2010年10月18日月曜日

GAP、消費者とギャップ?: MRとソーシャルメディアとの関係への示唆




《第38回》


今週のTOPICS


◆ツイッチャーの会:業務連絡

・ツイッチャーの会(ツイッターをするリサーチャーとその周辺の方々のネットワーキング。現在登録者数175名。事務局は@ushidoと@Experideの2人が担当)の第6回(2010年10月勉強会)と第7回(2010年11月勉強会)は、それぞれ10月27日(水)と11月5日(金)に決まりました。

毎度、講師選定と会場手配に時間がとられご連絡が遅くなり恐縮です。

・テーマは、10月は「エクスペリエンスデザインと観察調査」の定性テーマ(定性第3弾)、11月は中央大学大学院の田中洋教授(『課題解決!マーケティング・リサーチ入門』の編著者)のお話です。日程調整をお願い致します。

よろしくお願いします。今週中にはツイッター上に「告知」がでると思います。



◆MR会議シーズン花盛り

 ・9月12日ー15日にESOMAR Congress - Odyssey 2010 (Athens)があり、

先週のこのブログでお伝えしたAMA Marketing Research Conference (Atlanta)が9月26日ー29日に開催されました。

・先週も2つのMR関連会議がありました。

1つは、2010 QRCA Annual Conference(Philadelphia) 10月13日ー15日で、

プログラム

ツイッター


もう1つは、CASRO 35th Annual Conference (San Diego)10月11日ー14日でした。


*Council of American Survey Research Organizations (CASRO)

ツイッター

・この会議を紹介した1つのブログによると、

「定性リサーチの将来は明るい。但し、定性リサーチャーは伝統的なグルインの方法に加えて、ソーシャル・メディアやオンライン・グルインなど時代の変化に対応した新しい方法を積極的に取り入れる必要がある」


さらに、今週10月17日-19日は、ESOMARのOnline Research 2010 E-Universe: The Power of Listening(Berlin)が開かれます。

プログラム 興味深い発表が多く含まれています。。。I wish I were there.


・11月には、ESOMAR Qualitative 2010 Foresight on moods and thoughts


(Barcelona) 16日ー18日と、
 
プログラム

WOMMA Summit 2010 (Las Vegas) 17日ー19日があります。

アジェンダ


・そして12月6日-10日にはNewMR Virtual Festivalが行われます。

Synopsisへの投票締め切りは、ロンドンタイムの19日(火)中です。

・おまけに、来年2月23日と24日に、1st Asia-Pacific conference on Qualitative Research in Web 2.0

がマカオであります。オンライン定性の専門家会議です。最新の情報を入手できます。数少ないアジアでの開催ですので、ぜひご参加を!

Director on CMB's Financial Services/Insurance and Healthcare Practice のMs.Julie Kurd
が言っています。

A lot of new things are going on in the market research industry and it would be a shame to miss out!




◆GAP、消費者とギャップ?: MRとソーシャルメディアとの関係への示唆

・ツイッター上でこんなツイートがありました。

@surveyml GAPロゴ騒動記念、ADWEEK誌による有名企業ロゴ変更30選 http://ow.ly/2UJB6 、個人的な印象だけど変えない方がよかったものもたくさんある気がする、あるいは単なる慣れの問題かな。約3時間前 HootSuiteから

@surveyml なるほど!小文字になると、企業が主張するのではなく消費者に合わせますみたいなイメージ、何となくだけど<RT @tyamamotowebark: 小文字の時代なんだなぁ RT @surveyml: ADWEEK誌による有名企業ロゴ変更30選 http://ow.ly/2UJB6
約3時間前 HootSuiteから


*アメリカを拠点とするカジュアルブランド。1969年に創立。カリフォルニア州サンフランシスコに本社を持ち、世界に展開する大手SPA(製造小売)企業。



「GAPロゴ騒動」(記事2記事3記事4記事5)とは、10月4日に発表した新ロゴをFacebookTwitterブログなどのソーシャルメディア上での反対を受けて11日に「撤回」した騒動のこと。


・現時点では、ロゴ変更にあたって、GAP社が新ロゴについて、リサーチを行ったどうかは不明ですが、常識的にはリサーチを行っているはずです。

アメリカのリサーチャーがツイッター上で、リサーチが行われていないことを祈るといったツイートをしていましたが。。。

・どのようなリサーチを行ったかは非常に興味のあるところです。

モナディック評価なのか、一対比較評価なのか?あるいはその他の方法か?

