≪第112回≫
●2012年11月29日(木)JMRA Annual Conference 2012の「パネルデイスカッション①MROCの既知と未知」にJMRAからご招待いただきました。
セッションの資料や参加者などの詳細は、JMRAから後日HPにアップされる報告をご覧ください。
●パネルディスカッションでは、MROCCの現状と将来について、次の4つの観点からディスカッションが行われました。
①なぜMROCなのか
②どうMROCは使えるのか
③MROCの運用と課題
④MROCのこれから
●まず、①なぜMROCなのか
・MROCが出てきた背景について、いろいろと指摘がありました。
出てきた背景とは別に、「なぜMROCなのか」、つまり欧米でNewMR手法の中で一番よく使用されている有力なMR手法であることの「理由」を補足したいと思います。
MROCのこれまでの手法に対する優位点を強調する必要があります。
誰かが指摘されていたように、「コミュニティ」がキーワードです。
従来の定量のネット調査に対して、「コミュニティ」を形成することによって、参加者の「エンゲージメント」が高まり、回答率が高くなり、より精度の高いデータが収集できる点が優位点です。これによって、より深いインサイトが得られることが期待されます。
従来のネット調査への参加率が低下し、データの精度に疑問がもたれ、インサイトが発見しづらくなっている現状の問題のソリューションとしてのMROCの登場およびその存在価値があります。
●ちなみにMROCは複合的な要素によって、現在の機能に形成されてきたと言えます。
USのCommunispace社が2000年ごろに始めたころは、掲示板グルインのようなものでした。
それが同時性から非同時性に拡大し、その後のWEB2.0のIT進化の動向ーブログ、写真アップなどのCGM要素が加味され、パワーアップしてゆきました。
2008年にMROCの名称が誕生するまでには、オンライングルインの要素とソーシャルメディアの要素が複合化された現在の形になりました。
つまり、MROCには、オンライングルインのルーツと、ソーシャルメディアのルーツがあると言えます。
その一方で、1990年代に現れたオンライン・リサーチ(アクセス・パネル)が拡大し、データ精度の問題に直面し、その解決策として、「Community Panel」が2000年代半ばに出現してきました。
主に定量調査を行うCommunity Panelが、定性調査主体のMROCを取り込んで、定性と定量を1つのプラットフォームで可能にした現在のCommunity Panelが完成しました。
・この議論の中で、「MROCに向いている課題」は何かという問いかけがありました。
日記やHUTによく使われているという指摘がありました。
これは非常におもしろい現象です。
欧米では、インサイトを発見するために主に「フォーラム」機能(掲示板)を使ったMROCが主流で発展してきましたが、MROC後発の日本では、従来オフラインが行われていたダイアリー調査やホームユーステストがMROC内で多く行われています。
これは、フォーラム機能のMROCの有効性を示すことが難しい中、これらは容易にクライアント側に受け入れられたと同時に、調査会社側も説明しやすかった点にあるかと思います。
面白い点は、Communispaceでも、彼らのインサイト・コミュニティの中で、最近はよくHUTを実施している点です。日本人は何でもその変形(応用形)を作るのが上手なようです。
場合によっては、MROCのプラットフォームを使っているという理由だけで、(もし「コミュニティ」を形成していないのであれば)、これらのプロジェクトをあえてMROCと呼ぶ必要がないかもしれません。海外では、単に「オンライン定性調査」と呼ばれるものです。
確かに、オンライン定性調査をすべてMROCと呼ぶのは、便利でありよい点ですが、MROCの定義を混乱させている一つの要因でもあります。MROCの市場規模の大きさ(成長)を示すうえでは、オンライン定性調査をすべてMROCと呼称する点では有難いですが、悩ましい点でもあります。
●次に、②どうMROCは使えるのか
・これまでの調査とMROCとの違いが議論されました。第一のテーマと関連します。
これまで2年間よく議論されてきたネット(オンライン)グルインとの違いや、ソーシャル・リスニングとの違いです。
そろそろこのあたりの議論から卒業したいものですが、まだまだMROCをご存じない方も多いようです。MROCが日本に本格導入されて約2年がたちます。
・ここでもまた、「MROCに最も適したテーマ」が話題になりました。
HUTや日記で生活実態を長期にみたり、アイディア出し、コンセプト評価、消費者が会話することで解決される課題ならなんでも、コミュニケーション開発、態度変容の追跡などが、あげられていました。
