらにアップさせる方法がもっと明確にならないか
⑪1つのプロジエクトが終了したならば、そのレビューを徹底させる(次に生かす)
⑫速さ、コスト
⑬レポート作成の時間
⑭もっとリサーチをやることがエキサイティングに感じるようにするには?
⑮調査結果について、もっと社内で議論する機会が増えれば。或いは調査方法や結果の社内共有。ークライアントに報告する前に社内で結果のプレゼン・議論を行っている会社はどれくらいあるでしょうか?
⑯業界や製品カテゴリーの専門分野を持っているリサーチャー(メーカーのリサーチャーレベル)はどれくらいいるでしょうか?
⑰好奇心や向上心が高い若い優秀なリサーチャーのリクルートと、彼らが辞めてゆかないようにするには?
⑱グローバル化、海外交流
⑲・・・

コメント欄や、Twitterを使ってご意見をお願い致します。

これについて、ツイッチャーTwittcherの会でブレーンストーミングでもやってみたいです。


●しばしば紹介しています前の会社の同僚で、現在ARFのCROであるJoel Rubinsonが、

最近のブログでFifteen issues Marketing was not discussing 15 years agoと題して、

先々週のAFRの会議と関連付けて、20年ではなく、現在と15年前とを比較しています。

マーケティングにおいて、15年前にはなく、現在話題になっているものとして、

①モバイル
②トップボックスのデータ
③ソーシャル・メディア
④消費者よりも「人間」を対象に考えた方が画期的なアイディアが生まれる

これは、コカコーラのStan Stanunathanの意見で、when you focus on consumers you get incremental ideas. When you focus on humans you get breakthroughs.

⑤リスニング
⑥インサイト
⑦ストリーテリング
⑧潜在意識
⑨ショッパー
⑩ロングテール
⑪インターネット調査の品質
⑫We リサーチ(人間間の相互作用の意思決定への影響を考慮する)
⑬オンラインやモバイル・ビデオ
⑭多文化
⑮人々の生活スタイルを変えたもの:Google, Facebook, Twitter, My Space, LinkedIn, Flickr, Apple iTunes/iPhone/iPad/stores, Hulu, Youtube, Foursquare, Huffington Post, Techcrunch, Zappos, Fox News, Skype, Wikipedia, Firefox, DirecTV, Tivo, XM radio, NetFlix, Pandoraなどをあげています

そのあとに続くビデオもUSの有力なリサーチャーなどが登場しておもしろい内容です。

これらの新しい動向にもリサーチは進化対応する必要があります。

リサーチが変わるには、リサーチャーも変わる必要があります。より責任が重くなります。

株主から、「御社のリサーチャーは、ビジネス成長、売上・利益増加にどれだけ貢献しているのか」と、いつ尋ねられてもよい状態にしておく必要があります。。。

JoelのSix marketing research wake-up calls in 2009も参照。


●メーカーのリサーチ部門で、現在行われている

①配荷や販売などの流通データや、世帯での購入・使用などの消費者データなどの時系列のシンジケート・データの分析と、

②定性・定量のアドホクの消費者調査データの分析、

③生活や消費・社会動向などのトレンド・データの分析に加えて、

④ソーシャル・メディアを利用したリスニング・データの分析も

今後は重要な課題になってくると思われます。


①は消費生活の多様化により、実態を把握しきれなくなっています。

すべての購入・使用が、家庭だけで起こりません。

90年代初めからの、「個食」や「中食」の傾向などがそうです。

また、流通業態の多様化も、主要なチャネルのトラッキングだけでは、販売の実態をとらえることができなくなっています。特にネットによる販売など。

②については、レイが指摘したように、サーベイは消滅はしないでしょうが、確実に減少してゆくでしょう。

④の動向によって、インサイト発見のためには、定量よりも定性調査の重要性が増加するでしょう。それもオンラインの活用がより盛んになって行きます。


●リサーチの変革については、2月1日及び8日のブログもご参照下さい。

●昨年のESOMARの出席者に、10年後の2019年のリサーチが、

どのようになっていると思うかのインタビューも参照。

Market Research 2019 and Fresh talent 上記のRay Poynterも登場しています。

interviews with industry thought leaders to discuss the future of Market Research( their vision on research in the year 2019)and attracting talent to our industry.



*********************************
 
●最後に、上記と関連するものとして、ド゙ウ・ハウスさんが、
先週おもしろい調査をされていましたのでご紹介します。
 
ビジネスマンが見るマーケティングリサーチ業界のイメージ調査
 
-マーケティングリサーチ業界のイメージとしては、「成長性がある」「IT技術力が高い」
「コンサルティング能力が高い」等が割合として高くなっている。


-マーケティングリサーチ業界はネットリサーチで身近な業界に。
消費者と企業をつなげる役割としてイメージされている。


●調査方法:インターネットリサーチ調査対象:全国20~59歳のフルタイム勤務の男女(myアンケートモニター)調査時期:2010年3月29日~2010年3月30日 有効回答数:3,333サンプル


調査項目:・マーケティングリサーチ業界 23社の認知

・マーケティングリサーチ業界に対するイメージ(FA)

・マーケティングリサーチ業界及びそこでの従業員に対するイメージ(SD法)

調査会社: myアンケート(株式会社ドゥ・ハウス)
 
●ただ残念なのが、一般のビジネスパーソンに聞いているので、調査会社に対する
企業イメージ回答の多くが、40項目あるうち、2-3を除けば「どちらとも言えない」と
回答した人の割合が50%前後(最大で76%)と多くなっています。

つまり、あまりクリアなイメージを持っていないと言えます。これは予想できたことでしょう。
 
●さらに、対象者の多くは、インターネット調査への参加経験に基づいて回答しているようです。

現に、マクロミル(認知率77%)や楽天リサーチ(69%)の企業認知が高くなっています。
 
●調査会社の認知者だけや、あるいは調査参加経験者に絞ってみると、
よりクリアなイメージが出るかもしれません。。。
 
●個人的には、調査では、BtoBの取引が多いので、一般消費者よりも、
企業のマーケティング関係者の調査会社へのイメージ・評価も知りたいところです。。。
 
●ここでも、調査のOTQ(調査目的Objectiveに応じて、対象者ー誰にTarget、何を尋ねるかQuestion)のポイントが重要になってきます。
 
★姉妹ブログDigital Consumer Planner's Blogもよろしくお願い致します。


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