このような場合の決定基準(アクション・スタンダード)は、現行と同等の評価(パリティ)を得ることができれば、新ロゴがGOのケースが多いでしょう。変更することが前提(せっかく多くの時間と労力をかけたので)で行われている調査ですので、多くの場合パリティ判断がとられます。

このような判断で、痛い目を見た企業は多くあると思います。

GAPの場合もこの変更騒動で、株価総額で2億4700万ドルを失ったと言われています。

(GAP社内の関係者ーマーケターやリサーチの人々ーは大変だと思われます。また社外の広告代理店ー今回はNYのLaird & Partnersが作成ーデザイン会社なども。数か月かけて企画からデザイン化、リサーチ、決定、マネジメントへの提案、最終決定などの作業を行ったと思います。外部コスト以外に、関わった社員の給与も含めればお金も数千万単位だと思われます。今回の場合、具体的製品ではなかったので、製造および流通のコストの損害はないでしょうが。)


・今回のように長い歴史のあるロゴを変更する場合、少なくとも新ロゴ(これはパッケージやネーミングに置き換えても良いでしょう)は、現行に対して、統計的有意差をもって上回る評価を得る必要があると思います。

・実際のリサーチで、新ロゴが統計的有意差をもって高い評価をえたのかもしれません。それゆえに自信をもって変更したのかもしれません。

こうなると、リサーチの責任も大きいと思います。リサーチがOKっといったではないかということになります。リサーチ・マネジャーはどのような言い訳をするのでしょうか?いまさら、方法が悪かったとか、サンプルサイズが小さかったとは言えないでしょう。。。

今回のケース、一見して新ロゴがあまりアピーリングでないような気がします。このような場合、リサーチ側から、「常識的判断」でマーケティングの方にリサーチの前に再デザイン作業を要請するようなアクションも必要かと思います。GAP社内で反対意見はなかったのでしょうか?


・リサーチ結果は正しいけれども。。。

今回の場合はその反論の余地があります。

新ロゴの批判者はFacebookやTwitterの一部のユーザーでした。

おそらくGAP顧客の「代表」サンプルではないでしょう。

また、この騒動のあとの一般調査で、70%の人がGAPのロゴの変更を知らなかったと回答しています。

すなわち、ごく一部の人、それもソーシャル・メディアの中の人の声によって、企業の意思決定が影響を受けるということです。次の言葉にも表れています。「ソーシャルメディアが、GAPのロゴを殺した!」
Social Media Killed Gap's Logo
The internet kills Gap's new logo


・いかに企業のマーケティング活動にソーシャル・メディアを活用するかは今日の企業にとって重要な課題ですが、

これをリサーチの視点から見ると、

ソーシャルメディアを上手に利用してリサーチを行うことが今後は必要であることを示唆しているような気がします。

これは現在リサーチの世界で進行している変革にも関連しています。

代表性や多数決、統計的有意差検定による意思決定が必ずしも正しく機能していない現状を反映しています。

現在のリサーチは、消費者をウエイト1で見ています。しかし、現実は彼らや彼女らの影響力や購買力などはさまざまです。それが「購買行動」に反映され、最終的に「売上」が作られます。


今後のリサーチは、デジタルの世界を無視することはできないでしょう。

伝統的なリサーチの方法だけで有効な意思決定を行うには「限界」が見えています。


・下の「週刊リサーチ・ブロゴスフィア」でもForresterリサーチのMs. Tamara Barberも、

MR Lessons Learned From Gap’s Logo Misfireと題して取り上げています。

いろいろな調査の工夫をして、意思決定の精度を上げる努力が必要と。

 ・その他の参考資料:
ブランドマネージャーと顧客とのギャップ GAPの新ロゴ騒動

Gap to Scrap New Logo, Return to Old Design 記事2




今週のHOSMR



・Ray Poynter, ’The Handbook of Online and Social Media Research: Tools and Techniques for Market Researchers’の内容紹介メモ(著作権の侵害をしないように、独断と偏見によるポイントの要約)の第6回目です。

Amazon.co.jpでも購入

書評も参照。

WEBサイトアップデイト


今回は、パートII 第9章 その他のオンライン定性方法と、オンライン定性リサーチのまとめ

ソーシャル・メディア以前の方法として、




①Eメールグループス

②インターネットによる詳細面接

③遠隔フォーカスグループ

④バーチャルワールドとバーチャル定性

⑤オンライン定量調査の定性的解釈



ソーシャル・メディア以後の方法として、(パートIIで説明)



①ブログ・マイニング

②オンラインリサーチコミュニティ



9.1 Eメールグループス



・Eメールを使ったグルイン

・Eメールではなく、TwitterやInstant Messaging, status updates, writing on the wall, SMS, Google Waveを使ってグルインを行うことも可能