MROCの価値が未だ定着していない日本では、MROCが最も得意とする、その証拠に欧米で最もよく使われている分野でもある「製品開発」で、その価値を発揮することが重要かと思っています。
ブランド・コミュニケーションや、顧客経験、ショッパーインサイトの分野でもMROCは有効ですが、#1をあげるとするとやはり「製品開発」かと思います。アイディア・ジェネレーションやコンセプト開発・評価の分野です。
さらに、③MROCの運用と課題
・MROCの運営と、レポーティングの問題が議論されました。
この2つの作業が、MROCの普及・拡大を阻んでいます。
つまり、前者はMROCの運営はあまりに労働集約的で負担が大きいことと、後者は効率的に有効なインサイトを出しづらいことを意味しています。
これに対して、クライアントがインサイトを容易に出すためのヘルプを行うために、MROCで収集できたあらゆる、かつ膨大なデータ(1か月50人のMROCでワード1,000枚のアウトプット)ー発言(投稿)や写真のデータをグループ別やタスク別に分けたりするなどして、クライアント側が少しでも読みやすいように加工をして、生データを提供しているという報告がありました。
また、情報共有やアイディア探索のワークショップの活用も報告されました。
・モデレータの役割として、MROCから、①クライアントが望む情報を引き出す、②膨大なデータを整理する、③クライアントに気づきを促すことをサポートする、と指摘されていました。
・お題ごとに「まとめ」を行う、という意見もありました。
・別のところでは、テキスト・アナリティクス(TA)を用いて分析を行うとしています。
しかし、世界のTAの発展レベルからみて、(その発展からも遅れている)日本語を使った日本のMROCで、現状の日本のTAにより、クライント側が求めるインサイトは得ることはまだまだできないかと思います。
・もう1つ欧米との違いでおもしろい事実が報告されていました。
「アン・ブランディッドのMROCが90%である」という報告です。
欧米ではまさに逆かと思います。ほとんどがブランド明示型です。参加者にそのコミュニティは、XXブランドのために実施していることが明らかにされています。
「コミュニティ・リサーチ」の基本は、消費者のことをもっと知りたい企業と、(消費者の自然な欲求である)自分たちが使っているブランドをよりよくしたいと望み、その声を企業に伝えたいと願っている消費者の出会いの場の提供です。その意味で、日本でも、今後もっとブランディッドのMROCが行われる余地があるかと思いますし、ブランド発展のためにもそうあるべきだと思います。
・また、長期ー短期、小規模ー大規模MROCの議論も行われました。
これらは、目的や課題の多さ、予算、期間などの要素によって変動するかと思います。
「早く、安く(より価値に見合った価格)、有効なインサイト」のMROCの3つの価値の実現の点では、より長期、常設型のMROCの方がその利点を生かせるかと思います。
・ところで、MROCは欧米では、別名インサイト・コミュニティと呼ばれています。
世界で、元祖MROC企業であるCommunispace社のCEOは、自分たちのビジネスをMROCと呼ばれることを嫌っています。
なぜなら、MROCの中にマーケティング・リサーチという言葉が含まれているからです。
CEOは、我々は従来のマーケティング・リサーチをやっているのではないと考え、差別化をはかっています。
しかし、ここ数年のMROCブームの中で、彼らのビジネスの価値を伝えるために、MROCの用語を使わざるえなくなってきているのも現実です。MRの国際会議や彼らのワークショップでMROCを用いています。
あくまでも、彼らはリサーチャーではなく、「インサイト・プロフェッショナル」であるというプライドを持ち、インサイトの発見に全力を尽くしています。
・これらの議論で感じた点は、
①まず運営について、
運営も大変だという声が多いですが、MROCに関わる人は、まずは消費者の話を聞くことや、参加者と会話をすることが好きであることが重要な要件だと思います。
ゆえに少々量が多いという理由から否定をするのはおかしいのではないかと思います。
その作業をより効率よく、やる工夫をすることが重要だと思います。
#1企業であるCommunispaceも10年間、多くのトライアル・エラーを繰りかえして、300-500人の大規模MROCの運営とインサイト発見の有効かつ効率的なノウハウを確立して、MROC単体で60億企業になったわけです。
日本のMROC企業のさらなる切磋琢磨が期待されます。
②次にレポーティングについて、