9.2 遠隔フォーカスグループ



・FocusVision社とActiveGroup社が30カ国で事実施



9.2.1 映像の放映を超えて



・遠隔地へのグルインの伝送以外にも、タグを付けることによって、検索を可能にする。



9.2.2.プライバシーとデータ管理の問題



・ポリシーとガイドライン



9.2.3 遠隔フォーカスグループの将来



・モバイル技術の動向とも関連

9.3 バーチャルワールドとバーチャル定性



・セカンドライフが出た初期に-バーチャル・フォーカス・グループやアバターを使った詳細面接の実験。

・将来、仮想空間での定性調査の可能性―インターフェースの改善



9.4 オンライン定量調査の定性的解釈



・定量調査の弱点①回答(評価)理由がわからない(定量的評価質問のあとにその理由を自由回答で聞く)、②対象者が回答を誤解して答える可能性がある



・コール・ミー・ボタン-対象者が質問がある時に、スカイプや電話で調査側と会話を行えようにする試み



・定性と定量を組み合わせる方法



9.4.1 ポスト・サーベイ定性解釈



・対象者に調査終了後に、ウエブカメラで調査についてのコメントを残してもらう

・サーベイ終了後にコメントをしたり、他の対象者の回答をみて議論をする

・ポストサーベイ・ポータルを作って、そこで議論をしてもらう



9.5 オンライン定性リサーチのまとめ



課題と将来への示唆を考える



9.5.1 ソーシャル・メディア以前



・主にオンライン・フォーカス・グループスとBBFG



9.5.2 オンライン定性がうまく行かなかった理由(著者私見)



・オンラインが定量の主要な方法になった

・早くて安い利点―クライアント側も品質を犠牲にして安さをとる

・「対面とオンラインでの定性リサーチの品質が大きく異なる」という誤った認識が広がる



9.5.3 倫理問題と品質問題



・参加者の同意を得ることと、匿名性やプライバシーを守る



9.5.4 オンライン定性の将来



・ソーシャル・メディアの到来がオンライン定性の未来を変える

・オンライン・リサーチ・コミュニティの売り上げの伸び

・オンライン定性は、ソーシャル・メディアのMR利用と重複

・バズやブログ・マイニングや、オンライン・リサーチ・コミュニティ、Eエスノグラフィ、WEBセミオティクス、対象者のブログの利用のMR利用の発展

・ソーシャル・メィディア・リサーチにおける定性的手法の理解が必要


 
 
週刊リサーチ・ブロゴスフィア


Weekly Research Blogosphere

*1週間の世界中のリサーチ関連の主なブログ・テーマを簡便に
レビューすることができる「週刊リサーチ・ブロゴスフィア」です。
興味をもたれたブログの詳細は、リンク参照。

⇒は投稿に対する個人的コメントです。


◆先週(10月10日-10月16日)の2週間分の世界のリサーチ・ブロゴスフィア

今回は、23ブログの27投稿をレビュー


《海外編》


1.Jeffrey Henning 's Vovici

  1.Planning for the Unknown: Data Collection & Synthesis from Mars(10/14)

・CASROの年次会議でのScott Lever, a mission manager of the Mars Exploration Rover Projectのキーノートスピーチのリサーチへの示唆。

2.The Corded Phone Incident (10/15)

・固定電話のトラブルへの対応からCustomer Effort ScoreTMの紹介。


2.Joel Rubinson on Marketing Research
 
3.Hey media planners: it’s about relevant messages and plenty of them (10/14)

・デジタル・メディア時代におけるリーチとフリークエンシーの意味。
 
3.Rearch Rockstar
 

4.Does Market Research Jargon Create Negative Perceptions?(10/12)

・ AMAのMR会議に出席して、リサーチの専門用語について考察。


4.Tom H. C. Anderson - Next Gen Market Research
 

5.New Moderator and Manager of NGMR’s TransTasman SIG (10/12)

NGMR’s newest moderators, Duncan Stuartとのインタビュー
6.New NGMR Moderator and Manager of NGMR’s Canada SIG (10/13)

・new moderator and manager of Next Gen Market Research’s Canada SIGのMike Gaddへのインタビュー


・NGMR(Next Gen Market Research)グループがChange Agents賞を創設して候補者の応募を開始した告知。

 
5.The Future Place Blog

お休み
 
6.Random Sampling
 
お休み

7.Straight Talk with Nigel Hollis
 
8.Why it is so difficult to prove CSR activities have an impact on brand loyalty (10/11)
 
corporate  social responsibility (CSR)のブランド・ロイヤルティへの影響について。

8.LoveStats
 
9.Thanksgiving for Research (10/11)
 
・ リサーチツールの恩恵

10.Building a bad reputation before we even start: Privacy in social media research (10/12)

・ソーシャル・メディアデータの誤用
11.Where is the privacy fallout? (10/15)

・ソーシャルメディアのプライバシー問題について。

WSJの記事

researchの記事

 
9.The Survey Geek
 
 
12.“Facebook politicians are not your friend” (10/10)
 
・ソーシャル・メディアの政治への影響

13.Let's ban the R word (10/11)

・オンライン・パネルにおける「代表性」の問題。R=representative
 
10.Insites Blog
 
14.Remix 2010: We’re all in (10/13)
 
Remix 2010 イベントについて。
 

11.The Researcher's Perspective


15.Behavioral Tracking Research-The Right Way? (10/14)

MRAのonline behavioral tracking research倫理基準案へのコメント募集(10/25まで)
 
12.Future of Insight

16.Innovation and Design Communities (10/14)

・MRとクラウドソーシング。



13.Voices of CMB
 

17. AMA Market Research Conference Round Up: Can I get a definition please…(10/14)

・AMAのMR会議報告。

MRブログ


14.The Forrester Blog
 

18.Forecasting The Size Of The Pie – Considering Addressable Market  (10/11)

・ビジネス機会の新しい例-ターゲットでないグループから恩恵を受ける例(オンラインアクセスを行わない人々がモバイル・バンキングを利用している例)
19.MR Lessons Learned From Gap’s Logo Misfire (10/15)

・上記のGAPのロゴ変更騒動について。

 
《国内編》



*直接調査に関連しない投稿は除きます。

15.MARKETING RE-SEARCH BLOG

お休み
 
16.Marketing Research Watch

お休み
 
17.マーケティング・リサーチの寺子屋
 
お休み

18.tanoue40's Blog

お休み
 
19.アウラなブログ

お休み
 
20.マーケティング・リサーチャーの生態
 
  20.集計ソフト (10/16)

・「ただリサーチ会社が提供している集計ソフトの多くが「自社でやったリサーチ結果のみ集計できるよ」という制約があります。自社の顧客の選択理由を強化する目的ではあるのですが、そういう視点では汎用的ではありません。利用者側の立場としてはもっとオープン、すなわち他のリサーチソースも使えるものであってもいいのではと思います。」


21.いまんとこの最適解

 
21.ドゥ・ハウス、iPhone向け新サービス「モノ・コード」を公開。 (10/12)

・「あとはいかに参画者をキープするか。魚のいるところに釣り針をしかけているわけでは・・・無い様子。」

22.電通とセールスフォースのサービスを融合させた 「マーケティング・クラウド」サービスを開発 (10/13)

・「電通さんとしては、これを武器にマーケティングソリューションのスキーム提供に入っていきたいのでしょうかね。NRIさんとかとバチバチ?」

23.痴漢被害9割通報せず…「面倒・恥ずかしい」 (10/14)

・「調査設計にボトルネック解消のヒントを導く設問はあったのだろうか?」


24.ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業 (10/15)

「後段でコモディティ化市場での市場調査について触れられています。結局、バランスよく活用しましょう、という論旨。こういうケースで「市場調査」と全てのリサーチが一括りにされてしまうのは個人的に違和感を感じるところです。」

⇒私もツイッターでこの本は紹介しました。

@Experidge リサーチャーmust-readの1冊『ビジネスで一番、大切なこと』原題はDifferent 差別化競争をすればするほど差別化できない矛盾を指摘したHBS教授が書いた「マーケティング」の本(日本語タイトルが誤解を与える)市場調査の問題点を数多く指摘。...

1,286,254,376,000.00 HootSuiteから



25.リーダーの育成 (10/16)

・「キャリアラダー:自分自身が仕事するステージ→部下を使って仕事するステージ→組織を使って仕事するステージ/ステージ内は熟達を通じて成長するが、その延長線では次のステージにあがることは困難。転換が必要/修羅場の存在とOJTが転換を安定して行うカギ/IT化とグローバル化によりOJTの中心であるキャリアラダーの中間層が減少」

「今回、一番ハッと気づかされたのは、スキルの熟達の延長線上にキャリアラダーのUPはないということ。転換をするための「学び」が必要であるということですね」

「組織としての水準を高めるには、転換をするときの学びの体制を整えることが重要なのでしょう。

そのキーとしては、ソフトスキル(交渉力、洞察力、企画力、創造力、コミュニケーション力)の伝授を仕組み化することなのかなぁ、と思いました」


 
22.みんなのMR.COM
 
26.「私はマーケティングがよくわかりません」 (10/12)
 
 
23.Digital Consumer Planner's Blog

27.ブランド・リスニング(傾聴)事例の紹介 (3) 新製品開発とイノベーション その1 (10/14)


************************************



《このBlogは毎週月曜日中に更新されます。月曜日がお休みの時は火曜日中です。また臨時に更新されることがあります》

0 件のコメント:

#150 レイ・ポインターのMR白熱教室2015 第4回(最終回)報告

<第149回> レイ・ポインターのMR白熱教室2015 第4回(最終回)報告 2015年6月23日 ● 第4回目のテーマは、 『データからストーリーテリング』 でした。 ● 7月にレイとの懇親会を予定しております。世界のMRのソート・リーダー(thought ...