MROCは、消費者の365日の生の声です。日ごろから、消費者を理解したいとか、消費者の声をマーケティング活動に反映したいと強く望まれているマーケターの方が、その意味で「宝の山」であるMROCデータを前にそれを読むことに躊躇されていることはある意味不思議で残念です。
しかし、現実はお忙しいから、そうおっしゃるのも当然です。
そこにリサーチャーあるいはインサイト・プロフェッショナルの存在意義があるかと思います。
・MROCは、膨大であるがゆえに、膨大な価値を含んでいる可能性もあります。
上で言及したような読みやすくするための加工を行うのも、マーケターの労力を軽減する上で重要な貢献の1つかもしれません。
気合、力仕事と言われていましたが、MROCは、まず読むことから始まります。ただの無意味な会話ではなく、貴重な消費者の本音の生声であるという意識をもつことが重要です。
・MROCにとって、加工やまとめも重要な作業です。それらはインサイトの発見のために行われている作業です。
しかし、「インサイトのないMROCは、MROCではない」という意気込みと、インサイト・プロフェッショナルのプライドをもって、「インサイト発見」に、MROC関係者は真正面から取り組むべきだと考えます。
もっとも、普通の調査でも、データ収集、データサプライヤーに徹する会社もあれば、マーケティング提言を得意とする会社があるように、今後もMROC企業には、この2つのタイプに会社が存在すると思います。しかし、企業のニーズの流れは、確実に「インサイト提供のMROC会社」に向いています。
そのためにMROCが出現してきたという経緯もあります。
データや結果ではなく、「インサイト」が求められています。
クライアント企業は、ロー・データの収集・提供ではなく、インサイトの提示を強く望んでいます。
●最後のテーマは、④MROCのこれから
・1社MROCのシェアードMROCの提案や、オフラインとのハイブリッド型などが提案されていました。
また、今後は、市場拡大が予想され、長期化、大規模化が進むとも予測されていました。
知るためのリサーチや、プロモーション、コ・クリエーション、エンゲージメント型のリサーチも言及されていました。
・MROCの将来と関連して、Vision Critical社のCommunity Panelもここで紹介されていました。
DIY的にできるツールが多くなると、リサーチャーあるいはリサーチ会社の存在意義が問われるという議論がありましたが、そこで「面倒くさいことはリサーチャーにおまかせ」議論がありました。
本当は、そうではなく、「インサイト」はお任せと言いたいところです。
・データ収集型のリサーチャーは、DIYなどがでてくると脅威を感じます。「リサーチ」(=データ収集)が必要でなくなるのではないかと心配します。
インサイト型のリサーチャーは、データ収集や分析が、ITのおかげて簡便・効率化されるおかげで、その節約できた時間を「インサイト発見」にかけられることを歓迎し、自分の活躍の場の拡大に期待します。
グローバルでは、Community Panelの導入により、1つのプラットフォームで定性と定量調査が、マーケターやリサーチャーの机上から、いつでも簡単に行うことができるようになっています。
これからは、「インサイト・プロフェッショナル」型のリサーチャーの育成が強く望まれます。
それがリサーチ業界や企業のプレゼンス向上にもつながるかと思います。
●クライアント側の方が、質問ではなく、コメントをセッションの締めくくりとしてされていました。
ある意味、このコメントに現在のMROC状況、日本のMR状況が象徴されているように感じました。
「コミュニティでもMROCでもなんでもよいから、もっと課題解決に有効なものを提案してほしい」、
「コミュニティという名称にこだわる必要はない。もっと活用方法を提案してほしい」
と私なりにそう受け取りました。
こうおっしゃられると、90分間もMROCについて真剣に議論してきた会場にとって、身もふたもないと感じました。
この90分のパネルが、聴衆の皆さんに「MROCの価値」を十分伝えられなかったのかと残念でした。少なくともコメントしてくださったクライアント側の方には伝わらなかったのかもしれません。
しかし、参加者の方のMROCに対する疑問が1つでも解決されれば、このセッションは成功だったと思います。
さらには、参加者の中に1人でも、MROCをやってみようかと思われた方がおられたならば、なお成功かと思います。
そのような期待に応えるためにも、MROC関連企業は、MROC成功事例:ベスト・プラクティスの共有が望まれます。
●最後に、この貴重なMROCセッションを企画・実施をされたJMRA会議のプログラム委員会のメンバーの方々に感謝申し上げます。加えて、セッションのモデレータおよびパネラーの方お疲れ様でした。
●2012年11月29日(木)JMRA Annual Conference 2012の「パネルデイスカッション①MROCの既知と未知」にJMRAからご招待いただきました。
セッションの資料や参加者などの詳細は、JMRAから後日HPにアップされる報告をご覧ください。
●パネルディスカッションでは、MROCCの現状と将来について、次の4つの観点からディスカッションが行われました。
①なぜMROCなのか
②どうMROCは使えるのか
③MROCの運用と課題
④MROCのこれから
●まず、①なぜMROCなのか
・MROCが出てきた背景について、いろいろと指摘がありました。
出てきた背景とは別に、「なぜMROCなのか」、つまり欧米でNewMR手法の中で一番よく使用されている有力なMR手法であることの「理由」を補足したいと思います。
MROCのこれまでの手法に対する優位点を強調する必要があります。
誰かが指摘されていたように、「コミュニティ」がキーワードです。
従来の定量のネット調査に対して、「コミュニティ」を形成することによって、参加者の「エンゲージメント」が高まり、回答率が高くなり、より精度の高いデータが収集できる点が優位点です。これによって、より深いインサイトが得られることが期待されます。
従来のネット調査への参加率が低下し、データの精度に疑問がもたれ、インサイトが発見しづらくなっている現状の問題のソリューションとしてのMROCの登場およびその存在価値があります。
●ちなみにMROCは複合的な要素によって、現在の機能に形成されてきたと言えます。
USのCommunispace社が2000年ごろに始めたころは、掲示板グルインのようなものでした。
それが同時性から非同時性に拡大し、その後のWEB2.0のIT進化の動向ーブログ、写真アップなどのCGM要素が加味され、パワーアップしてゆきました。
2008年にMROCの名称が誕生するまでには、オンライングルインの要素とソーシャルメディアの要素が複合化された現在の形になりました。
つまり、MROCには、オンライングルインのルーツと、ソーシャルメディアのルーツがあると言えます。
その一方で、1990年代に現れたオンライン・リサーチ(アクセス・パネル)が拡大し、データ精度の問題に直面し、その解決策として、「Community Panel」が2000年代半ばに出現してきました。
主に定量調査を行うCommunity Panelが、定性調査主体のMROCを取り込んで、定性と定量を1つのプラットフォームで可能にした現在のCommunity Panelが完成しました。
・この議論の中で、「MROCに向いている課題」は何かという問いかけがありました。
日記やHUTによく使われているという指摘がありました。
これは非常におもしろい現象です。
欧米では、インサイトを発見するために主に「フォーラム」機能(掲示板)を使ったMROCが主流で発展してきましたが、MROC後発の日本では、従来オフラインが行われていたダイアリー調査やホームユーステストがMROC内で多く行われています。
これは、フォーラム機能のMROCの有効性を示すことが難しい中、これらは容易にクライアント側に受け入れられたと同時に、調査会社側も説明しやすかった点にあるかと思います。
面白い点は、Communispaceでも、彼らのインサイト・コミュニティの中で、最近はよくHUTを実施している点です。日本人は何でもその変形(応用形)を作るのが上手なようです。
場合によっては、MROCのプラットフォームを使っているという理由だけで、(もし「コミュニティ」を形成していないのであれば)、これらのプロジェクトをあえてMROCと呼ぶ必要がないかもしれません。海外では、単に「オンライン定性調査」と呼ばれるものです。
確かに、オンライン定性調査をすべてMROCと呼ぶのは、便利でありよい点ですが、MROCの定義を混乱させている一つの要因でもあります。MROCの市場規模の大きさ(成長)を示すうえでは、オンライン定性調査をすべてMROCと呼称する点では有難いですが、悩ましい点でもあります。
●次に、②どうMROCは使えるのか
・これまでの調査とMROCとの違いが議論されました。第一のテーマと関連します。
これまで2年間よく議論されてきたネット(オンライン)グルインとの違いや、ソーシャル・リスニングとの違いです。
そろそろこのあたりの議論から卒業したいものですが、まだまだMROCをご存じない方も多いようです。MROCが日本に本格導入されて約2年がたちます。
・ここでもまた、「MROCに最も適したテーマ」が話題になりました。
HUTや日記で生活実態を長期にみたり、アイディア出し、コンセプト評価、消費者が会話することで解決される課題ならなんでも、コミュニケーション開発、態度変容の追跡などが、あげられていました。
MROCの価値が未だ定着していない日本では、MROCが最も得意とする、その証拠に欧米で最もよく使われている分野でもある「製品開発」で、その価値を発揮することが重要かと思っています。
ブランド・コミュニケーションや、顧客経験、ショッパーインサイトの分野でもMROCは有効ですが、#1をあげるとするとやはり「製品開発」かと思います。アイディア・ジェネレーションやコンセプト開発・評価の分野です。
さらに、③MROCの運用と課題
・MROCの運営と、レポーティングの問題が議論されました。
この2つの作業が、MROCの普及・拡大を阻んでいます。
つまり、前者はMROCの運営はあまりに労働集約的で負担が大きいことと、後者は効率的に有効なインサイトを出しづらいことを意味しています。
これに対して、クライアントがインサイトを容易に出すためのヘルプを行うために、MROCで収集できたあらゆる、かつ膨大なデータ(1か月50人のMROCでワード1,000枚のアウトプット)ー発言(投稿)や写真のデータをグループ別やタスク別に分けたりするなどして、クライアント側が少しでも読みやすいように加工をして、生データを提供しているという報告がありました。
また、情報共有やアイディア探索のワークショップの活用も報告されました。
・モデレータの役割として、MROCから、①クライアントが望む情報を引き出す、②膨大なデータを整理する、③クライアントに気づきを促すことをサポートする、と指摘されていました。
・お題ごとに「まとめ」を行う、という意見もありました。
・別のところでは、テキスト・アナリティクス(TA)を用いて分析を行うとしています。
しかし、世界のTAの発展レベルからみて、(その発展からも遅れている)日本語を使った日本のMROCで、現状の日本のTAにより、クライント側が求めるインサイトは得ることはまだまだできないかと思います。
・もう1つ欧米との違いでおもしろい事実が報告されていました。
「アン・ブランディッドのMROCが90%である」という報告です。
欧米ではまさに逆かと思います。ほとんどがブランド明示型です。参加者にそのコミュニティは、XXブランドのために実施していることが明らかにされています。
「コミュニティ・リサーチ」の基本は、消費者のことをもっと知りたい企業と、(消費者の自然な欲求である)自分たちが使っているブランドをよりよくしたいと望み、その声を企業に伝えたいと願っている消費者の出会いの場の提供です。その意味で、日本でも、今後もっとブランディッドのMROCが行われる余地があるかと思いますし、ブランド発展のためにもそうあるべきだと思います。
・また、長期ー短期、小規模ー大規模MROCの議論も行われました。
これらは、目的や課題の多さ、予算、期間などの要素によって変動するかと思います。
「早く、安く(より価値に見合った価格)、有効なインサイト」のMROCの3つの価値の実現の点では、より長期、常設型のMROCの方がその利点を生かせるかと思います。
・ところで、MROCは欧米では、別名インサイト・コミュニティと呼ばれています。
世界で、元祖MROC企業であるCommunispace社のCEOは、自分たちのビジネスをMROCと呼ばれることを嫌っています。
なぜなら、MROCの中にマーケティング・リサーチという言葉が含まれているからです。
CEOは、我々は従来のマーケティング・リサーチをやっているのではないと考え、差別化をはかっています。
しかし、ここ数年のMROCブームの中で、彼らのビジネスの価値を伝えるために、MROCの用語を使わざるえなくなってきているのも現実です。MRの国際会議や彼らのワークショップでMROCを用いています。
あくまでも、彼らはリサーチャーではなく、「インサイト・プロフェッショナル」であるというプライドを持ち、インサイトの発見に全力を尽くしています。
・これらの議論で感じた点は、
①まず運営について、
運営も大変だという声が多いですが、MROCに関わる人は、まずは消費者の話を聞くことや、参加者と会話をすることが好きであることが重要な要件だと思います。
ゆえに少々量が多いという理由から否定をするのはおかしいのではないかと思います。
その作業をより効率よく、やる工夫をすることが重要だと思います。
#1企業であるCommunispaceも10年間、多くのトライアル・エラーを繰りかえして、300-500人の大規模MROCの運営とインサイト発見の有効かつ効率的なノウハウを確立して、MROC単体で60億企業になったわけです。
日本のMROC企業のさらなる切磋琢磨が期待されます。
②次にレポーティングについて、
MROCは、消費者の365日の生の声です。日ごろから、消費者を理解したいとか、消費者の声をマーケティング活動に反映したいと強く望まれているマーケターの方が、その意味で「宝の山」であるMROCデータを前にそれを読むことに躊躇されていることはある意味不思議で残念です。
しかし、現実はお忙しいから、そうおっしゃるのも当然です。
そこにリサーチャーあるいはインサイト・プロフェッショナルの存在意義があるかと思います。
・MROCは、膨大であるがゆえに、膨大な価値を含んでいる可能性もあります。
上で言及したような読みやすくするための加工を行うのも、マーケターの労力を軽減する上で重要な貢献の1つかもしれません。
気合、力仕事と言われていましたが、MROCは、まず読むことから始まります。ただの無意味な会話ではなく、貴重な消費者の本音の生声であるという意識をもつことが重要です。
・MROCにとって、加工やまとめも重要な作業です。それらはインサイトの発見のために行われている作業です。
しかし、「インサイトのないMROCは、MROCではない」という意気込みと、インサイト・プロフェッショナルのプライドをもって、「インサイト発見」に、MROC関係者は真正面から取り組むべきだと考えます。
もっとも、普通の調査でも、データ収集、データサプライヤーに徹する会社もあれば、マーケティング提言を得意とする会社があるように、今後もMROC企業には、この2つのタイプに会社が存在すると思います。しかし、企業のニーズの流れは、確実に「インサイト提供のMROC会社」に向いています。
そのためにMROCが出現してきたという経緯もあります。
データや結果ではなく、「インサイト」が求められています。
クライアント企業は、ロー・データの収集・提供ではなく、インサイトの提示を強く望んでいます。
●最後のテーマは、④MROCのこれから
・1社MROCのシェアードMROCの提案や、オフラインとのハイブリッド型などが提案されていました。
また、今後は、市場拡大が予想され、長期化、大規模化が進むとも予測されていました。
知るためのリサーチや、プロモーション、コ・クリエーション、エンゲージメント型のリサーチも言及されていました。
・MROCの将来と関連して、Vision Critical社のCommunity Panelもここで紹介されていました。
DIY的にできるツールが多くなると、リサーチャーあるいはリサーチ会社の存在意義が問われるという議論がありましたが、そこで「面倒くさいことはリサーチャーにおまかせ」議論がありました。
本当は、そうではなく、「インサイト」はお任せと言いたいところです。
・データ収集型のリサーチャーは、DIYなどがでてくると脅威を感じます。「リサーチ」(=データ収集)が必要でなくなるのではないかと心配します。
インサイト型のリサーチャーは、データ収集や分析が、ITのおかげて簡便・効率化されるおかげで、その節約できた時間を「インサイト発見」にかけられることを歓迎し、自分の活躍の場の拡大に期待します。
グローバルでは、Community Panelの導入により、1つのプラットフォームで定性と定量調査が、マーケターやリサーチャーの机上から、いつでも簡単に行うことができるようになっています。
これからは、「インサイト・プロフェッショナル」型のリサーチャーの育成が強く望まれます。
それがリサーチ業界や企業のプレゼンス向上にもつながるかと思います。
●クライアント側の方が、質問ではなく、コメントをセッションの締めくくりとしてされていました。
ある意味、このコメントに現在のMROC状況、日本のMR状況が象徴されているように感じました。
「コミュニティでもMROCでもなんでもよいから、もっと課題解決に有効なものを提案してほしい」、
「コミュニティという名称にこだわる必要はない。もっと活用方法を提案してほしい」
と私なりにそう受け取りました。
こうおっしゃられると、90分間もMROCについて真剣に議論してきた会場にとって、身もふたもないと感じました。
この90分のパネルが、聴衆の皆さんに「MROCの価値」を十分伝えられなかったのかと残念でした。少なくともコメントしてくださったクライアント側の方には伝わらなかったのかもしれません。
しかし、参加者の方のMROCに対する疑問が1つでも解決されれば、このセッションは成功だったと思います。
さらには、参加者の中に1人でも、MROCをやってみようかと思われた方がおられたならば、なお成功かと思います。
そのような期待に応えるためにも、MROC関連企業は、MROC成功事例:ベスト・プラクティスの共有が望まれます。
●最後に、この貴重なMROCセッションを企画・実施をされたJMRA会議のプログラム委員会のメンバーの方々に感謝申し上げます。加えて、セッションのモデレータおよびパネラーの方お疲れ様でした。
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